高齢の母から「口座から引き出してきて」と頼まれました。家族が代わりにお金を下ろす行為は問題ないのでしょうか?

配信日: 2025.09.14 更新日: 2025.09.26
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高齢の母から「口座から引き出してきて」と頼まれました。家族が代わりにお金を下ろす行為は問題ないのでしょうか?
ある日、高齢のお母さんから「銀行の口座からお金を出してきてほしい」と頼まれた。家族として手伝いたい気持ちは分かりますが、「代理でお金を引き出す」ことには法律的・制度的なルールがあり、ただ頼まれただけで自由にできるものではありません。
 
本記事では家族が代わりに預金を引き出す場合、何が問題か、どうすれば安全か、制度的な整理も含めて解説します。
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代理でお金を引き出せる?

本人の意思があり、所定の手続きを踏んでいれば、家族が代理で預金を引き出すことは制度的に認められています。ただし、それには銀行ごとの規則、本人の意思確認の有無、書類の整備などの条件がつきます。 具体的には次のような方法が一般的です。
 

・委任状を取る

委任状は口座名義人本人が代理人にお金を出すことを許可するために書面で依頼するもので、本人の自署が基本です。直筆が難しい場合は代筆の可否を銀行に確認する必要があります。また、委任状とともに本人および代理人の本人確認書類の提出も求められます。
 

・本人確認書類・印鑑・通帳などを持参すること

代理人も含め、本人確認が取れる書類が必要です。印鑑が登録されていれば印鑑を使う場合もあります。
 

・銀行の代理人カード・代理人指名制度などを使う場合もある

銀行によってはあらかじめ代理人を登録しておけるサービスがあり、代理人カードが与えられることもあります。これを使うと毎回委任状を用意する手間が軽くなることがあります。
 

注意すべきケース/制限がある場合

「頼まれたから何でも下ろせる」というわけではなく、以下のような制限・注意点があります。
 

1.判断能力が低下している・認知症の疑いがある場合

銀行は本人の判断能力低下により口座凍結が可能であり、認知症などで凍結された場合は成年後見制度の利用が必要になります。代理人カードは本人の判断能力がある間のみ有効であり、判断能力低下後は使えなくなります。
 

2.銀行の規則・支店ごとの運用による差

各銀行によって「代理人の範囲」「委任状の書き方」「印鑑の登録」「代理人カード発行可否」などの取り扱いが異なります。窓口で「この銀行・この支店ではこういう方法でないと対応できない」ということもしばしばあります。
 

3.大きな金額を引き出す場合のリスク

多額の現金を下ろすときは、本人の意思確認や使い道の確認、家族間での誤解を避けるための記録が重要です。後で「こんなに使ったのか」と紛争になることもあるからです。
 

4.相続・死亡後の凍結

口座名義人が亡くなった場合、銀行が死亡事実を確認した時点で口座は凍結されます。葬祭費用など急な支出がある場合には、凍結前に手続きや準備をしておくことが重要です。
 

安全に代理引き出しをするためのポイント

家族が代理でお金を引き出すことを頼まれたら、以下をしっかり確認・準備しておくと安全です。


・本人からの「明確な意思」の確認
・委任状の用意と内容の明記
・本人確認書類・印鑑・通帳などを揃えること
・引き出した後の記録を残す
・本人の判断能力の確認

このような準備をしておけば、家族が代理で引き出すときも安心感を持って対応でき、本人にとっても家族にとっても納得のいく資金管理につながります。
 

法的制度の選択肢:成年後見・任意後見・家族信託

代理で預金管理をするだけでは将来のリスクを十分に回避できない場合があるので、制度的な準備も考えておくと良いです。
 

・任意後見制度

判断能力がまだしっかりしているうちに、将来判断能力が衰えた時に代理人として行動する人(後見人)をあらかじめ決めておく制度。契約を公正証書等で行うことが一般的です。
 

・成年後見制度

判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が後見人を選任し、財産管理・生活支援を行う制度。代理でのお金の引き出しや預金管理にはこの制度の後見人の権限が必要になることがあります。
 

・家族信託

財産管理を家族に委託する契約をあらかじめ結んでおくもの。本人が元気なうちに信託契約を作っておけば、将来の代理管理に備えられます。
 

まとめ

家族が高齢の母から預金の引き出しを頼まれた場合、それ自体が禁止されているわけではなく、条件を守れば可能です。ただし、本人の意思確認や委任状の用意、銀行の規則に従うことが欠かせません。
 
金額や使い道を明確にし、記録を残すなど慎重に対応すれば、後々のトラブルを防ぎ、安全に手続きができます。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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