生活保護を受給している母から「冷蔵庫が壊れた」と連絡がありました。家電の急な出費に対応できる支援制度はないでしょうか。
これは生活保護世帯でも同じですが、「家電製品が故障した場合の急な出費に対応できる支援制度はないか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃることでしょう。そこで本記事では、「冷蔵庫が壊れた場合、生活保護から支給されないのか?」「生活保護世帯が受けられる支援制度はあるのか?」について解説します。
生活保護世帯だけでなく生活保護を受けている親族がいる方、これから生活保護の申請を検討している方の参考になると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
冷蔵庫が壊れた場合、生活保護から支給されないのか?
「家具什器費」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。「家具什器費」をインターネットで検索すると、「生活保護を受けている方が、生活に必要な家具や家電製品を購入するための支援制度」といった説明がされています。
厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領について」によると、家具什器費とは「炊事用具、食器等の家具什器」「暖房器具」「冷房器具」と記載されているだけですが、一般にはエアコン・冷蔵庫・洗濯機なども含まれるとされています。
生活保護法による保護(扶助)は、経常的な最低生活費を賄うためのものであり、「生活扶助」をはじめとした8種類の扶助に分類されます。しかし、臨時的・特別な費用については、別途「一時扶助」で対応することになっています。家具什器費は、この一時扶助に該当します。
一時扶助を受けるためには、「生活保護の開始時において持ち合わせがない」など一定のケースに該当する必要があります。しかし、これらのケースに「家電の故障」に該当するものはありません。つまり、本事例のように故障が原因で冷蔵庫を修理する(買い替える)費用については、生活保護からは支給されないと考えられます。
また、生活保護法には、以下の規定があります。
(生活上の義務)
第60条 被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。
以上のことから、冷蔵庫が壊れた場合の修理・買い替え費用については、生活保護からは支給されず、普段のやり繰りで工面しなければならないと考えるのが妥当でしょう。
生活保護世帯が受けられる支援制度はあるのか?
普段のやり繰りからでは、急な出費に対応できないこともあり得ます。そのような場合には、借り入れを検討する必要があるかもしれません。資金の借り入れが困難な低所得の方や障がいのある方、高齢者がいる世帯が利用できる貸付制度として、「生活福祉資金貸付制度」があります。
この制度は、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸し付けと必要な相談や支援を行うというものです。この制度における資金の種類は、以下のとおりです。
・総合支援資金
・福祉資金
・緊急小口資金
・教育支援資金
・不動産担保型生活資金
・臨時特例つなぎ資金
このうち、本記事に関係しそうなのは「総合支援資金」「福祉資金」「緊急小口資金」ですが、生活保護世帯が利用できるのは「福祉資金」のみです。「総合支援資金」「緊急小口資金」は利用できません。
「福祉資金」の利用についても、生活保護制度では対応できない資金使途であること、福祉事務所が借り入れの必要性を認めていることが前提となっており、必ずしも借り入れができるわけではありません。利用したいときは、福祉事務所の担当ケースワーカーに相談してみることをおすすめします。
まとめ
本記事では、「冷蔵庫が壊れた場合、生活保護から支給されないのか?」「生活保護世帯が受けられる支援制度はあるのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
・冷蔵庫が壊れた場合、生活保護からは支給されない
・生活保護世帯が受けられる支援制度に「生活福祉資金貸付制度(福祉資金)」がある
生活保護制度は、最低限の生活を保護(扶助)するための制度であり、生活上発生した急な出費まで扶助するわけではありません。急な出費に備えて家計をやり繰りしなければならないという意味で、他の世帯(会社員・公務員や自営業者など)と変わるところはありません。
生活福祉資金貸付制度(福祉資金)は、都道府県の社会福祉協議会が行っている支援制度です。この制度を利用するためには、一定の要件を満たす必要があります。制度を利用できるかどうかについては、福祉事務所の担当ケースワーカーに相談してみましょう。
急な出費で慌てないために、本記事が参考になれば幸いです。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 生活保護法
厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領について
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ「生活福祉資金貸付制度」があります。
社会福祉法人東京都社会福祉協議会 生活福祉資金貸付事業
社会福祉法人大阪府社会福祉協議会 生活支援部 福祉資金グループ
社会福祉法人名古屋市社会福祉協議会 生活福祉資金貸付事業
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
