わが家は“年収1000万円”なのに「外食はフードコート」「新幹線は普通席」…都内「家族4人」で裕福な暮らしは難しい? 手取りから“実際の生活”を試算
ところが、実際に都内で家族4人暮らしをしてみると、そのイメージとは異なる現実に直面するかもしれません。東京都の統計データや家賃相場を見ながら、都内で暮らす年収1000万円の実際の生活を数字で見ていきましょう。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
年収1000万円の手取りは「月60万円」ほど
まず、専業主婦の妻と2人の小学生の子どもを持つ、年収1000万円の会社員の手取りを見ていきます。生命保険と医療保険に月1万円ずつ加入、iDeCoや地震保険は非加入の場合、差し引かれる社会保険料(15%と仮定)、所得税、住民税は次の通りです。
・社会保険料:約150万円
・所得税:約67万円
・住民税:約58万円
年収1000万円からこれらを差し引くと、手取り年収は約725万円、1ヶ月あたり約60万円強となります。手取り率は約72%にとどまり、自由に使えるお金は思ったよりも少ないのです。
都内3LDKの生活費は「54万円」に
東京都の「都民のくらしむき(令和6年年報)」によると、二人以上勤労者世帯の平均消費支出は37万2602円となっています。これだけを見ると23万円が自由に使えることになるので、余裕ある生活ができそうに思えます。
しかし、この平均消費支出に含まれる住居費は2万7000円程度に過ぎません。
ある不動産サイトによると、墨田区や荒川区、中野区などで3LDKを借りると、平均20万円前後の家賃がかかります。統計の住居費との差額約17万円を加えると、消費支出は実質54万円程度に跳ね上がるのです。
手取り60万円から生活費54万円を引くと、6万円しか残りません。上記の平均消費支出以上の生活をしようとするとあっという間になくなってしまう金額です。
例えば、この統計では教育費の平均が約2万8000円となっていますが、有名な進学塾に子どもが通うと月に4万5000円~6万円台後半の月謝がかかります。このように統計を組み合わせて見てみると、それほどぜいたくな生活ができるわけではないことが分かるでしょう。
高年収だからこそ使いたい国の制度
とはいえ、制度をうまく活用すれば可処分所得を増やせます。特にiDeCo(個人型確定拠出年金)とふるさと納税は、年収が高いほど効果的です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
会社員で企業年金のない場合、毎月2万3000円までiDeCoの掛け金を拠出でき、全額分所得控除を受けられます。年間27万6000円拠出することで、所得税5万5200円と住民税2万7600円で合計8万2800円分の節税となるのです。
ただし、掛け金は60歳まで引き出せません。「将来のために毎月貯蓄している資金をiDeCoに振り替える」イメージで利用するのが現実的です。
ふるさと納税
年収1000万円で専業主婦の妻と子どもがいる家庭の場合、寄附可能額の目安は約17万1000円です。自己負担2000円で3割相当の返礼品が受け取れるため、約5万円分の返礼品が届きます。
ふるさと納税でお米や日用品など生活必需品をもらうことで、家計負担を減らすことができます。
都内では年収1000万円でも裕福ではない。工夫してゆとりを
年収1000万円といえども、都内での家族4人暮らしは家賃や生活費が高く、自由に使えるお金は月6万円程度にすぎません。「裕福」というよりは「堅実な中流家庭」となるのが実態です。
しかし、iDeCoやふるさと納税といった制度を活用すれば、年間で約13万円の余裕を生み出せます。これは月に1万円強のゆとりに相当し、外食や旅行のグレードを少し上げられる余力になるでしょう。
また、家賃が占める割合が大きいので、住む地域などを工夫して家賃負担を下げて余力を生んでも良いでしょう。年収1000万円では裕福な生活は簡単ではないかもしれませんが、制度を賢く活用することで少しでもゆとりのある生活をしたいものです。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
東京都 令和6年年報「都民のくらしむき」(東京都生計分析調査)家計収支の概況
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
