「シルバー」と「プラチナ」はなぜあんなに値段が違うのですか?見た目はそんなに変わらないのに…と思ってしまいます。
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目次
プラチナが高価である最大の理由:希少性・供給リスク
プラチナとシルバーの価格差を理解するには、まず「どれくらい希少なのか」「採掘コストや供給体制はどうか」という点を押さえる必要があるでしょう。
プラチナは地殻中の存在量が非常に少なく、シルバーと比べて採掘可能な鉱床も限定されており、年産量もかなり抑えられています。
プラチナの鉱山供給は、南アフリカ・ロシア・ジンバブエなど特定地域に偏っており、地域紛争・政治リスク・労働問題・環境規制などに左右されやすいという面があります。これらは供給のボトルネックとなることがあり、希少性が高い金属として価格を押し上げる要因となっているでしょう。
一方、シルバーは地殻中でも比較的豊富で、採掘技術も成熟しており、鉱山供給量もプラチナに比べてはるかに多いという特徴があります。こうした供給側の違いが、まず価格に大きな差をもたらします。
また、採掘・精錬のコストもプラチナのほうが高くなりがちです。例えば、鉱石から純度を高めるまでの工程、深い場所での採掘、環境対応や安全管理の負荷などが価格帯に反映されやすいのです。
こうした供給側の制約が「プラチナは高価になりやすい」という土台を作っていると考えられます。
需要構造の違い:工業用途・代替性・変動要因
プラチナとシルバーは、用途(需要側)にも大きな違いがあります。
まず、プラチナは自動車の排ガス浄化装置(触媒)などに使われることが多く、環境規制や自動車産業の動向と密接に関わっています。
電気自動車(EV)や燃料電池車の普及が進むと、ガソリン・ディーゼル車向けの触媒用途が減る可能性があり、逆に燃料電池用触媒などでプラチナ需要が増える可能性もあります。こうした産業トレンドの影響を受けやすいという面があります。
対してシルバーは、電気・電子部品、太陽光パネル、接点・半導体、写真材料、電気回路材料など多方面で使われます。工業用途比率が非常に高く、工業需要の変動に価格が敏感になります。つまり、経済成長・製造業の盛衰・技術革新などがシルバー価格を振り回す要素になっているのでしょう。
また、プラチナは代替が効きやすい金属(例えばパラジウム、ロジウムなど)との競合・代替の圧もあります。ある時期にはパラジウムの方が価格上昇して使われるようになることで、プラチナ需要が抑制されるケースもあります。
こうした「用途の幅」「代替性」「産業動向とのリンク性」が、プラチナとシルバーの価格差を変化させる重要な要素といえます。
市場規模・流動性・投資マインドの違い
希少性・需要に加えて、もう一つ見逃せないのが「市場として取引される量」「流動性」「投資家の期待・マインド」の違いです。
シルバーは投資用も工業用途も需要が大きく、売買量(流通量・取引量)も比較的豊富です。取引市場での流動性が高いため、買いやすく、売りやすいという性質があります。
一方、プラチナ市場はシルバーに比べて小さめで、取引量・流通量の面で制約を受けやすい部分があります。特に資産運用系や投資家が扱いやすい商品・流通ルートが少ないことが、取引コストや手数料が高くなる要因でしょう。
また「資産の保有手段」としての魅力・期待値が異なっていることもあります。プラチナは希少であることや高級感、産業用途の先行きなどを織り込まれることがあり、「価値保存性・ステータス性」を織り込んだ価格付けがなされやすいことがあります。
このように、供給・需要・市場構造の三方向から差がつくため、見た目は似ていても価格は大きく異なるのです。
実際の価格差と比率の動き
では、実際にはどれくらい差があるのか、比率の動きを見てみましょう。
例えば、プラチナとシルバーの「プラチナ:シルバー比率(1オンスのプラチナが何オンスのシルバーに相当するか)」という指標があります。これによれば、一時はプラチナが銀の154倍以上の価値を持っていた時期もあり、近年では数十倍(たとえば60倍程度)という水準で推移していることもあるようです。
ただしこの比率は固定されているわけではなく、需要・供給ショック、金利変動、通貨変動、産業需要変化などによってかなり揺れます。ある年はシルバー価格が急騰して比率が縮まることもありますし、逆にプラチナが需要側で強く評価されて比率が拡大することもあるようです。
このように「常にプラチナが〇倍高い」という一定の差があるわけではなく、価格差は動的に変動するものですが、構造的な要因でかなり高い水準にあることが多いようです。
まとめ:見た目の差よりも“背景の違い”が価格を決める
シルバーとプラチナは、どちらも白銀色で一見すると似ていますが、価格差を生む決定的な要因はその背景にあります。プラチナは希少で産出国も限られており、供給リスクが高い金属です。加えて、自動車の排ガス浄化装置や燃料電池など、先端産業に欠かせない用途が多く存在し、産業トレンドとともに需要が大きく揺れます。
一方、シルバーは比較的豊富に採掘でき、工業用途で幅広く使われるものの、供給リスクは小さく、市場規模や流通量も大きいため、プラチナほどの希少性やプレミアムは織り込まれにくいのです。
つまり、「見た目は似ているのに値段が違う」というのは自然な疑問ですが、金属の価値は外見ではなく、供給体制・需要構造・市場特性の違いに大きく左右されるのです。この視点を持つことで、貴金属の価格の裏にある仕組みが理解しやすくなり、ジュエリーや投資を選ぶ際にも納得感を持って判断できるのではないでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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