彼氏を「台湾旅行」に誘ったら「家賃より高い…」と断られた! 海外旅行に“数十万円”かけるのは無駄遣い?「若者の海外離れ」の背景もあわせて解説
航空券やホテル代、現地での食費や観光費などを合わせると、「これだけあれば、新しいパソコンが買える」「家賃1ヶ月分より高い」などと、ほかの出費と比較してしまい、なかなか踏み出せないのが現実かもしれません。
「若者の海外旅行離れ」が指摘されていますが、実際のデータはどのようになっているのでしょうか。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
「若者の海外旅行離れ」は本当なのか
まず、海外旅行に関する直近のデータを確認してみましょう。国土交通省観光庁がまとめた「訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移」が図表1です。
図表1
観光庁 訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移
2020年~2023年までコロナ禍の影響があった時期を除いて見ると、2019年までは順調に「出国日本人数」「訪日外国人旅行者数」の数値はともに伸びていました。しかし、2024年のコロナ禍明け以後、「訪日外国人旅行者数」はコロナ禍以前よりも数値を伸ばしている一方、「出国日本人数」はコロナ禍前より3割以上減少していることが象徴的です。
外務省のまとめた「旅券統計」でも、2024年の日本人のパスポート保有率は人口の17%程度と、最大だった2013年の24%から長期的に下落しています。
一方、パスポート保有率を年代別で見てみると、60歳以上で全体の1割ほど、30歳未満の若者層が全体のおよそ5割となっており、「日本人全体としてパスポート保有率は減少しているが、その中でも若者は比較的パスポートを保有しており、海外旅行に出掛けているほうである」とまとめられるでしょうか。
また、外国為替相場を見てみると、2020年~2023年のコロナ禍の時期を境に急激に円安が進み、円ドルレートだと100円台から140~150円台へと、4割程度の上昇が見られました。
これは海外旅行にかかる費用の増加に直結しますので、円安の進行が日本人全体の海外旅行離れにつながっていることは確実でしょう。更に、世界的に進むインフレも影響していそうです。
図表2
三菱UFJ銀行 外国為替相場チャート表
「コト消費」に数十万円かけるのはコスパが悪い?
最近は高価な衣服やガジェットなどを買う「モノ消費」よりも、イベントなどに出掛けて珍しい体験をすることに重きを置く「コト消費」が消費行動のメインであるといわれていますが、「海外旅行」はまさにコト消費の筆頭です。
ならば、海外旅行に出ていく日本人は増えていてもおかしくないのですが、コロナ禍が明けても、コロナ禍前の水準までには達していません。これは前記のように、円安・インフレによる海外旅行費用の高騰が大きな原因といえそうです。
特にハワイなど、円安に加えてインフレの影響も強く受けている観光地への旅行は、羽田発着3泊4日パックで1人あたりの費用が安くとも15万円ほど、時期やオプションによっては30万円を超えることも珍しくありません。
比較的安価に楽しめる台湾旅行などでも、羽田発着の2泊3日パックで1人あたり6万円程度以上はかかるようです。まさに若者にとっては「(1ヶ月分の)家賃より高い」という相場で、海外旅行をためらうのも無理はないかもしれません。
ただ、キャリアコンサルタントでもある筆者としては、「若いときの海外旅行を含めたコト消費は、多少の無理をしてでもしたほうが良い」と強調したいところです。
コト消費はそのまま「人生経験・思い出」となりますので、これを積み重ねた人と積み重ねなかった人の間には、人物の「面白み」という価値に換算しにくい点で大きな差がついてしまい、それは中高年になったときの人生やキャリア環境に影響を及ぼす可能性が高いと思うからです。
もちろん、これは「若者は借金をしてでも、海外旅行をどんどんしろ」という意味ではありません。
海外旅行をするお金のないうちは、「大してお金はかからないが、行う人は珍しい『コト』」を数多く経験することで、人としての経験値や人物の厚みという目に見えないものを身に付け、できればそれを活用し、海外旅行が気兼ねなくできるほどの立場と収入を得られる人物になっていただきたいと、筆者は心から願っています。
まとめ
円安やインフレの影響もあり、日本人全体のパスポート保有率や出国者数は減少傾向にあります。ただ、その中でも30歳未満の若者は、パスポート保有者全体の5割程度を占めており、日本人の中では積極的に海外旅行を楽しんでいる層だといえそうです。
出典
観光庁 訪日外国人旅行者数・出国日本人数
外務省 旅券統計(令和6年1月~12月)
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント


