足立区の“築46年アパート”が「特定空家等」として取り壊し! 行政代執行で「410万円」請求されるらしいけど、実家も“古い空き家”なので対象になるのでしょうか…?

配信日: 2025.09.21 更新日: 2025.09.26
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足立区の“築46年アパート”が「特定空家等」として取り壊し! 行政代執行で「410万円」請求されるらしいけど、実家も“古い空き家”なので対象になるのでしょうか…?
2025年8月下旬、東京都足立区で「特定空家等」に認定されていた築46年の木造アパートに対する行政代執行が実施され、区は当該アパートの解体作業に着手しました。
 
このニュースを聞いて、現在空き家を所有している人の中には「特定空家等」がどういったものなのか、なぜ行政代執行になったのか、気になった人もいるでしょう。
 
本記事では、特定空家等や行政代執行がどういったものなのかを説明し、今回のアパートが、行政代執行に至った経緯や理由などを解説します。また、行政代執行時の費用負担や、特定空家等になった際の固定資産税の変化なども紹介しますので、参考にしてください。
松尾知真

FP2級

「行政代執行」とは何か?

「行政代執行」とは、法律によって行政から命じられた行為を、命じられた本人が履行しない際、その人に代わって行政が実行することです。
 
今回は、アパートの所有者が本来実施すべき適切な管理や安全確保を怠ったため、老朽化によるベランダの倒壊等、空き家が著しく危険な状況に陥りました。そのため、区は周辺住民の安全・安心を守る目的で、アパートの解体に着手したのです。
 
所有者から見れば、自分のアパートを強制的に撤去されていることになります。しかも、解体費用など行政代執行に必要な経費は全額所有者に請求され、今回その額は約410万円です。
 
しかし、ある日突然行政代執行が行われるわけではありません。区によれば、4年間にわたり再三の指導、勧告、さらには命令を行ったにもかかわらず、所有者に改善の意思が見られなかったとのことです。
 
つまり、周辺におよぶ危険性や悪影響に加え、所有者に事態を改善する意思が見られなかったことが、行政代執行に至った主な原因だと考えられます。
 

「特定空家等」とは何か?

今回のような行政代執行は、空き家の中でも「特定空家等」に認定されないと実施できません。特定空家等とは、建物倒壊の危険や衛生上の問題、さらには著しく景観を損なうなど、近隣環境に悪影響を及ぼす空き家のことです。
 
そのため、ただ単に空き家になっただけで、行政代執行になってしまうことはありません。特定空家等は「空家等対策の推進に関する特別措置法」により定義されており、認定は市町村が行います。
 
市町村は、図表1のとおり、特定空家等に認定された建物に対して、指導、勧告、命令などに加え、行政代執行も実施可能です。現在は法改正により、放置が続けば特定空家等になってしまう「管理不全空家」という区分も追加されています。
 
図表1

図表1

福岡市 福岡市の放置空家対策について
 
また、管理不全空家や特定空家等に認定され、さらに勧告まで受けてしまうと、固定資産税などの税金が増えてしまいます。実は固定資産税には「住宅用地の特例」があり、図表2のとおり、例えば200平方メートル以下の部分は評価額が6分の1に軽減されます。
 
図表2
図表2

国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律
 
しかし、「特定空家等」などに関しては、この特例が適用されません。一定の措置もあり、税金はいきなり6倍にはなりませんが、3倍から4倍程度に跳ね上がる可能性が高いでしょう。
 

空き家でも適切な管理は欠かせない

今回のアパートが築46年だったことから、同じように古い空き家を所有していると不安になる人もいるでしょう。しかし、築年数がかなりたっていても、適切な管理がなされ、周辺への悪影響がない空き家が、いきなり特定空家等に認定されることはありません。
 
ただ、建物は古くなるほど老朽化が進み、適切な管理の必要性が一層高まることは十分に考えられます。そのため、築年数に関わらず、使用予定がない空き家は、売却などの処分を早めに検討することも大切です。もし、倒壊の恐れがあるようなら、解体を優先して考える必要もあります。
 
解体には100万円単位の費用が必要となるほか、荷物の整理といった問題もあり、簡単なことではありません。
 
しかし、もし空き家の倒壊などによって周辺に悪影響を与えると、損害賠償などを求められる可能性もあります。建物の所有者には権利と同時に管理義務があることも踏まえ、空き家をどう活用・処分するのか計画的に実践することが重要です。
 

まとめ

今回の場合は、周辺への悪影響に加え、アパート所有者に改善の意思が見られなかったことが代執行に至った要因だと思われます。
 
空き家の管理を怠り放置してしまうと、今回のように特定空家等に認定され、最悪の場合、強制的に解体されてしまうことも考えられます。現在、空き家を所有、もしくは今後相続などで所有する可能性のある人は、早めに空き家の活用や処分を考えてみてはいかがでしょうか。
 

出典

東京都足立区 特定空家等に対する行政代執行の実施について
国土交通省「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律
e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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