地元の友人に「東京に住むなんてお金持ち」と言われました。「29歳・年収360万円」ですが、東京に住むのってそんなに難しいですか? 節約すれば大丈夫ですよね? データで“東京の生活費”を確認
とはいえ、東京都に住んでいる全ての人が高年収というわけでもないでしょう。今回は「29歳・年収360万円」で、東京で生活できるのか──データを用いて検証していきます。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
家賃を除いた生活費でも東京都は全国より高い
総務省の「家計調査報告(2024年)」によると、単身世帯の1ヶ月の消費支出(住居費を除く)は全国平均で14万6176円です。
この数値を基に、東京都の「都民のくらしむき」に示された支出項目ごとの対全国倍率を使って、東京都で暮らす場合の生活費(住居費を除く)を試算したものが図表1です。
図表1
総務省「家計調査報告(2024年)」と東京都「『都民のくらしむき』東京都生計分析調査報告(年報)令和6年」より筆者作成
東京では家賃を払う前から、すでに全国平均より毎月約1万8000円多く生活費がかかることが分かります。光熱・水道費や交通・通信費は安く済む一方で、食費や被服費、娯楽費の負担が大きくなる傾向にあるのです。
家賃を加えると年収360万円では生活がギリギリ?
全国より高い生活費に、家賃を加えると年収360万円では生活がギリギリか、もしくは赤字になってしまいます。
年収360万円、つまり月収30万円で手取り率を80%と仮定した場合の月の手取り額はおおよそ24万円です。家賃以外の生活費が約16万4000円だとすると、家賃や貯蓄に充てられる金額は7万6000円ほどになってしまいます。
不動産・住宅サイト「SUUMO」の2025年9月24日時点の23区の家賃相場(1K/1DK)を見てみると、江戸川区(7万1000円)や足立区(7万3000円)など、比較的家賃の安いエリアであれば、ギリギリ生活できる計算です。
しかし、江東区(9万4000円)や墨田区(8万9000円)のように少し相場が上がると赤字になってしまいます。東京まで1時間以内に行けるエリアである、例えば千葉県松戸市(6万円)、千葉市稲毛区(5万5000円)と比較すると割高で、家賃の負担は決して小さくないでしょう。
つまり他のエリアと比べると、23区内は年収360万円で住むには厳しい地域であるということがいえるのです。
固定費の見直しを中心に平均以下の支出を心がけよう
それでも年収360万円で23区内に住みたいのであれば、支出を平均以下に抑えることが大切です。
それを実現したいなら、まずは「固定費の削減」から始めましょう。「自炊」や「水道光熱費の節約」と違い、一度見直してしまえば効果がずっと続くことが魅力です。
具体的には、使っていないサブスクを解約する、スマホや固定回線のプランを見直す、格安SIMに乗り換えるなどが挙げられます。
また可能であれば家賃が安い物件への引越しも考えたいところです。同じ区内でも、駅から少し離れた物件や、築年数が経過した物件を選ぶことで、相場より家賃を安くできる場合があります。
引越しには初期費用がかかりますが、数ヶ月で元が取れるのであれば検討の余地があるでしょう。
このような固定費を削減できれば、その分を生活費に充てたり、貯蓄や自己投資に回したりすることができます。生活に余裕が生まれることで、年収360万円での東京23区内暮らしが実現に近づきます。
年収360万円でも東京23区暮らしは実現できる
年収360万円での東京23区暮らしは、決して楽ではありません。しかし「お金持ち」でなくとも、工夫次第で実現できます。重要なのは家賃を抑えられるエリアや物件を戦略的に選び、通信費などの固定費をいかにコントロールするかです。
家賃や固定費をしっかり管理できれば、使えるお金に余裕が生まれ、東京での生活を自分らしく楽しめるでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2024年(令和6年)平均結果の概要
東京都「都民のくらしむき」東京都生計分析調査報告(年報)令和6年
SUUMO 東京都の賃貸住宅[賃貸マンション・アパート]情報探し
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

