「31アイスクリーム」の売り上げは夏がトップだけど、意外と「冬」も下がらない? 業績から見る“ビジネスモデル”とは
では、世界最大級のアイスクリームチェーンである「サーティワンアイスクリーム」では、夏と冬でどれくらい売上に差があるのでしょうか? 本記事では、冬は売れにくいとされるアイスをどう販売しているのか、アイスの売上と季節戦略について解説します。
FP2級、WEBライター検定3級、情報処理安全確保支援士、ネットワークスペシャリスト
アイスクリームは夏が圧倒的に強い?
日本のアイス市場は、やはり夏に需要が集中します。特に7~8月は冬に比べて家庭のアイスへの支出金額が約3倍にもなり、メーカーや小売店の売上も大きく伸びます。また、同協会の「アイスクリーム白書 2022」によると、アイスクリームをいちばんおいしいと感じる気温は「30度くらい」と回答した人が一番多く、次に「25度くらい」が続きます。
一方、冬(11月~2月)はどうしてもアイスクリームの売上が低下します。ただ、家の中で暖かく過ごしながらアイスクリームを食べる人も一定数いて、季節を問わずアイスを楽しむ習慣が定着してきていることも背景にあります。
アイスが夏に需要が高いのは事実ですが、冬もそこそこ需要はあり、季節によって大きく変動する食品というより、夏がピークの通年スイーツと捉えるのが実態に近いと言えるでしょう。
サーティワンは冬でも売れている?
アイスクリームチェーンの「サーティワンアイスクリーム」も、夏のイメージが強いかもしれませんが、冬にも売上を確保するための工夫を怠っていません。
そのひとつが、有名キャラクターとのコラボレーションです。「名探偵コナン」「スーパーマリオ」「ポケットモンスター」「映画ドラえもん」「ハローキティ」など、人気キャラクターとのコラボレーションフレーバーを積極的に投入しています。これらはSNSでも話題となり、年間を通して、幅広い世代の顧客に訴求することができています。
また「バラエティボックス」も重要な存在です。好みのフレーバーを4個、6個、8個、12個と選んでまとめて持ち帰れるもので、家族や友人とシェアするのに最適であるほか、多く買う場合は価格もお得になる商品です。外出機会が減る冬はまとめ買い需要が高まりやすく、バラエティボックスはまさにそのニーズに応える商品と言えます。
このようにサーティワンは、季節を問わずイベント需要やお得感を組み合わせることで、冬でもアイスを買う理由を作り出しているのです。
売上データから見るサーティワンの夏と冬の業績
サーティワンの2024年度(2024年1月~12月)の業績を見ると、通期で約307億円の売上を記録しています。四半期ごとの内訳は以下のとおりです。
● 1Q(1~3月):56億円
● 2Q(4~6月):86億円
● 3Q(7~9月):89億円
● 4Q(10~12月):76億円
数字を見ると明らかなように、7~9月(3Q)が年間でもっとも売上が大きい時期です。ただし、それ以外の四半期も大きくぶれることなく安定的に推移しています。
つまりサーティワンは、夏にピークを迎える一方で、冬でも売上を確保できるビジネスモデルを構築しているのです。この通年での安定は、同社の戦略に加え、市場全体が「夏限定」から「年間を通じた消費」へとシフトしていることも背景にあります。
まとめ
サーティワンの売上は夏と冬で差はあるものの、冬に弱いというほどの落ち込みはありません。キャラクターコラボレーションやバラエティボックスなどのマーケティング戦略により、季節に限定しない需要をうまく取り込んでいます。
さらに、市場全体におけるアイスクリームの通年消費化も追い風となり、サーティワンは日本市場に適応し、一年を通じて楽しめるアイス文化を提供するブランドとして確かな地位を築いているのです。
出典
総務省統計局 家計調査
一般社団法人 日本アイスクリーム協会 消費者調査(アイスクリーム白書)
B-R サーティワン アイスクリーム株式会社 業績・財務ハイライト
執筆者 : 金田サトシ
FP2級、WEBライター検定3級、情報処理安全確保支援士、ネットワークスペシャリスト
