子ども3人以上で「大学無償化」でも、わが家は対象外!?「世帯年収600万円」の上限は撤廃されたのにナゼ? 注意が必要な落とし穴とは
そんなニュースに関心を持っている人も多いのではないでしょうか。子どもの教育費、特に大学進学にかかる費用は家計の大きな負担です。
今年度から始まったこの制度改正は、多くの子育て世代にとって朗報に聞こえます。しかし、「本当にうちも対象になるの?」と詳細が気になるところです。実は、この制度は年収以外にも見逃せない条件があるのです。
本記事では、2025年度から適用されている大学授業料の支援制度について、知っておくべきポイントを解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
2025年から多子世帯は年収上限なし! 支援内容と上限額を解説
2025年度から、扶養する子どもが3人以上いる多子世帯を対象に、大学授業料を支援する制度の世帯年収上限が撤廃されました。
これまでの制度では、支援を受けるには世帯年収がおおむね600万円未満(私大理工農系)などの所得条件を満たす必要がありました。新しい制度ではこの所得制限がなくなったため、これまで対象外だった世帯も支援を受けられます。
支援される金額の上限は、子が通うのが国公立大学か私立大学かによって異なります。年間の授業料と入学金に対して以下の金額までが支援の対象です。
・国公立大学:授業料 約54万円、入学金約28万円
・私立大学:授業料 約70万円、入学金約26万円
国公立大学の場合は、標準的な授業料と入学金がほぼ全額支援されます。私立大学でも、授業料の大部分が支援の対象となるため、家計の負担は大きく軽減されるでしょう。ただし、大学によっては年間の授業料がこの上限を超える場合があり、その際は差額を自己負担しなければなりません。「授業料が全額無料になる」とは限らない点には注意が必要です。
最も重要な注意点!「扶養する子どもが3人以上」の落とし穴
今回の制度改正で最も注意したいのが、「子どもが3人以上いる」という条件の解釈です。制度の対象となるのは、正確には「扶養する子どもが3人以上いる世帯」です。この「扶養」という点が重要になります。
例えば、3人の子どもがいる家庭を例に見てみましょう。
第一子が大学4年生、第二子が大学1年生、第三子が高校生の場合、この時点では3人とも親の扶養に入っているため、大学生である第一子と第二子は授業料支援を受けられます。
しかし、翌年に第一子が大学を卒業して就職し扶養から外れると、扶養している子どもは第二子と第三子の2人だけになります。このため、「扶養する子どもが3人以上」という条件を満たさなくなり、結果として第二子は大学2年生に進級する際に支援の対象から外れてしまうのです。
このように、一番上の子どもが扶養から外れると、それ以降は弟や妹が支援を受けられなくなる可能性があります。将来の教育費プランを考えるうえで、子どもが扶養に入っている期間を正確に把握しておくことが重要です。
支援は授業料だけ? 見落としがちな給付型奨学金
授業料の支援と合わせて知っておきたいのが、返済の必要がない「給付型奨学金」です。これは、大学生活にかかる教科書代や生活費などを支えるための支援ですが、利用する際には注意点があります。
今回の改正で年収上限が撤廃されたのは、あくまで「授業料・入学金の減免」についてです。給付型奨学金については、これまで通り世帯年収に応じた所得基準が存在します。
そのため、「授業料は無償になったけれど、給付型奨学金は対象外」というケースも十分に考えられます。授業料以外の費用も支援を受けたい場合は、別途、給付型奨学金の所得基準を満たす必要があることを理解しておきましょう。
わが家は対象? 制度のポイントを正しく理解して将来設計を
2025年度から拡充された大学授業料の支援制度は、多子世帯の教育費負担を軽くすることを目的としています。ただし、その恩恵を受けるためには制度の内容を正しく理解することが大切です。
まず、「扶養する子どもが3人以上」という条件を正しく把握し、第一子の就職によって扶養から外れる場合、支援が終了することを念頭に置きましょう。また、給付型奨学金には所得基準が残っている点にも注意が必要です。
これらのポイントをふまえ、わが家の場合はいつ、どのくらいの期間支援を受けられるのか、実際にシミュレーションしてみることをおすすめします。制度の詳細は変更される可能性もあるため、文部科学省のWebサイトで最新の情報を確認するようにしましょう。
出典
文部科学省 高等教育の就学支援新制度
独立法人 日本学生支援機構 令和7年度からの多子世帯支援拡充に係る対応について
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
