インターネットで「通勤定期券の私的利用は問題ない」という記事を見かけました。より割引率が大きく“80%以上も割引”にもなる「通学定期券」で子どもを塾に行かせても大丈夫でしょうか?

配信日: 2025.10.27
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インターネットで「通勤定期券の私的利用は問題ない」という記事を見かけました。より割引率が大きく“80%以上も割引”にもなる「通学定期券」で子どもを塾に行かせても大丈夫でしょうか?
通学定期券は、自宅から学校まで「通学のために」利用するものです。これを区間内であれば塾へ行くために利用しても良いのでしょうか。東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の例をもとに実証してみました。あわせて、通勤定期券の場合も紹介します。
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「通勤定期券の私的利用」は問題ない可能性が高い

通勤定期券を購入するために会社から支給される通勤手当は、労働基準法上の賃金の一部と整理されています。また、日本国憲法では財産権が認められているため、私有財産である賃金の使途は制限されません。
 
そもそも通勤定期券は使用回数に制限がなく、プライベートで何回使ったとしても、鉄道各社の旅客営業規則に反する可能性は低いでしょう。
 
加えて、会社が通勤定期券の私的利用を把握するのは不可能と思われること、私的利用したからといって会社に何らかの損害が及ぶ可能性は低いことなどから、通勤定期券は私的利用しても差し支えないものとされています。
 

「通学定期券の私的利用」も問題はないが本来の趣旨からは外れる可能性

それでは通学定期券の場合はどうでしょうか。
 
通学定期券とは、学校へ通学する目的に応じ、一般(通勤)の定期券より大幅な割引運賃で発売される定期券を指します。例えば名古屋鉄道株式会社(名鉄)の場合、通勤定期券の割引率は45.1パーセントで、通学定期券となると80パーセント以上もの割引になるそうです(2019年10月時点)。
 
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の旅客営業規則第36条には、通学定期乗車券を発売する要件として、「居住地のもより駅と在籍する指定学校(中略)のもより駅との相互間を、通学のため乗車する場合」と明記されています。
 
しかし、この要件はあくまで発売に関するものであり、旅客営業規則には通学定期券の使途に関する記述はないため、掲題のように塾に行くなど通学以外に使用しても、罰せられる可能性は低いと考えられます。ただし、制度本来の趣旨からは外れた利用方法かもしれません。
 

「通学定期券」を利用する際は「証明書」の携帯が必須

通学定期券の私的利用は問題ないと思われますが、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の旅客営業規則第170条には、「通学定期乗車券は、その通学する指定学校の代表者の発行した次の様式による証明書を携帯する場合に限って有効とする。」とあります。
 
つまり、通学時はもちろん、塾に行く際など私的利用する場合であっても証明書の携帯が必要となるのです。
 
さらに、旅客営業規則第168条には定期乗車券が無効となる場合が明記されており、「通学定期乗車券を使用する旅客が、第170条の規定による証明書を携帯していないとき。」とあります。例えば、塾などに行く際に証明書を携帯していないと定期券が無効となり、回収される可能性があるため注意が必要です。
 
実際、改札などで定期券と一緒に証明書を確認する可能性は低いと考えられますが、私的利用する場合であっても証明書の携帯を忘れないようにしましょう。
 

まとめ

通学定期券は通学のために乗車する場合の定期乗車券ですが、使途に関する決まりはなく、塾に行く際などの私的利用も問題ない可能性が高いようです。
 
ただし、乗車の際は指定学校が発行した証明書を携帯する必要があり、不携帯の場合定期券が無効になる可能性があります。これは私的利用の場合も同様です。
 
なお、通勤定期券を購入するために会社から支給される通勤手当は賃金の一部とみなされ、使途も制限されないため、通勤定期券を私的利用しても差し支えないものとされています。
 

出典

厚生労働省 通勤手当について(2ページ)
デジタル庁 e-Gov 法令検索 日本国憲法 第二十九条
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第147条(乗車券類の使用条件)
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第36条(通学定期乗車券の発売)
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第170条(通学定期乗車券等の効力)
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第168条(定期乗車券が無効となる場合)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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