駅のトイレを使ったら「150円」!? 駅員さんに「Suicaで出入りしてください」と言われましたが、トイレを借りるだけなら“タダ”でいいと思います。返金はしてもらえないのでしょうか?
JR東日本の駅では、Suicaなどの交通系ICカードで同じ駅の改札を出入りすると、自動的に入場券相当の料金が引かれる仕組みになっています。電車に乗らずに駅構内に入る場合は、入場券の購入が必要です。
駅員が「そのままSuicaで出入りしてください」と案内するのは、正規の対応です。トイレや売店の利用であっても例外ではなく、「少し立ち寄っただけだから返金してほしい」という申し出は原則として認められません。
本記事では、なぜトイレの利用に料金がかかるのか、ICカードで入場した際の課金の仕組みから、うっかりやってしまいがちなNG例まで詳しく紹介します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
駅に入るだけでもお金がかかる? 入場券が必要な理由
JR東日本をはじめとする鉄道会社では、駅構内は「有料エリア」とされています。トイレを使うためだけの入場であっても、改札を通って構内に入る場合は入場券が必要です。
このルールは、JR旅客営業規則に明記されています。「乗車以外の目的で乗降場に入場しようとする場合は、入場券を購入し、これを所持しなければならない」とされており(第294条)、トイレの利用も「乗車以外の目的」に該当するため、構内のトイレを使うには料金が必要なのです。
もちろんトイレだけではなく、エキナカにあるコンビニや売店で買い物をしたいときや、飲食店を利用したいときも同様です。
ICカードを使うとどうなる? タッチでエキナカの仕組み
JR東日本では、Suicaなどの交通系ICカードで同じ駅の改札を入退場すると、入場券相当の料金(おとな150円、こども70円)が引き落とされます。これが「タッチでエキナカ」と呼ばれる仕組みです(一部対象外の駅あり)。
目的がトイレの利用だけであっても、ICカードを使って改札を通った時点で料金が発生します。この金額は、「駅構内を利用したこと」に対する対価として正規に課金されるものであり、後から返金を求めることはできません。
「タッチでエキナカ」で駅構内に滞在できる時間は、2時間以内に限られています。2時間を超えると自動改札機からは出場できなくなり、係員のいる改札窓口での対応が必要です。
その際は、2時間ごとに入場券相当額が加算され、チャージ残高から差し引かれます。
うっかり不正乗車に? 「タッチでエキナカ」のNGな使い方
タッチでエキナカは、入場券なしでSuicaなどのICカードを使って駅構内へ入れる便利な仕組みです。しかし、使い方を誤ると“うっかり不正乗車”をしてしまうかもしれません。
このサービスは、あくまで構内施設の利用を目的とした入場に限って認められるものであり、電車に乗ることはルール違反です。
例えば、有楽町駅でICカードを使って自動改札から入場後、電車で東京駅に移動し、改札を出ずに構内の飲食店や売店を利用─その後、再び電車で有楽町駅に戻り、ICカードで改札を出た場合を考えてみましょう。
本来は有楽町駅~東京駅の往復運賃が必要ですが、このケースでは「同一駅での入退場」として処理され、入場券相当の150円しか引かれません。
電車に乗っている途中で予定がキャンセルになったケースも、同様です。例えば、船橋駅でICカードを使って入場し、東京駅での待ち合わせに向かう途中、新小岩駅で相手から「体調不良でキャンセルになった」と連絡を受けたとします。
そのまま電車で船橋駅に戻って改札を出ると、こちらも150円しか引かれません。しかし、本来は船橋駅~新小岩駅の往復運賃が必要です。
このような場合は、途中の駅(東京駅や新小岩駅)でいったん下車して出場するか、戻った駅の改札で駅員に申し出て運賃を精算する必要があります。
本来支払うべき運賃を払わずに電車に乗ることは、不正乗車に当たる行為です。正規運賃に加えて、2倍の割増運賃(合計で3倍)の支払いを求められる可能性もあります。
タッチでエキナカは、あくまで構内利用限定のIC入場サービスであり、電車に乗らないことが大前提です。ルールを理解したうえで、正しく活用しましょう。
「少しだけだから」は通用しない! エキナカ利用の料金ルールを理解しよう
JRでは、駅構内のトイレや売店を利用するだけであっても、改札を通る場合は入場券相当の料金(通常150円)がかかります。これは鉄道会社のルールとして明確に定められており、「少し立ち寄っただけだから無料でいいのでは」という考えは通用しません。
JR東日本の「タッチでエキナカ」は、気軽にエキナカ施設を利用できる便利なサービスですが、使い方を誤ると不正乗車と見なされる恐れもあります。入出場が同一駅であっても、途中で電車に乗って移動した場合は、本来支払うべき運賃を精算しなければなりません。ルールを理解したうえで、正しく使うことが重要です。
出典
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則
東日本旅客鉄道株式会社 IC入場サービス「タッチでエキナカ」の利用
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
