駅前で「財布を落としてしまった」という女性に“1000円”を貸したら、後日同じ場所で「お金貸してください」と頼んでるのを目撃! これって“寸借詐欺”ですか? 元警察官の筆者の経験もまじえ解説

配信日: 2025.09.24 更新日: 2025.09.26
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駅前で「財布を落としてしまった」という女性に“1000円”を貸したら、後日同じ場所で「お金貸してください」と頼んでるのを目撃! これって“寸借詐欺”ですか? 元警察官の筆者の経験もまじえ解説
見知らぬ人から突然「財布を落としたのでお金を貸してほしい」と言われ、同情してお金を貸してしまう場合があるかもしれません。
 
このようなケースでは、財布を落として本当に困っているケースもあれば、同じ手口を何度も繰り返している常習的な寸借詐欺犯のケースもあり得ます。筆者は前職が警察官で、このような寸借詐欺を取り扱ったこともありました。
 
本記事では、寸借詐欺とはどのようなものなのか、あとから発覚した場合にはどうなるのか、突然「お金を貸して」と言われたときの対処法などを、筆者の経験もまじえながら解説します。
山根厚介

2級ファイナンシャルプランニング技能士

寸借詐欺とは

寸借詐欺(すんしゃくさぎ)は、詐欺の手口の1つで、お金などをちょっとの間だけ貸してくれと言って、そのまま返さずにだまし取ることです。今回の事例のように、財布を落として交通費がないといって第三者をだます方法などが代表的です。
 

そもそも詐欺罪とは

そもそも詐欺罪とは、どのような罪なのでしょうか。詐欺罪が成立するには、以下の要件が1から4の順に成立することが必要です。

1. 犯人が被害者をだます
2. 被害者がだまされる
3. 被害者が犯人にお金などを渡す
4. お金などが犯人の手に渡る

上記の要件が必要であるため、一見詐欺のように思えても、詐欺罪が成立しないケースは意外と多くあります。例えば、お金を貸して返してもらえないときに「詐欺だ!」と言ってしまいがちです。しかし、お金を借りた人に返すつもりがあるのなら詐欺罪は成立しません。「だます意思」は内心面に関わるため、証明が難しいケースもあります。
 
寸借詐欺は、被害金額が少ないことも立証が難しい理由の1つです。例えば、1000万円や1億円のように被害が高額であれば、犯人の経済状態などから最初から返せるあてがなかったことを比較的証明しやすいでしょう。
 
しかし、少額であればあるほど、「返すつもりだった」と言われるとそれを覆すのが難しい面があります。筆者も、寸借詐欺や無銭飲食など少額の詐欺事件で、立証がうまくできなかったケースが何度かあります。
 

あとから詐欺だと分かったときはどうなる?

あとから寸借詐欺だと分かった場合には、どうなるのでしょうか。
 
今回の事例のように、後日同じ場所で同じようなことをしていることは、通常あり得ませんから、常習的な寸借詐欺犯である可能性が高くなります。この場合、自分がだまされた件では、すでに時間が経過しているため現行犯逮捕はできません。速やかに警察に通報して、捜査してもらうべきでしょう。
 
無事に犯人が捕まったとしても、お金が返ってくるかどうかは分かりません。詐欺罪で立件されるのは刑事的な手続きで、お金が返ってくるかどうかは民事的な手続きになるからです。犯人が開き直ってしまえば、お金は返ってこないでしょう。こればかりは、犯人次第なのでなんともいえません。
 

知らない人から突然お金を貸してくれと言われたら

今回のように、知らない人から突然「財布を落としてお金がないので貸してほしい」と言われたら、どうすれば良いのでしょうか。都道府県によっては、警察に公衆接遇弁償費という制度があり、警察で最低限のお金を借りられます。
 
筆者のいた県ではそのような制度は運用されていませんでしたが、財布を落として家に帰れないケースはよくありました。
 
通常は家族に連絡するなどの方法でなんとかしていたのですが、なんともならないときには自腹を切ったこともあります。ちなみに、お金が返ってきたのは半分くらいでした。少額であるためか、喉元を過ぎればすっかり忘れてしまうのが人の心のようです。
 
また、鉄道会社によっては、駅員に事情を話して後日払いにできるケースがあるようです。ただし、切符を購入したのに紛失したとか、乗り越し料金が足りないなどの場合に限ってであり、最低限の切符購入の必要があります。
 
ほかにも、遠隔地に住んでいる場合は、家族などが到着駅で切符の代金を払うことで、電車に乗れるケースもあるようですが、一般的な方法ではないようで、必ず利用できるかどうかは分かりません。
 
いずれにしても、個人がお金を貸さなくてもほかの手段はいくつか残されています。「お金を貸してほしい」と言われたら、取りあえずは最寄りの交番へ案内するのがベストではないでしょうか。
 

まとめ

寸借詐欺は、口実をつけて少額のお金などを借りて、そのままだまし取る詐欺の手口です。あとから詐欺だと分かれば、詐欺罪として立件できる可能性はあります。速やかに警察に通報しましょう。
 
知らない人から突然お金を貸してくれと言われたら、個人的にお金を貸してあげるのではなく、まずは交番へ案内するのが良いのではないでしょうか。
 
執筆者 : 山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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