「世帯年収800万円」でも、奨学金を借りるべき? 借りるならどのくらいが負担にならない金額でしょうか?

配信日: 2025.09.28 更新日: 2025.09.29
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「世帯年収800万円」でも、奨学金を借りるべき? 借りるならどのくらいが負担にならない金額でしょうか?
大学や専門学校への進学を考えたとき、「家計にゆとりがあるから奨学金は借りずに済ませたい」と考える方も多いでしょう。たとえ世帯年収が800万円と聞くと余裕がありそうに思えますが、実際には教育費・授業料・生活費・住居費などの支出を考えると、「借金を避けたくても借りざるを得ない」ケースも少なくありません。
 
本記事では世帯年収800万円という前提のもとで、奨学金を借りるかどうかの判断基準と、借りるならどのくらいが無理のないラインかどうかを解説します。
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奨学金制度の基本と年収制限

まず押さえておきたいのは、奨学金には「貸与型(返済義務あり)」と「給付型(返済不要)」の2種類があり、それぞれ審査基準や条件が異なる点です。給付型奨学金は、主に経済的に困難な家庭を支援することを目的としており、世帯年収に上限が設けられていることが多いです。
 
実際、給付型奨学金の対象となる年収ラインは、家族構成等によって異なりますが、比較的低めに設定されていることが多いです。年収800万円という水準では、給付型の対象から外れる可能性が高いと考えるべきでしょう。
 
一方で、貸与型奨学金(日本学生支援機構などが提供するもの)は、第一種奨学金(無利子)が世帯年収約800万円以下を目安に制限されており、第二種奨学金(有利子)はより高い世帯年収でも申請可能です。審査は原則として生計維持者の世帯年収で行われます。
 
つまり、世帯年収800万円という数値だけで「奨学金を借りるべき/借りないべき」を判断するのは早計で、どの制度が使えるか・返済リスクとして許容できるかを見極める必要があります。
 

世帯年収800万円という前提で検討すべき視点

世帯年収800万円の家庭が奨学金を借りるかどうかを判断する際、考慮すべき主な視点は以下のとおりです。
 

家庭の支出構造・生活余力

年収800万円は一見「かなり余裕がある」と感じますが、実際には住居費、車の維持費、教育費(小中高校)、保険・医療費、老後準備などの支出が重くのしかかります。これらの支出を差し引いた可処分所得で、子どもの大学費用が家計にどのくらい負担となるかをシミュレーションすることが重要です。
 

返済能力・返済負担率

奨学金の返済は将来にわたる義務です。返済が過重にならないラインを見極めないと、卒業後の生活に支障をきたします。多くの家計診断では、教育ローン・奨学金の返済負担を年収の5~10%程度に抑えることが無理のないラインとしています。
 

借りる金額と借入期間

借入金額や期間を長くしすぎると、利子負担が増え返済期間も延びて負担が重くなります。可能であれば借入期間を短くし、利息のかからない無利子タイプの奨学金を優先的に利用することが望ましいです。
 

リスクや突発的支出への備え

予期せぬ病気や事故、一時的な収入減などの支出に備えるため、一定の生活余力を残しておくことが重要です。教育資金に全てを充ててしまい、後で家計が圧迫されるのは避けるべきで、将来の安心のため適度な余裕を持った設計が理想的です。
 

借りてもよい目安レンジ

世帯年収800万円を前提に返済負担率を年収の5~10%程度と仮定すると、年間返済額は40~80万円程度になります。これを4〜5年の返済期間で返すと、借入総額の目安は160~400万円程度と想定できます。
 
例えば、年間返済額を60万円、返済期間を10年とすると、返済総額は600万円になります。この場合、4年間で均等に借りると年間約150万円、総額では約600万円の借入シミュレーションも成り立ちます。ただしこの返済額は家計に重くのしかかる恐れがあります。
 
別の例として、返済期間を5年、返済負担率を年収の6%(年間48万円、月約4万円)と見込んだ場合、4年間の借入上限は年間48万円、合計192万円程度が無理のない目安となります。
 
これらのモデルをもとに、家計の他の支出や将来の収入見通しを加味し、「自分にとって無理のない借入上限額」を設定することが重要です。
 

まとめ

世帯年収800万円という条件では、給付型奨学金の対象となる可能性は低く、現実的には貸与型奨学金を利用するケースが多くなります。
 
ただし、奨学金を借りる場合は、将来の返済負担を考慮し、返済負担率を年収の5〜10%程度に抑える設計が重要です。利子の有無、返済期間の長さ、将来的な支出リスクも加味して、無理のない借入上限額を見定める必要があります。
 
具体的には、月額3~5万円程度の返済負担を上限とし、その範囲で年間の借入額を逆算して計画する方法が安全圏といえます。ただし実際には、家計の支出構造や他の教育・生活支援制度の利用状況、貯蓄や資産状況、将来の収入見通しを考慮して個別に調整することが求められます。
 

出典

独立行政法人日本学生支援機構 【給付奨学生】2025年10月の支援区分見直し(2025年度適格認定(家計))
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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