大学時代に奨学金を借りて、今は社会人として毎月少しずつ返済していますが、毎月の支払いに“手数料”が含まれていることに気づきました。まとめて返してしまったほうがお得でしょうか?

配信日: 2025.09.01 更新日: 2025.09.26
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大学時代に奨学金を借りて、今は社会人として毎月少しずつ返済していますが、毎月の支払いに“手数料”が含まれていることに気づきました。まとめて返してしまったほうがお得でしょうか?
大学時代に利用した奨学金の返済を社会人になってから開始した方は多いでしょう。しかし、明細をよく見ると「元金」と「利息」のほかに、引き落としや振り込みに伴う「手数料」が加わっていることがあります。少額でも長期間支払い続けると、総額では意外と大きな負担になることもあります。
 
本記事では、奨学金返済にかかる手数料の仕組みや、まとめ返済のメリット・デメリット、返済計画の立て方について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

奨学金返済にかかる利息と手数料の仕組み

奨学金の返済額には、主に以下の項目が含まれます。

●元金:借りた金額の返済分
●利息:第二種奨学金(有利子)の場合
●手数料:口座振替や振り込みにかかる金融機関の取扱手数料

これらの合計された金額が、毎月の引き落とし額になります。
 

利息がかかるのは第二種奨学金のみ

日本学生支援機構(JASSO)の場合、返済が必要な貸与奨学金は第一種と第二種に分かれています。

●第一種(無利子):利息はかからず、元金と手数料のみ返済
●第二種(有利子):貸与時に決まった金利(固定または変動)が適用され、元金と利息、手数料を返済

利息は元金残高に応じて減っていくため、繰り上げ返済によって節約可能です。
 

手数料は利息と異なり固定的にかかる

利用している奨学金によっては、返済時に口座振替手数料がかかる場合があります。口座振替手数料が110円/月で、返済期間20年(240回)の場合には、2万6400円がかかる計算です。利息がない第一種でも、手数料の負担は長期間では無視できないものになります。
 
なお、JASSOの奨学金返済では、口座振替手数料は無料です。
 

繰り上げ返済(まとめ払い)で得になるケース

第二種奨学金(有利子)の場合、返済を前倒しすることで、将来支払うはずだった利息を減らせます。本章では、以下の条件で節約できる利息金額を計算してみましょう。

<条件>

●残高(元金):50万円
●金利(年率):0.3%(固定)
●残り返済期間:5年(=60ヶ月)

総返済額は、50万3820円です。繰り上げ返済すれば、利息にあたる3820円を節約できます。繰り上げ返済額が大きい場合や、適用される金利が高い場合には、さらなる節約が見込めます。
 
また、月々の手数料を節約することも可能です。口座振替手数料が毎月110円が発生する場合は、5年間で合計6600円がかかります。繰り上げ返済をすることで、この手数料の支払いを抑えることができるため、利息と合わせて合計1万円以上の節約につながります。
 
利息がかからない第一種(無利子)でも、口座振替手数料分がかかる場合は繰り上げ返済によって、その分の負担軽減が見込めます。
 

精神的な負担が軽減される

毎月の引き落としがなくなることで、心理的な負担は減ります。月々の収入から奨学金を返済しなければならないという意識から解放され、家計管理をしやすくなるでしょう。
 

繰り上げ返済をする前に考えたいこと

奨学金を繰り上げ返済すると、利息や手数料分の節約につながりますが、いくつかの注意点があります。返済前に、以下のポイントをしっかり確認しておきましょう。
 

生活防衛資金を確保する

生活防衛資金とは、病気や失業など予期せぬ事態に備えて、通常の預貯金と分けて確保する生活費のことです。
 
繰り上げ返済を検討する前に、まずは生活費の3~6ヶ月分を生活防衛資金として、手元に残しておきましょう。急な病気や失業、災害など、不測の事態に対応できる資金がなければ、せっかく奨学金を完済しても生活が苦しくなるリスクがあります。
 

ほかの借り入れの金利と比較する

クレジットカードのリボ払いやカードローンなど、奨学金よりも高金利の借り入れがある場合は、そちらを優先的に返済するほうが効果的です。奨学金の第二種は低金利が多いため、金利15%のカードローンなどと比べると繰り上げ効果は小さくなります。
 

将来のライフイベントを見据える

住宅購入、結婚、出産など、大きな出費を伴うライフイベントが近い場合は、繰り上げ返済で資金を減らすよりも、頭金や教育費の準備を優先するほうが安心です。一度繰り上げ返済をすると払い戻しができないため、資金の使い道は慎重に判断しましょう。
 

繰り上げ返済は計画的に

奨学金の返済には、元金や利息のほかに手数料がかかり、長期間では無視できない負担となります。無理なく返済を続けるためには、毎月の家計簿に「奨学金返済」を固定費として組み込み、余裕資金が出たときだけ繰り上げを行うなど、柔軟に対応するようにしましょう。
 
繰り上げ返済は、利息や手数料の節約につながる一方で、その後の人生に影響する可能性があります。返済計画を立てる際は、家計全体の資金状況を踏まえたうえで、手数料を抑えられる支払い方法やタイミングを選びましょう。
 

出典

日本学生機構 貸与奨学金(返済必要)
日本学生機構 貸与奨学金 繰上返還申込み
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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