スーパーで「お金足りない…」と困惑する子どもが! 他人が「不足分を出してあげる」のはアリですか?
SNS上では「不足分を代わりに支払ってあげた」というエピソードが「優しい行為」として話題になることもあります。しかし、いくら相手が子どもとはいえ、他人のお金を肩代わりする行為は本当に「優しさ」と言えるのでしょうか。
本記事では、子どもの買い物時の不足分を出してあげる行為は「優しさ」となるのか、また「思わぬリスク」につながる可能性について解説していきます。
ファイナンシャルプランナー2級
子どもにとって「助け舟」は心強い体験になる
目の前で困っている子どもに手を差し伸べることは、短期的にはとても価値のあることといえるでしょう。お金が足りなくて焦っているときに不足分を出してあげれば、子どもは安心して買い物を終えることができ、「知らない大人が助けてくれた」という心温まる体験になるでしょう。
小学校低学年くらいの子どもにとっては、お金の計算やレジでのやり取りはまだ慣れていないことも多く、ちょっとしたミスも起こりやすいものです。そんなときに近くの大人が不足分を出してくれたら、「世の中には助けてくれる人がいる」というポジティブな学びにつながります。
また、助けた側の大人にとっても「誰かの役に立てた」という喜びと満足感が生まれるのではないでしょうか。
「情けは人の為ならず」ということわざもありますが、人助けの経験は自己肯定感を高めてくれるので、相手だけでなく自分にとってもプラスになるという側面もあるのです。
「善意」が必ずしも適切とは限らない
子どもの買い物の不足分を支払うことは、一見親切な行為に思えますが、実は注意点もあります。まず考えられるのが「親や保護者とのトラブル」です。子どもが一人で買い物をしているときのお金は、本来は保護者が責任を持つものです。
第三者がお金を出してしまうと、「親が渡した金額の範囲で買い物をする」という大切な経験を妨げてしまう可能性があります。場合によっては、親が「お金の教育のためにわざと不足分を考えさせていた」というケースもあるかもしれません。
さらに、防犯面でもリスクがあります。子どもにお金を渡す行為は、周囲から「見知らぬ大人が子どもに近づいている」と警戒されてしまうことも考えられます。場合によっては、子ども本人や保護者に「不審な行為なのではないか」と思わぬ誤解を招いてしまうかもしれません。
また、子どもが今後同じようなことが起こったときに、「困ったら誰かが助けてくれる」という楽観的な考えをもってしまうことも考えられます。
お金が足りないときにどうするべきなのかを子ども自身に考えさせることも、お金の使い方を学ぶ大切な機会です。そのため、困っているからといって安易に不足分を出すことは、教育的な観点からみると最適とはいえないかもしれないのです。
代わりにできる「適切なサポート」とは
困っている子どもを前に、「見て見ぬふり」をするしかないのでしょうか。直接的にお金を渡さなくても、大人としてできるサポートはあります。まず、子どもがレジで焦っていたら、「お金が足りないみたいだけど、大丈夫かな」と声をかけて、まず子ども自身にどうしたらいいか考えさせるようにしましょう。
場合によっては店員に事情を伝え、対応を任せるのが安心です。レジの店員はこのような場面に慣れていることが多いので、商品を減らす、保護者に連絡するなど適切に処理してくれるでしょう。
不足分を立て替えてあげたい場合は、その場で「おうちの人に確認してね」の一言を添える、レシートを渡して後で返してもらえる形にするなど、誤解を避ける工夫が大切です。
「優しさ」と「教育」のバランスを意識して行動を
子どもがスーパーで「お金が足りない」と困っているときに、不足分を出してあげる行為は、美談に映ります。実際、SNSでも「心温まる行為」とされることもあり、子どもにとっても心強い「助け舟」となるでしょう。
しかし、教育的な観点や防犯面での誤解など、リスクにつながる可能性もあります。大切なのは「助けたい」という気持ちをそのまま行動に移すのではなく、子どもや保護者の立場を尊重し、適切な形でサポートすることです。
優しさとは「お金を出すこと」だけではありません。声をかける、店員に相談する、子どもが自分で解決できるように見守るといった行動も、子どもの教育という点では「優しさ」につながるでしょう。
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
