「ヘルメットを着けるのが努力義務になった」と聞いて戸惑っています。正直着けるのが恥ずかしいのですが、買うべきでしょうか?
自転車乗用中のヘルメット着用は命を守る上で極めて重要であり、その普及が求められています。今回は、自転車乗用中のヘルメット着用の実態について紹介します。
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA
専門領域:食料安全保障、マイクロファイナンス、超高齢社会
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自転車乗用中のヘルメット着用の努力義務化
2023年4月1日に改正道路交通法が施行され、自転車に乗車する全ての人にヘルメット着用が努力義務化されました。この改正の目的は、自転車乗用中の死亡事故を減らすことです。
警察庁の統計によると、2023年の自転車事故で亡くなった346人のうち、ヘルメットを着用していなかった人は301人でした。これは全体の87%にあたります(図1)。それらの値は2024年にさらに減少していますが、ヘルメット着用の努力義務化前の値に対して劇的な変化とはいえません。
図1 自転車乗用者の死亡事故における死者数 (ヘルメット非着用、2020~2024年)
警察庁交通事故統計を基に筆者作成
伸び悩むヘルメット着用率
自転車乗用中の死亡事故を削減するためにはヘルメットの普及が必要です。直近のヘルメットの着用率はどうでしょうか。MS&AD インターリスク総研が2025年8月に自転車ユーザー1,000 人に対して実施したアンケート調査の結果では、ヘルメット着用率は18.5%にとどまっています。
現在の道路交通法では、「ヘルメットをかぶるよう努めなければならない」とされているため、ヘルメットを着用せずに自転車に乗ったとしても罰則はありません。この法的強制力の欠如が、ヘルメット普及が進まない大きな要因と考えられます。
なぜヘルメットを着用しない?
法的強制力がないことに加え、自転車ユーザーは様々な理由でヘルメット着用をためらっているようです。これまで実施された自転車乗車時のヘルメット着用に関するアンケート調査の結果を総合すると、主な理由は以下の通りです。
●ヘルメットの価格が高い
●ヘルメットの着用が面倒である
●見た目の問題がある(似合わない、恥ずかしい、髪型が崩れる)
●ヘルメットを着用しなくても安全だと思う
自転車用ヘルメットは高価なのか?
ロードバイクやMTB、クロスバイクなどのスポーツバイクからカジュアル用まで、自転車用ヘルメットのタイプは幅広くあります。
中には価格が10万円を超える特殊なものもありますが、日常生活に使用するシティサイクル(ママチャリ)向けのカジュアル用であれば、数千円で購入できます。筆者が購入したヘルメットはネット通販で2,980円でした。
また、市区町村によってはヘルメットの購入に補助金を出す制度もありますので利用をお勧めします。例えば、東京都世田谷区では、店頭でヘルメット1個につき最大2,000円の割引が受けられます。
自転車用ヘルメットの着用率が高い愛媛県
2024年の警察庁の調査によると、愛媛県のヘルメット着用率は約7割と全国で一番です。愛媛県は県外の人にとって、「自転車に乗る時にヘルメットをしていないと変な目で見られるかも」と思わせるほどのヘルメット着用先進県になっています。
愛媛県では、高校生の自転車乗用中の死亡事故を契機に、2015年から県内の全高校で自転車通学時のヘルメット着用を義務化しました。
この取り組みが、「ヘルメット着用は当たり前のこと」という意識を他の世代にも広げたとされています。このような動きが全国に広がることを期待します。
まとめ
自転車用ヘルメットは、万が一の事故から命を守るために非常に重要な役割を果たします。最近は、カラー、デザインや価格の選択肢も増えており、気軽に購入できるものも多くあります。安全のために、ご自身に合ったヘルメットを探してみてはいかがでしょうか。
出典
自転車ユーザーの意識と運転の実態について~アンケート調査結果より(2025 年版)
警察庁 交通事故統計
警察庁 自転車乗車用ヘルメット着用率調査結果
執筆者 : 新納康介
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA

