500円玉貯金が「10万円」貯まったけど、買い物で「500円×40枚」出したら拒否された!「セルフレジ」なら大丈夫? 知っておきたい“小銭のルール”とは
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
硬貨の「通用力」とは何か?
硬貨には、法律で定められた「通用力」という上限があります。これは、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律に基づき、同一種類の硬貨は一度の取引で20枚までしか強制的に通用しないと規定されているものです。
例えば、500円玉を40枚持ち込み、合計2万円を支払おうとしても、店側には受け取りを拒否する権利があります。20枚を超える硬貨での支払いは、受領義務が生じないためです。
一方、紙幣には枚数制限がなく、大量にまとめて使っても問題ありません。硬貨は、「少額決済を補助する役割」として設計され、日常生活での利便性を優先した仕組みになっています。日本銀行券(いわゆる紙幣、お札)は、「日本銀行法」第46条第2項で「無制限に通用する」と規定されています。
大量の小銭を店舗で使うとどうなる?
理論的には、店側は硬貨20枚を超える支払いを拒否できます。また、現場では「レジ対応が遅れる」「釣銭準備が困難」などの理由でトラブルになることもあります。特にショッピングモールやスーパーでは、後ろに並ぶ客の迷惑につながり、店員が断るケースが少なくありません。
「無人レジ(セルフレジ)なら使えるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、近年の無人レジや自動釣銭機には、警告枚数を20枚前後に設定できる機種もあります。
大量の硬貨をまとめて投入するとエラーが出ることもあり、有人レジと同様に利用が制限される場合があります。したがって、500円玉を何十枚も日常の買い物に使おうとすると、現実的にはスムーズに進まない場合が多いでしょう。
硬貨を安全に処理する方法
では、貯めた大量の500円玉をどう使えばよいのでしょうか? もっとも現実的な方法は、銀行で紙幣に両替することです。ただし、銀行によっては両替手数料が発生する点に注意が必要です。
三大メガバンク(みずほ・三菱UFJ・三井住友)では、硬貨の両替や入金に段階的な手数料が設定されています。一般的に10枚までは無料または低額ですが、101枚を超えると770~990円、500枚を超えると数千円に達する場合もあります。
近年は、両替手数料が引き上げられる傾向にあります。例えば、みずほ銀行では2025年7月1日から、11枚~500枚の両替手数料を550円から770円へ、501枚以上の両替手数料を1320円から1980円へ改定しています。
もう1つの方法は、各銀行の硬貨対応ATMに入金することです。入金後にキャッシュカードで紙幣を引き出せば効率的に利用できます。ただし、ATMは1回あたり100枚前後の投入制限があるのが一般的です。さらに、銀行窓口に設置されたATMを除き、多くの店舗外ATMでは硬貨を扱えない機種が多い点にも注意が必要です。
500円玉貯金より効率的な方法
500円玉貯金は物理的に貯めやすいと感じる人もいますが、実際には使うときに手数料や手間が発生するのが難点です。
そこで最近は、銀行口座と連携できる「貯金アプリ」を活用し、最初から硬貨で貯めない仕組みにする方法も注目されています。買い物の端数を自動で積み立てたり、目標額に向けて毎日少額を引き落としたりできるため、現金よりもスムーズに管理でき、効率的な貯蓄につながります。
知っておきたい小銭のルール
500円玉貯金は達成感がありますが、法律上は同一種類の硬貨20枚を超える支払いを、店側が拒否できます。無人レジでも思わぬトラブルを招く可能性があります。つまり「まとめて使う」のは難しく、銀行での両替や口座入金を通じて効率的に活用するのが現実的です。
小銭は少額決済向けの手段と割り切り、貯金アプリを活用するか、500円玉貯金をする場合は、あらかじめ使い方まで想定しておくことが大切です。
出典
e-Gov法令検索 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律
執筆者 : 諸岡拓也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
