江戸時代の「ブラック出張」!? 大名が苦しんだ「参勤交代」の驚くべき実態とは

配信日: 2025.09.23 更新日: 2025.09.26
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江戸時代の「ブラック出張」!? 大名が苦しんだ「参勤交代」の驚くべき実態とは
江戸時代の大名たちは、1年おきに江戸と国元を行き来する「参勤交代」を義務付けられていました。しかし、この制度は単なる移動ではなく、大名にとって大きな負担となるものでした。
 
何百人もの家臣を引き連れ、何十日もかけて江戸へ向かう道中は、膨大な出費と過酷な移動を強いられる「ブラック出張」といえます。さらに、江戸では幕府の監視下で生活をしなければならず、藩の財政を圧迫する一因にもなっていました。
 
本記事では、大名たちが苦しんだ参勤交代の実態やその背景にある幕府の狙い、そして現代にも通じる「出張・転勤負担」の視点から、この制度の本質を掘り下げていきます。
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参勤交代とは? 幕府が課した「大名への試練」

参勤交代は、江戸幕府が大名に1年おきに江戸と国元を往復させ、江戸で一定期間生活させる制度です。三代将軍・徳川家光の時代に定められ、大名の力を削ぐための統制策として機能しました。
 
大名が長期間不在となることで、藩政や財政面に大きな影響が出ます。一方、幕府は有力大名を江戸に滞在させ、常に監視できるメリットを得ていました。
 

参勤交代の実態「ブラック出張」の驚くべきコスト

参勤交代は大名1人が動くだけではなく、警護や給仕を担う家臣、荷物を運ぶ人足など何百人もの行列を伴う大規模な移動でした。行列が通る街道での宿泊費や食事代、さらに華美な装いを整える費用もかさみました。見栄や威厳もあり、必要以上に華やかにするケースもあったようです。
 
結果として、想像を超えるコスト負担が大名の家計を逼迫(ひっぱく)させる原因となったといいます。
 
例えば、江戸時代の最大規模の藩の1つである加賀藩は、片道で約5500両のコストがかかったとされています。当時はお米1石(約150キログラム)=1両とされており、現在のお米の価格に換算すると、1両は約10万円です(5キログラム=約5000円換算/2025年4月時点)
 
片道だけで約5500両かかった加賀藩は、現在の価値で5億5000万円、往復で10億円を超える大金を使っていたようです。
 
現代でも会社命令の出張は当然ありますが、交通費や宿泊費は会社負担であり、各種手当が支給される企業もます。「全額自腹」だった江戸時代の参勤交代は、究極の「ブラック出張」だったといえるでしょう。
 

参勤交代の過酷な旅路にかかる移動の苦労

当時の交通手段は基本的に徒歩で、遠方の藩では片道で何十日も要しました。天候不順で道がぬかるむなど、旅程が乱れるリスクも高かったのです。
 
疲労や病気の発生を避けるには周到な計画と資金が欠かせません。こうした長い旅を繰り返すことは、大名や家臣にとって大きな負担であったと想像できます。
 

なぜ幕府は参勤交代を課したのか? 本当の狙いとは

参勤交代には、大名の軍事・経済力を削ぐ狙いがありました。移動や滞在に伴う莫大な支出で藩の財政を疲弊させれば、反乱を起こす余力を奪えるからです。
 
加えて、大名の家族を江戸に住まわせることで事実上の人質とし、幕府への忠誠を維持させる意味合いもありました。
 
これは、現代の企業が主要拠点へ幹部を転勤させて組織への帰属意識を高める仕組みに通じる部分があります。勤務地を離れる負担が大きい一方、管理側にとっては人事をコントロールできるという面で、江戸時代の幕府と似た狙いが感じられます。
 

参勤交代は現代の出張や転勤と似ている?

参勤交代は遠方の拠点へ定期的に赴き、一定期間滞在する点で、現代の出張や転勤に似ているといわれています。とくに大名と家臣団が大勢で移動したため、宿泊費や食糧費など莫大な出費を強いられました。
 
また、江戸屋敷に家族を住まわせた様子は、単身赴任や家族帯同に通じる面もあるでしょう。こうした経済的負担や生活上の調整が求められる仕組みは、時代を超えて共通する部分があるといえます。
 
急な転勤があると、持ち家の扱いに困ることもあり、やむを得ず売却して転勤するケースや、転勤が頻繁なため最初から賃貸に住み続けるといった選択を強いられることもあるでしょう。
 
多大な費用と手間を伴う参勤交代と、現代企業の全国規模の事業展開における出張や転勤とは多くの類似点が見られます。
 

まとめ

参勤交代は大名の力を抑える政策として機能し、多くの移動日数と莫大な出費が生じました。家臣や家族にも及ぶ負担は軽視できず、現代の企業における出張や転勤が社員に与える影響と重なる面もあります。
 
歴史を振り返ることで、働き方を検討する一助となるかもしれません。
 

出典

日本銀行金融研究所 江戸時代の1両は今のいくら? ―昔のお金の現在価値―
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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