劇場版「鬼滅の刃」無限城編…公開から25日で「220億円」突破! わずか3社の“少数精鋭”戦略で、1社利益が跳ね上がるワケ

配信日: 2025.08.23 更新日: 2025.09.26
この記事は約 4 分で読めます。
劇場版「鬼滅の刃」無限城編…公開から25日で「220億円」突破! わずか3社の“少数精鋭”戦略で、1社利益が跳ね上がるワケ
劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開わずか8日で興行収入100億円を突破し、日本映画史上最速記録を達成。さらに、公開から25日たった2025年8月12日には220億円を超えたことが明らかになりました。そのため、制作にかかわった人や企業は大きな利益を得ていると考える人も多いのではないでしょうか?
 
実は、大抵のアニメ映画は5~10社で利益を分け合いますが、今回はたった3社のみです。「少数精鋭」戦略により、1社あたりの取り分は通常の2倍以上に跳ね上がるため、今回のような爆発的ヒットの場合、1社あたりの利益はかなりの額になりそうです。本記事では、この戦略について分かりやすく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

歴代最速! 8日で100億円突破の衝撃

2025年7月18日に公開された劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』が、映画界の常識を覆す快進撃を続けています。公開からわずか8日目で興行収入100億円を突破し、日本映画史上最速で「100億円の壁」を破りました。
 
これまでの最速記録は、前作『無限列車編』の「10日間で100億円」でしたが、今回はそれを2日も短縮しています。さらに、公開25日間で220億円を超え歴代興行収入ランキング6位に、8月17日時点では257億円を超え歴代4位に浮上しました。
 

なぜ「3社だけ」なのか? 普通は5~10社で山分けする理由

アニメ映画の世界では、「製作委員会方式」という仕組みが一般的です。これは複数の企業がお金を出し合って映画を作る方法で、通常は5~10社が参加します。例えば、出版社、テレビ局、玩具メーカー、音楽会社、広告代理店などが集まって製作費を分担するのです。
 
1社あたりの負担を減らすことで、もし映画がヒットしなくても損失を最小限に抑えられます。歴代興行収入6位(8月17日現在)の』君の名は。』でも製作委員会方式が採られ、7社が共同で製作に参加していました。
 
しかし、この方法では利益を参加企業全社で分け合うため、ヒットした場合でも1社あたりの取り分が小さくなってしまうのです。
 

鬼滅の刃が選んだ「3社体制」の破壊力とは

鬼滅の刃は、この常識を打ち破りました。製作に参加したのは、集英社(原作を出版)、アニプレックス(配給担当)、ufotable(アニメ制作)のわずか3社のみです。
 
特に注目すべきは、アニメ制作会社のufotableが出資者として参加している点です。通常、制作会社はリスクを抑える代わりに著作権・配分権などの権利を製作委員会に譲るため、ヒットしても取り分が増えにくく、結果として収益性が低くなりがちでした。
 
しかし、ufotableは出資者の立場を確保したことで、興行収入に応じた大きなリターンを得られています。
 

1社あたりの取り分は2倍以上に! 具体的な金額を計算すると……

では、実際にどれくらいもうかるのでしょうか。映画の興行収入は、まず映画館が約50%をとり、残りの50%のうち配給会社が約20%を取り、残りが製作サイドの取り分となることが一般的です。
 
仮に興行収入が前作『無限列車編』並みの400億円に達した場合、製作サイドには約160億円が入ります。『君の名は。』と同じ7社なら1社あたり約23億円ですが、3社体制なら1社あたり約53億円、実に約2.3倍の差が生まれる計算です。
 
さらに、映画の収入は興行だけではありません。海外への配信権、DVD・ブルーレイの販売、関連グッズの売上、ゲーム化権など、さまざまな収入源があります。これらも3社で分け合うため、トータルの利益はさらに大きくなります。
 

政府も後押し! 制作会社がもうかるモデルへ

実は、この「制作会社ももうかる」モデルを、政府も支援し始めています。
 
経済産業省は、アニメ制作会社の収益力向上を目的に、アニメ制作会社が製作委員会への参入やIP活用に取り組む作品への支援案を発表しました。放送事業者などへの適正な価格の要請と利益の見直し、就業環境の改善と制作会社を強くする仕組みづくりも盛り込んでいます。
 
これまで日本のアニメ業界は、「作品は世界的にヒットするのに、現場はもうからない」という矛盾を抱えていました。優秀なアニメーターが低賃金で働き、制作会社の経営も厳しい状況が続いています。
 
劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』の成功は、この問題を解決する新たなビジネスモデルの可能性を示しています。制作会社が出資者として参加し、ヒット時には大きなリターンを得る。この「利益集中型」モデルが広がれば、日本のアニメ業界全体が変わる可能性があります。
 

アニメビジネスの常識を変える「鬼滅モデル」

劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』の成功は、単なる記録更新にとどまりません。従来の「5~10社で山分け」から「少数で利益集中」へというビジネスモデルの転換は、今後のアニメ業界に大きな影響を与えるでしょう。
 
もちろん、この戦略は『鬼滅の刃』のような人気コンテンツだからこそ可能でした。しかし、政府の支援もあり、今後はほかの作品でも同様の試みが増えていくでしょう。
 
日本のアニメが世界で稼いだお金を適切に現場に還元する、そんな新しい時代の幕開けを、『鬼滅の刃』が切り開いているのかもしれません。
 

出典

経済産業省 業界の現状及びアクションプラン(案)について【アニメ】
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問