子ども3人なら「大学の学費無料」と聞いてたのに…「高1・中2・小3」では、あまり得しないって本当ですか? 年齢差による“落とし穴”とは
しかし、大助かりのこの制度、兄弟姉妹の年齢によってはあまり恩恵を受けられないケースも存在します。同じ子ども3人なのに、なぜ差が生じるのでしょうか? 制度の内容とともに、注意点を見ていきましょう。
AFP、社会保険労務士
大学の学費が無料になるとは?
子どもの成長は大変喜ばしいことですが、大学などに進学するようになるとお金の悩みが一気に増えますよね。そんな不安を解消してくれる「大学学費無償化」とは、どんな制度なのでしょう? まずは基本をおさえておきましょう。
制度の仕組み
大学学費無償化は、2020年度から始まった「高等教育の修学支援新制度」の1つです。この高等教育の修学支援新制度は、経済的理由から進学を諦めざるを得ない子どもをなくすために設けられました。学習意欲のある子どもに以下の支援を行い、進学を支援します。
・返還する必要のない奨学金の給付
・授業料や入学金の免除(または減額)
・大学
・短期大学
・高等専門学校(4年制・5年制)
・専門学校
2025年度からの変更点
制度が拡充され、2025年度からは多子世帯の授業料等の無償化がスタートしました。
・対象世帯:扶養する子どもが3人以上いる世帯(多子世帯)
・支援内容:入学金と授業料の減額(金額は図表1)
図表1 入学金・授業料減額の金額
文部科学省 令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に
・条件学習意欲があること(支援決定以降は学習意欲と成果を毎年確認)
・所得要件なし:
所得金額による制限がなく、進学を希望する本人に学習意欲があれば誰でも対象になります。
「高1、中2、小3」があまり得しない理由は?
子どもが「高校1年生、中学2年生、小学3年生」の場合、大学の学費無料化の恩恵を十分に受けられない可能性があります。どうしてなのか、詳しく見ていきましょう。
まず3年後、第1子が大学に進学するときには以下のようになっています。3人とも扶養する子どもで、大学学費無償化の対象です。
・第1子:大学1年生
・第2子:高校2年生
・第3子:小学6年生
しかし2年後、第2子が就職すると扶養する子どもの数は2人になるため、大学学費無償化の対象ではなくなってしまいます。支援は打ち切られ、家計に対する教育費の負担が増えることになります。
・第1子:大学3年生
・第2子:社会人←扶養から外れる
・第3子:中学2年生
ほかにも注意点はある?
子どものアルバイト収入にも注意が必要です。学生であっても一定以上のアルバイト収入があると、子どもが扶養から外れてしまいます。
そうすると扶養する子どもの数が3人以上でなくなり、大学学費無償化の対象でなくなってしまいます。支援は打ち切りになるため、せっかくの恩恵が受けられなくなります。子どもが扶養から外れない範囲のアルバイト収入額は、図表2の通りです。
図表2 子どもが扶養から外れないアルバイト収入額
文部科学省 令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQより筆者作成
制度を十分に調べて対象外になるリスクも理解しよう
大学学費無償化は、教育費の負担が大きい多子世帯にとって、とても心強い制度です。しかし、理解が不十分なまま活用すると、大学在学中であるにもかかわらず支援が受けられなくなる可能性もあります。
兄弟姉妹の年齢差と進路、そしてアルバイト収入の2点には、特に気をつける必要があります。利用する前には制度の内容をよく調べ、途中で支援が受けられなくなる可能性もあることも理解しておきましょう。
出典
文部科学省 令和7年度からの多子世帯に対する大学等の無償化について
文部科学省 高等教育の就学支援新制度について
文部科学省 令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ
執筆者 : 矢萩あき
AFP、社会保険労務士


