40年前に「電話加入権」を“7万2000円”で購入した両親。今売ったらいくらになりますか? もう“資産価値”はないのでしょうか?
かつて固定電話は、日本中の家庭で当たり前のように使われていましたが、利用するためにはNTTとの契約により電話加入権を取得する必要があり、その際に支払う金額は、1980年代当時、7万円以上だったのです。
また、この権利は資産的な価値を持ち、売買の対象にもなっていました。しかし、固定電話が一般的ではなくなった今でも、売ることができるのでしょうか? また、売った場合はいくらになるのでしょうか?
本記事では、電話加入権の基本的な仕組みから、現在の市場での価値、売却方法、そして手続き上の注意点について、分かりやすく解説します。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
電話加入権とは? なぜ高額だったのか
電話加入権とは、NTTの固定電話を新しく利用するときに必要だった、「電話線を引くための権利」のことです。携帯電話がなかった時代、多くの人がこの権利を購入し利用していました。
NTTによると、電話加入権の制度は1953年に始まり、日本電信電話株式会社(NTT)設立当時は1契約あたり7万2000円(税込7万5600円)の施設設置負担金を支払う必要がありました。
この費用が高額だったのは、NTTの交換局から自宅までの電話線を引く工事費用を、加入者があらかじめ負担する仕組みだったからです。当時は通信インフラの整備に多額の費用がかかっており、それを利用者全体で支える目的がありました。
月々の基本料金を抑えるかわりに、初めにまとまった金額を支払う前払い方式だったため、1契約あたりの負担額が7万円以上になっていたのです。
なお、この負担金は解約しても戻ってくるわけではありません。NTTも「解約時等に返還しない」とはっきり説明しており、あくまで、電話回線を使うための必要経費という位置づけです。
売却はできる? 必要な手続きと注意点
NTTからの返金はありませんが、電話加入権は売却できます。売却するには専門の買取業者や金券ショップ、ネットオークションなどを利用するのが一般的です。
売却を希望する場合、まずは現在使っている固定電話回線の「利用休止」の手続きをNTTで行い、利用を一時停止します。なお、手続きはWebで申請できます。
実際の取引では、回線を利用休止した直後すぐに売買できるとは限らず、休止から一定期間(例えば3ヶ月など)経過しないと売買できない場合もあります。また、電話料金の滞納がないことなど、売却には諸条件が付くこともあるため、買取業者のサイトなどで条件をよく確認しておくと安心です。
加えて、近年は電話加入権の需要が減っており、買取自体を中止している業者も増えています。申し込み前に事前確認を行い、無駄な手間やトラブルを避けましょう。
いくらで売れる? 電話加入権の現在価値
かつては7万円以上だった電話加入権も、2005年には3万6000円(税込み3万7800円)と、大きく値段が下がりました。さらに、2021年以前は相続時に財産として申告が必要でしたが、現在は評価対象から外され、税務上でも「資産」としての扱いを終えたと言えます。
現在の買い取り価格は、業者であればおおむね1000円程度が相場で、ネットオークションでは、6000円程度で出品される例もありますが、必ず落札されるとは限りません。電話加入権は、もはや換金できる資産とは言いがたく、処分するならわずかでも値段がつくうちに売却するという判断が現実的です。
まとめ
電話加入権は、今では売ることすら難しくなっており、資産としての価値も失われています。それどころか、使い続ける場合には毎月の基本料がかかる上に、放置すれば名義管理や相続時の手間が発生します。かつての取得金額にとらわれず、不要であれば早めに処分や整理を検討するのが現実的と言えそうです。
出典
NTT西日本株式会社 施設設置負担金についてのご説明
NTT西日本株式会社 施設設置負担金の見直しについて
国税庁 電話加入権の評価
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
