憲法では「義務教育は無償」とされているのに…公立小学校でも「年間30万円」かかるのはなぜですか?

配信日: 2025.08.28 更新日: 2025.09.26
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憲法では「義務教育は無償」とされているのに…公立小学校でも「年間30万円」かかるのはなぜですか?
「義務教育は無償」と憲法で定められているのに、実際には公立小学校でもお金がかかります。文部科学省の最新の調査では、公立小学校に通う子ども1人あたり、年間で約34万円の費用がかかるとされています。
 
なぜ憲法の定めと現実に差があるのでしょうか。この記事では、「義務教育の無償」の本当の意味と、実際にかかる費用の内訳、そして将来に向けた教育費の準備方法について分かりやすく解説します。
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憲法の「義務教育は無償」は授業料だけが対象

日本国憲法第26条には「義務教育は、これを無償とする」と明記されています。この条文から、多くの方が「小学校や中学校でかかる費用はすべて無料になる」というイメージを持つかもしれません。しかし、実際には給食費や学用品費など、さまざまな費用を保護者が負担しています。
 
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか。それは、憲法でいう「無償」が指す範囲に理由があります。文部科学省の見解によると、憲法が定める「無償」とは、国や地方公共団体が設置する学校において「授業料を徴収しない」ことを意味すると解釈されています。これは、教育を受ける機会を国民に保障するための基本的な考え方です。
 
つまり、義務教育の根幹である授業そのものについては費用がかかりませんが、それ以外の教育活動に伴う費用は無償の対象外となります。例えば、学校で使うノートや文房具、ドリルなどの教材費、給食費、修学旅行の積立金などは、保護者が支払う必要があります。これが、憲法で「無償」とされていながらも、公立学校で費用がかかる大きな理由です。
 

公立小学校で年間30万円の内訳

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月公表)によれば、公立小学校に通う1人あたりの学習費総額は年間約33万6千円です。内訳は、学校教育費約8万2千円、学校給食費約3万8千円、学校外活動費約21万6千円です。
 
授業料は徴収されませんが、教材やノート、ドリル、行事に関する費用、そして塾や習い事などの学校外活動費が多くを占めます。
 
給食費の目安も押さえておくと安心です。文部科学省の別調査(学校給食に関する実態調査)では、公立小学校の完全給食の平均は月4688円(年換算約5万2千円、調査は11ヶ月で割った平均)とされています。家計の見通しを立てる際は、この程度を見積もると無理が生じにくいでしょう。
 
給食費だけ見ても、1ヶ月あたり約4700円となり、これだけでも大きな支出ですが、毎日の食事に関わる費用ですので必要な支出といえるでしょう。
 
なお、給食費の無償化は全国一律ではありませんが、自治体単位で全額または一部を公費負担する動きが広がっています。2023年9月時点で全国762自治体が、給食費無償化を「実施中または実施予定」としていました。
 
無償化の範囲や開始時期は自治体ごとに異なるため、新年度前に確認しておくと安心でしょう。
 

子どもの教育費、どうやって準備すれば安心?

「年間で約34万円もかかるのか」と、将来の負担に不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、事前に情報を集めて計画的に準備を始めることで、過度に心配する必要はなくなります。教育費を準備するには、主に2つの方法が考えられます。
 
1つは、計画的な貯蓄です。子どもが生まれたときから支給される児童手当を全額貯蓄に回すだけでも、小学校入学までにまとまった金額を準備できます。また、2024年から新制度が始まったNISA(少額投資非課税制度)などを活用して、長期的な視点で資産形成を目指すのも1つの方法でしょう。
 
もう1つは、公的な支援制度の活用です。国や自治体には、経済的な理由で子どもの就学が困難な家庭を支援するための「就学援助制度」があります。援助の対象となる所得の基準や支援内容は住んでいる市区町村によって異なるため、まずは自治体の教育委員会のWebサイトで確認するか、通学する学校に相談してみるとよいでしょう。
 

まとめ|「無償」でも年間30万円が生じるのはなぜか

憲法で定められている「義務教育の無償」は、授業料が無料であることを意味し、給食費や教材費といったそれ以外の費用は家庭で負担する必要があります。文部科学省の調査では、公立小学校でかかる学習費は、塾や習い事などの費用も含めると年間で約34万円にのぼります。
 
「無償」という言葉のイメージと、実際にかかる費用との間にはギャップがあるかもしれません。しかし、なぜ費用がかかるのか、その内訳はどうなっているのかを正しく理解することが、教育費準備の第一歩です。
 
利用できる制度は積極的に活用しながら、ご家庭の状況に合わせた方法で早めに準備を始めることで、子どもの豊かな学びの機会を安心して支えてあげられるでしょう。
 

出典

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します」
文部科学省 「こども未来戦略方針」を踏まえた学校給食に関する実態調査の結果について
文部科学省「第4条(義務教育)」
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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