父は定年後もバイトをしていますが年金が月「6万円」と少なく、毎月赤字のようです。「いざとなったら生活保護を申請する」と言っていますが、簡単に利用できるものなの?

配信日: 2025.09.26 更新日: 2025.09.29
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父は定年後もバイトをしていますが年金が月「6万円」と少なく、毎月赤字のようです。「いざとなったら生活保護を申請する」と言っていますが、簡単に利用できるものなの?
「定年後の生活は年金で安心」と考えていたものの、実際には年金だけでは生活費を賄えず、毎月赤字に陥る家庭は少なくありません。
 
今回のケースのように、年金が月6万円程度では、家賃や食費、医療費を払うと生活は厳しいのが現実です。そのため、「足りなくなったら生活保護を受ければいいのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし生活保護はそんなに簡単に受けられるのでしょうか。
 
本記事では、生活保護の仕組みや条件、注意点を解説します。
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生活保護の申請自体は簡単、誰でも相談できる制度

生活保護は、憲法で保障された国民の権利です。生活に困ったときは、誰でも申請することが可能です。手続きはお住まいの自治体の福祉事務所で行い、申請書も窓口で受け取ることができます。必要書類がそろっていなくても、まずは申請を受け付けてもらえるケースもあります。
 
厚生労働省も「生活に困っている人はためらわず自治体の窓口に相談してほしい」と呼びかけており、制度そのものの利用ハードルは高くありません。つまり「簡単に申請できるか」という問いに対しては、「はい、できます」と答えられます。
 
ただし、申請できることと実際に受給できるかどうかは別の話です。受給にはいくつかの条件があり、それを満たしているかどうかが大きなポイントになります。
 

受給には「収入・資産・家族」の条件を満たす必要がある

生活保護を受けられるかどうかは、主に次の4つの条件で判断されます。
 
1つ目は、収入が最低生活費を下回っていることです。最低生活費とは、地域や世帯人数によって異なる基準額で、住む場所によって金額は変わります。
 
例えば、都市部(1級地-1)の単身高齢者(68歳)の場合、生活扶助費と住宅扶助を合わせて約13 万円が最低生活保障水準とされます。もし、年金6万円とバイト収入を足してもこの額に届かない場合、不足分が生活保護で賄われる可能性があります。
 
2つ目は、資産を持っていないことです。預貯金や不動産、車などは原則として処分して生活費にあてる必要があります。持ち家(自宅)については、例外的に所有が認められる場合もありますが、原則は資産の活用が求められます。
 
3つ目は、扶養義務者から援助を受けられないことです。ここでいう扶養義務者とは親子や兄弟姉妹など近しい家族を指します。福祉事務所は、扶養義務者(親・子・兄弟姉妹など)に援助の可否が照会されますが、仕送りが困難であれば援助が強制されるわけではなく、多くの場合その旨を伝えれば審査が進みます。
 
4つ目は、年金や各種給付など他の制度を使っても生活できない場合です。つまり、すべての制度を利用したうえで、それでも生活が成り立たない場合に生活保護が適用されます。
 
この4つを満たすことが、生活保護を受けるための大前提になります。
 

生活保護を受けるまでの流れと注意点

生活保護は申請すればすぐに支給されるわけではなく、相談から調査、決定まで一定の手続きがあります。また、受給後も守らなければならないルールがあり、注意点を理解しておくことが大切です。申請から受給開始までは、次のような流れです。
 
まず福祉事務所で相談し、申請書を提出します。その後、ケースワーカーが収入や資産、家族状況を調査し、原則14日以内、最長30日以内に受給可否が決まります。
 
承認された場合、原則として申請日までさかのぼって支給され、不足分が口座に振り込まれます。また、医療費や介護費用は直接サービス提供先に支払われるため、自己負担が減る点も大きな安心材料です。
 
ただし、受給中には注意すべき点もあります。毎月の収入や生活状況を申告する義務があり、虚偽申告をすると不正受給とみなされ返還や処分の対象となります。
 
また、クレジットカードは審査が通りにくく作りづらい場合が多いほか、長期間の旅行や引っ越しをする際は事前にケースワーカーへの連絡・承諾が必要となります。これらの制約点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
 

生活が苦しく不安なときは一人で悩まず福祉事務所に相談しよう

今回のケースのように年金が6万円と少なく、バイトをしても生活費に届かない状況では、生活保護を申請できる可能性は十分にあります。預貯金・不動産などの資産がほとんどなく、親族による支援も受けられない場合、不足分を補う形で生活保護の支給を受けられるでしょう。
 
「生活保護は恥ずかしいもの」と感じる方もいますが、それは誤解です。生活保護は国民の権利として認められている制度であり、安心して老後を過ごすための大切なセーフティーネットです。毎月の赤字で将来が不安な場合は、ためらわず福祉事務所に相談し、ケースワーカーと一緒に解決策を探すことをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護を申請したい方へ
厚生労働省 2025(令和7)年4月1日施行 生活保護実施要領等
厚生労働省 第52回社会保障審議会生活保護基準部会 参考資料 生活保護制度の概要等について
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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