世帯年収600万円でも奨学金なしで私立医学部に子どもを通わせることはできるでしょうか?
実際に奨学金を返している約443万人のうち、3ヶ月以上延滞している人は約13万人いるといわれており、全体の3パーセント前後にあたります。
こうした状況を踏まえると、「奨学金なし・無借金で私立大学の医学部に通わせられるのか?」という疑問が出てくるでしょう。
本記事では、世帯年収600万円でも奨学金なしで私立大学の医学部に進学できるのかについて詳しく解説します。
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目次
私立大学の医学部で必要なお金の全体像
まず把握しておきたいのは、医学部にかかる学費の高さです。一般的な私立大学の文系学部と比べると、医学部の学費は5倍以上に達することもあります。
文部科学省のデータによれば、令和5年度の私立大学入学者の初年度学生納付金は、授業料・入学料・施設設備費を含めて平均約508万円です。パソコンや白衣、専門教材などの購入費を加えると、初年度は600万円近くかかっている可能性があります。
また、5年目前後にスタートする臨床実習では、交通費や宿泊費といった追加負担も発生するため、医学部6年間の学費総額は3000万円程度が相場とされています。
学費に加えて、生活費が発生することも忘れてはなりません。自宅から通学できればある程度コストを抑えられますが、下宿が必要な場合は、家賃や光熱費、食費などがかかるため、まとまった金額が必要です。
【結論】奨学金なし・無借金で私立大学の医学部に通わせるのはかなり厳しい
世帯年収600万円の毎月の収入だけで、私立大学の医学部の学費と生活費を借り入れなしで負担するのは、現実的ではないかもしれません。
年収600万円の家庭では、税金や社会保険料を差し引くと年間で約450万円です。そこから住宅費や生活費を引けば、学費に回せるお金はせいぜい100万円程度にとどまるでしょう。
一方で、私立大学の医学部では初年度納付金と諸経費で約500~600万円が必要です。毎年の学費も約400万円以上かかるため、手取り収入だけで支払うのは困難であることが想定されます。
無借金で進学させるには、数千万円規模の貯蓄がすでにある家庭か、祖父母からのまとまった援助がある場合など、特別な条件が前提となるでしょう。
無理なく学費を払うための資金計画とは
ここでは、年収600万円の家庭が現実的に検討できる対策をご紹介します。
特待生制度や学費免除制度を活用する
医学部は学費が極めて高額ですが、大学によっては「学費の一部または全額免除になる特待生制度」が用意されています。
例えば、慶應義塾大学では、入試成績上位約10名は、1~4年目まで毎年200万円、合計800万円の給付を行う特別な奨学金制度が利用可能です。また、北里大学では、原則2年次~6年次までの学費が半額、もしくは全額免除となる奨学金制度が設けられています。
ただし、これらの制度は「入試時の成績」や「入学後の成績維持」など、厳しい選抜基準が設定されている点に注意が必要です。
防衛医科大学校や自治医科大学という選択肢も
防衛医科大学校は、入学金や授業料が一切かからず、在学中は「特別職国家公務員」として扱われます。そのため毎月およそ11万円の手当が支給され、寮費や学用品の負担もほとんどありません。ただし、卒業後は9年間、自衛隊の医師として勤務する義務があります。
自治医科大学も、授業料や入学金の負担は実質かからないものの、卒業後は出身の都道府県が指定する公立病院やへき地医療機関で、貸与年数の1.5倍にあたる期間勤務する義務があります。
いずれも学費や生活費の負担を大幅に減らせるメリットがある反面、卒業後の勤務義務が伴う点に注意が必要です。
教育ローンを活用する
私立大学の医学部の高額な学費をまかなうには、教育ローンの利用も現実的な選択肢です。日本政策金融公庫の教育ローンや銀行の専用ローンなら、入学金や授業料だけでなく住居費や教材費にも使えて、返済方法も比較的柔軟に選べます。
ただし、親の信用情報や年齢制限があること、さらには子どもが進路変更をした場合でも返済義務だけが残るというリスクがある点に注意が必要です。
奨学金なしで私立大学の医学部に進学するためには工夫が必要
私立大学の医学部の学費は6年間で数千万円に達するため、世帯年収600万円だけで奨学金なし・無借金を実現するのは極めて厳しいといえます。
ただし、特待生制度や学費免除制度を積極的にねらったり、防衛医科大学校や自治医科大学といった学費負担がほぼない大学を検討したり、さらには教育ローンを計画的に利用することで、金銭面での負担を大きく軽減することは可能です。
出典
文部科学省 令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等 平均額(定員1人当たり)の調査結果について
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
