友人がメルカリで「ヤマダデンキ」の“株主優待券”を購入! 本当に使って問題ない? 違法性と実務リスクをFPが解説
しかし、実際には発行企業が「転売禁止」としている場合があり、店舗によっては利用を断られるケースもあります。さらに、偽造券や詐欺被害、譲渡によるトラブルなど実務上のリスクも潜んでいます。
本記事では、ヤマダデンキを例に株主優待券をフリマアプリで購入・利用する際の違法性と実務上の注意点を解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
ヤマダデンキの株主優待券、そもそも譲渡はOK?
ヤマダデンキの株主優待制度のその他の注意点によれば、「ご本人のみ有効とし、他人に譲渡、売買はできません。」と記載されています。
名義人以外の使用は原則認められていませんが、刑事罰の対象ではなく民事上の制限にとどまります。つまり「使っただけで逮捕される」ことはありません。
企業独自のルールであり、法律で株主優待券の売買が禁止されているわけでもありません。したがって、法的に売買自体は問題ないと考えられます。ただし、店舗が利用を拒否したり無効と判断したりする場合もあるため、購入前に利用条件を確認しておくことが重要です。
なぜ「譲渡禁止」としているのか? 会社法との関係
このような「譲渡不可」の記載は、ヤマダデンキに限った話ではありません。多くの企業では、株主優待を株主本人への特典として位置づけています。
背景には、会社法の「株主平等原則(109条)」という考え方があります。すべての株主に公平な利益を与えるため、企業は名義のない第三者の利用を認めない仕組みにしているのです。
また、優待の内容があまりに高額だと、実質的に配当と同じ扱いになる可能性があり、会社法で定められた配当のルールに抵触するおそれがあります。そのため、企業は優待の金額や内容を慎重に設計しています。
しかし、実際にはメルカリなどで優待券の売買が広く行われており、制度上の建前と実態の間にギャップが生じているのも事実です。
メルカリでの購入は「グレーゾーン」。偽造や詐欺の危険もあり
フリマアプリでの株主優待券の売買は、法律上は違法ではありません。しかし、ヤマダデンキのように、発行企業のルール上は認められていない場合があります。
出品も黙認されているケースが多い一方で、偽造券やコピー券が混在していることもあります。特に「額面より極端に安い」ものは注意が必要です。
メルカリの規約では、株や社債などの有価証券(いわゆる「株券」や「債券」)の出品は明確に禁止されています。株主優待券については、規約上で「禁止」とは明記されていません。
ただし、商品券やギフト券と同様に金銭とみなされる可能性があるため、運営側の判断で削除や制限の対象となる場合があります。見た目はただの割引券でも、実質的な「金券」と判断されれば規約違反になるリスクがあります。
使えなかった場合の返金とトラブル対応
メルカリの購入者ガイドラインによれば、「メルカリでは原則として購入者都合による返品・返金は認められていません。」と定められています。
「使えると思ったのに使えなかった」「店舗で利用を断られた」といった理由は、商品説明との不一致がある場合を除き、購入者都合と判断されることがあります。返金を希望する場合は、まず出品者に連絡し、説明内容と実際の状態が異なることを示す証拠の画像などを残しておくことが重要です。
出品者が応じない場合は、メルカリ事務局に申請し、対応を依頼します。詐欺の疑いがあるときは、警察や消費生活センターへの相談も検討しましょう。
FPが考える「安全に使うための判断基準」
株主優待券をメルカリで購入しようとすると、安く買えるメリットよりも、利用拒否や詐欺被害などのリスクが上回る可能性があります。株主優待券を利用する際は、発行元である各企業から直接入手する、または公式の案内に沿って取得することが望ましいでしょう。
もし、メルカリで購入した場合には、購入履歴や使用時の記録を残しておくことで、万一のトラブルにも対応しやすくなります。法的にはグレーな部分もあり、「少しの利益より安全性を重視する姿勢」が長期的なリスクを減らすことにつながります。
出典
株式会社ヤマダホールディングス 株主優待制度
執筆者 : 諸岡拓也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
