高齢の叔母が「生活保護」を申請。何年も音信不通で、私も「年収400万円」で余裕がないです。それでも“唯一の身内”なら援助すべきでしょうか?
本記事では、生活保護や扶養照会の概要のほか、扶養照会を断っても良いのか、断ったらどうなるのか、多少無理をしてでも援助すべきなのかといったことを解説します。
2級ファイナンシャルプランニング技能士
生活保護とは
生活保護とは、国民の最低生活の保障と自立を助けるため、困窮に応じて必要な援助を行うものです。生活保護は国民の権利であるため、困窮すれば誰でも利用できます。ただし、扶養義務者の援助が可能な場合は、生活保護よりもそちらを優先することとされています。
扶養照会とは
生活保護が申請された際に、扶養義務者による援助が可能か確認するために行われるのが扶養照会です。扶養義務者とは以下の人物が該当します。
・配偶者
・三親等内の親族(親・子、祖父母・孫、兄弟姉妹、おじ・おば、おい・めいなど)
しかし、上記の人々に必ず扶養照会が行われるわけではありません。以下のように扶養が期待できない場合には、照会されないケースもあります。
・10年程度音信がない
・借金や相続などの問題で関係が悪い
・未成年や70歳以上の高齢者
ただし、実際にどこまで照会が行われるのかは、申請先の自治体によって判断が分かれるようです。
扶養照会を断るとどうなる?
扶養照会を断ると、生活保護の申請に問題が生じるのでしょうか。結論から言うと、断るべき理由があれば、扶養照会は断っても、生活保護の申請には影響はありません。断るべき理由としては、経済的に援助が難しい場合や、生活保護申請者との関係が悪く援助したくない場合などが該当します。
扶養照会がきた際にやってはいけないことは、回答をしないことです。保留の状態が続くことで、生活保護の手続きが遅れます。援助ができないのであれば、早めにその旨の意思表示をしましょう。
多少無理をしてでも援助すべき?
生活保護で支給される金額は、単身世帯であればそれほど多くありません。例えば、2023年の東京都区部の高齢者単身世帯の生活扶助基準額は7万7980円でした。そのため、多少無理をすれば、自分たちで扶養ができると思うかもしれません。
しかし、生活保護は生活扶助として現金が支給されるだけでなく、アパートの家賃を支給する住宅扶助や、医療・介護費用が無料になる医療扶助・介護扶助などがあります。これら全てを生活保護ではなく扶養することでカバーしようとすると、簡単ではない家庭が多いのではないでしょうか。
もちろん全面的な扶養は不可能でも、月に1万円のように、できる範囲での援助も可能です。ただし、この場合は援助した額の分、生活扶助の額が減額されます。
また、扶養照会の際は金銭的な援助だけでなく、精神的な支援ができるかどうかも確認されます。単身で困窮している人であれば、経済的な支援だけでなく精神的な支援も重要な場合が多いです。
もし、経済的な支援が無理だとしても、何か力になりたいという気持ちがあるのであれば、精神的な支援を行ってみてはどうでしょうか。定期的に訪問したり電話をかけたりして、金銭面以外でその人を支えてあげるのも大切なことです。
まとめ
生活保護を申請すると、三親等以内の親族などの扶養義務者に扶養が可能かたずねる扶養照会が行われます。扶養照会がきたからといって、必ず援助をしなければならないわけではありません。自分の生活に精いっぱいで余裕がない場合などは、断っても問題ありません。逆に無理をして援助をすると、共倒れになる恐れがあります。
一方で、援助には経済的なものだけでなく、精神的なものも大切です。経済的な支援が難しい場合は、生活保護を申請した親戚との関係性が悪くないのであれば、交流をもつなど、精神的な支援を考えても良いのではないでしょうか。
出典
厚生労働省社会・援護局保護課 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について
厚生労働省 「生活保護制度」に関するQ&A
執筆者 : 山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士
