「若者の車離れ」と言われても…年収300万円で「ガソリン・保険料月1万円」「自動車税年2万円」は厳しいですよね? 平均年収と車の維持費を“トヨタ・ヤリス”で検証
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」によると、20代前半の給与所得者の平均年収は300万円を下回っています。年収300万円で、車を持つことは可能なのでしょうか。本記事では最新のデータに基づき、平均年収や車の維持費用を解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
平均年収はどれくらい?
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、20~24歳の平均給与は267万円、25~29歳では394万円です。なお、男性と女性で差があり、20~24歳における男性の平均年収279万円に対し、女性の平均年収は253万円でした。25~29歳では男性429万円に対し、女性が353万円となっています。
図表1
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告- より筆者作成
20~24歳では男女間の差が20万円ほどですが、25~29歳では70万円以上の差があります。図表1を見ると年齢が高くなるにつれて、この差は広がっていくことが分かるでしょう。なお、この平均年収は、税金が引かれる前の金額です。例えば、年収300万円の場合、税金で20%ほど引かれることを考えると、手取りの金額は約240万円となります。
自動車の購入は通常数百万円かかるため、平均的な収入の若者が簡単に購入できる金額ではないでしょう。
トヨタのヤリスを購入したときの税金
それでは、車の維持費用はどれくらいかかるのでしょうか。2025年に24歳の男性がトヨタのヤリス(グレードX、車両型式5BA-KSP210-AHXNK)を購入したと仮定してシミュレーションします。
多くの人が気になるのが、税金ではないでしょうか。自動車税の金額は、車の種別や総排気量、最大積載量などによって異なります。2019年10月1日以後に購入した自家用車の場合は、図表2の通りです。
図表2
東京都主税局 自動車税種別割 より筆者作成
総排気量が多いほど、税額も高くなります。今回購入したヤリスの総排気量は、0.996リットルのため、2万5000円です。
次に自動車重量税です。これは、所有している車の重量などに応じて課され、新車を登録したときに、最初の車検までの3年分、車検を受けるときに次の車検までの2年分をまとめて支払います。
エコカーであれば減税の対象となるため、車の購入を検討する際には念頭に置いておくといいでしょう。今回はエコカー減税の対象外で、車両重量は1トン以下のため、2万4600円です。税金のみを合計すると、4万9600円となりました。
トヨタのヤリスを購入したときの保険料
車を購入したときに欠かせないものが、自動車保険です。自動車保険は、法律で加入が義務付けられている「自賠責保険」と、任意で加入する「任意保険」の2つに分けられます。
自賠責保険は、他人にけがをさせたり、死亡させたりした場合に補償がおこなわれる保険です。保険料は、車種や保険期間に応じて定められており、37ヶ月契約の場合は2万4190円です。
任意保険はその名の通り、任意で加入する保険で、補償内容や運転者の年齢によって保険料が変化します。SOMPOダイレクト損害保険株式会社の見積もりによると、走行距離が4000キロメートル、保険の適用範囲を運転者のみとすると4万7090円となりました。保険料を合計すると7万1280円です。
ガソリン代や駐車場代はいくらかかる?
ガソリン代と駐車場代もなくてはならないものでしょう。経済産業省 資源エネルギー庁の給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)によると、レギュラーガソリンは1リットルあたり174.2円です(2025年8月25日時点)。
年間の走行距離が4000キロメートルとした場合、今回購入したヤリスの燃費は15.3キロメートル/リットル(市街地モード)のため、1年間のガソリン代は次の計算式で求められます。
4000キロメートル÷15.3キロメートル/リットル×174.2円/リットル=4万5542円
駐車場代は、場所によって差が大きいものです。地方では月額5000円ほどで済む場合もありますが、都内では1万円以上かかることもあります。
忘れてはならない車検費用
そして、車検費用も忘れないようにしましょう。初回は購入してから3年後、その後は2年に1回受けなければなりません。車検費用は、法定費用と基本料金の2つで構成されており、依頼する業者や車両の状態によっても変化します。なお、法定費用とは、自賠責保険料、自動車重量税、印紙税の3つをまとめたものです。
今回の車種の場合、法定費用は3万6000円ほど(自賠責保険料1万7650円、自動車重量税1万6400円、印紙税1800円~2200円)かかります。なお、印紙税の金額は指定工場で取得するか、陸運局で取得するかによって異なるため、注意しましょう。
車の維持費で毎月2万円かかる
これまで車の維持にかかるさまざまな費用を見てきました。車検費用は購入してから3年後のため、それ以外の費用をひと月あたりに換算し直し、駐車場代は月額1万円と仮定した場合、合計すると約2万1000円です。
年収300万円の場合、最低でも手取り収入の1割は車関連の費用となるでしょう。今回は東京都を想定しているため、駐車場代が高くなっています。地方であれば、ひと月あたりの費用を抑えられるでしょう。
また、実家暮らしか一人暮らしかによっても、使える金額が異なるため、年収のみで車を持てるかどうかを一概に断言できるものではありません。自身が何を優先したいかを考えながら、よく検討しましょう。
出典
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-
東京都 主税局 自動車税種別割
国土交通省 令和5年度税制改正に伴う自動車重量税の税額の基本的な考え方(フローチャート)
損害保険料率算出機構 自動車損害賠償責任保険基準料率
経済産業省資源エネルギー庁 石油製品価格調査 調査の結果
トヨタ自動車株式会社 トヨタ ヤリス 主要諸元表・装備一覧
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士


