6年間住んだ賃貸、原状回復費用として「20万円」請求されました。ペットも喫煙もなく、掃除も徹底して退去したのに、これは適正なの?
本記事では、原状回復のルールや費用の相場をもとに、今回のようなケースで20万円が適正かどうかを解説します。さらに、費用に納得できない場合の対処法や確認すべきポイントについても紹介します。
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原状回復とは
「原状回復」は、賃貸契約が終わるときに借りたときの状態にできるだけ戻すことを意味します。法律上では「入居者の通常の使用で生じる損耗(通常損耗)」や「経年劣化」というものは借主が負担すべきではないとされています。
国土交通省のガイドラインでも、これを明確に区別していて、家具設置跡・日光による壁紙の色あせ・畳の変色などは借主責任にならないケースが多いです。
一方で、借主の不注意や過失、契約で禁止されていることをした結果生じた汚れや損害は、借主が負担しなければならない場合があります。例えば大きな穴、汚れがひどくて通常の掃除で落ちないシミ、壁紙の煙ヤニ、ペットによる臭いや引っかき傷などです。
契約書や特約によっては、「クリーニング代は借主負担」と明記していることもありますが、その特約が有効かどうかは内容・説明・金額などで判断されます。
相場で見る費用の目安
20万円という請求が妥当かどうかを判断するために、部位別・住年数別の修繕・清掃の相場を概観してみます。
・壁紙(クロス)の張り替え・穴の補修
1平方メートルあたり1000〜1500円程度が多く、全面的に張り替えるなら費用が膨らみます。汚れ・日焼けなど通常の使用による変退色なら一部負担で済むことが多いです。
・ハウスクリーニング全体
1Rから2LDK規模でおおよそ1万5000円~4万円が多いですが、間取りが広い、汚れや設備が多いなど特殊条件があれば7万円程度になることもあります。
・床の張り替え、フローリングの補修等
簡単な補修なら数万円で済みますが、10畳規模の張り替えは15万~25万円程度が相場です。水回り設備の交換など大規模工事が加わると費用は大幅に増加します。
したがって、掃除・ペット・喫煙がない条件での通常の補修とクリーニングのみであれば20万円までかかることは少ないですが、部屋の広さや築年数、貸主指定の業者および材料のグレードによっては20万円に近づくこともあり得ます。
掃除・無ペット・禁煙の場合、請求20万円は妥当か?
「ペットなし・喫煙なし・掃除もきちんとした」という条件で20万円の原状回復費用が請求される場合、以下の事情が考えられます。
まず、6年など比較的長期の入居による壁紙や床の劣化は本来、経年劣化として貸主負担となる部分があります。しかし契約書に「クロス全面張り替えは借主負担」や「退去時清掃は指定業者で実施」などの特約があると、費用が高額になることがあります。
また、部屋の広さや設備の充実によって修繕が広範囲になれば当然費用が増え、部分補修ができず全面張り替えを余儀なくされるケースもコスト増加の要因です。
ただし、このような特別事情がないにもかかわらず20万円の請求があった場合は過剰請求の可能性があるため、契約書や請求書の内容を詳細に確認し、不明な点は説明を求め、公的相談窓口なども活用しましょう。
請求額に納得できないときの対応策
もし「20万円」の請求が高額に感じられる場合は、以下の対応を検討しましょう。
●請求明細書を請求して詳細な内訳を確認する
●可能であれば複数の業者から見積もりを取り、費用の妥当性を比較する
●借主が負担しなくてよい費用や範囲を契約書やガイドラインに基づいて整理する
●不動産仲介業者や管理会社と交渉する際には、「掃除をしっかり行った」「ペットや喫煙はなかった」といった証拠を写真や動画などで用意しておく
このような対応を行っても合意に至らない場合には、消費生活センター、住宅紛争防止条例の相談窓口、地域の無料法律相談などの公的機関を活用し、専門的な助言やサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
請求額20万円が適正かどうかは、「何が請求されているか」「契約書の特約の有無と内容」「住んでいた期間」「部屋の広さ・構造・設備」「清掃や使用状態」「通常損耗か過失か」「貸主がどの業者・材料を使っているか」など複数の要因で決まります。
掃除・ペット・喫煙なしという条件ならば、20万円は高めである可能性が高いですが、必ずしも不当とは言い切れません。請求明細を確認し、見積もりを取って交渉の余地を探すのがポイントです。「借主としてできる主張」は法律・ガイドラインに基づくものなので、自分の立場を整理して臨むことが大切です。
出典
国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
