デパートで息子が「5万円」の花瓶を破損! 夫に弁償の相談をしたら「置き方はどうだった?」と意外な一言。親が全額払わなくて済むケースもあるのでしょうか?
本記事では、子どもが起こしてしまったトラブルで高額賠償を請求された際に、親が知っておくべき法律知識と対処法を解説します。
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目次
法律が定める「親の監督責任」とは? 子どもの賠償責任を親が負う法的根拠
子どもがお店の物を壊した際、親が賠償するのは「監督責任」という法律上の義務があるからです。
民法では、親に子どもの監督義務があると定められています。そのため、もし子どもが他人に損害を与えてしまった場合、法律は「監督が十分ではなかった」と判断し、その責任を親が負うべきだと定めているのです。
たとえ「ちゃんと見ていた」と感じても、物が壊れたという事実がある以上、法的には「監督が足りなかった」と見なされます。つまり、親が子どもの代わりに賠償するのは、法律に基づいた明確な義務だということです。
損害賠償額が減るかもしれない「過失相殺」という考え方
親に賠償責任があるとしても、全額を支払わずに済む場合があります。法律には「過失相殺」という考え方があり、お店側の商品の置き方などに配慮不足があれば、親が支払う賠償額は減額される可能性があります。
例えば、以下のような状況では、お店側にも責任があると見なされるかもしれません。
・高価な花瓶が、子どもでも簡単に手が届く低い場所や、不安定な台の上に置かれていた。
・ベビーカーなどが通るのがギリギリなくらい通路が狭く、商品にぶつかりやすい状態だった。
こうした状況で、「お店の責任5割、親の責任5割」と判断されれば、賠償額は5万円の半額である2万5000円になるかもしれません。すぐに全額支払うのではなく、まずは事故現場の状況をよく確認しましょう。
年間数千円の保険料で高額賠償に備える「個人賠償責任保険」を活用しよう
万が一の際の賠償トラブルに備えるために、個人賠償責任保険を活用しましょう。個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険のオプションとして付帯している場合も多く、知らないうちにすでに加入しているケースも少なくありません。
個人賠償責任保険は、年数千円程度の保険料で1億円を超える賠償に対応できるプランもあり、示談交渉サービスが精神的な負担も軽減してくれます。お店での商品破損だけでなく、以下のような日常生活のトラブルも幅広くカバーします。
・子どもがキャッチボール中に他人の家の窓ガラスを割った
・飼い犬が散歩中に他人をかんでけがをさせた
・自転車事故で相手に重い障害を負わせた
個人賠償責任保険は、日常生活で起こりうる高額な支払いに対応しています。まずは自身の保険契約内容を確認し、未加入であれば契約を検討してみてはいかがでしょうか。
事故が起きたらまず何をすべき? 親が落ち着いて取るべき3つの手順
事故が起きると、焦りからその場で全額支払うと約束してしまいがちですが、それは避けましょう。一度約束すると、法的に「義務を認めた」と解釈され、後からお店側の問題点を指摘しにくくなるからです。
事故が起きたら、慌てずに以下の3つの手順で対応してください。
手順1:まずは誠心誠意の謝罪。賠償の約束は慎重に
まずは、お店の人に誠心誠意謝罪することが大切です。ただし、その場で弁償の約束はせず、「一度持ち帰って、保険会社などに相談します」と伝えましょう。そして、商品の置かれていた状況などを撮影し、記録を残すことが後の交渉で役立ちます。
手順2:保険会社へ連絡する
個人賠償責任保険に加入しているなら、すぐに保険会社に連絡し、後の交渉はプロに任せましょう。
手順3:お店と話し合う
保険が使えない場合は、撮影した写真などをもとに、お店側と話し合います。お店の商品の置き方に問題がなかったか冷静に振り返り、損害賠償額が妥当か交渉しましょう。
事故が発生したときには落ち着いて対応することで、損害賠償額の負担を軽くできるかもしれません。
「冷静な対応」と「事前の備え」が家族を守る
子どもがお店の商品を壊してしまっても、落ち着いて対応しましょう。その場で全額支払いを約束する前に、「お店の商品の置き方はどうだったか?」など状況を確認すれば、「過失相殺」によって賠償額が減る可能性があります。
また、年間数千円の「個人賠償責任保険」は、万一の高額賠償から家計を守る有効な備えです。正しい知識で冷静に対応し、保険で備えておくことが、家族の平穏な暮らしを守ることにつながります。
出典
e-Gov法令検索 民法
一般社団法人日本損害保険協会 個人賠償責任保険
執筆者 : 大垣はち
FP2級
