これまで「繰り越した通帳」をすべて保管しているのですが、処分してもよいのでしょうか?
「もう使っていないし、そろそろ処分してもいいのでは?」と考えつつも、「何かあったときに必要になるのでは」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、通帳の役割や保管の目安、処分しても問題ないかどうかの判断基準、そして処分する際に気をつけたいポイントまで、わかりやすく解説していきます。
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通帳はそもそもどんな役割を果たしているのか?
銀行の通帳は、口座内のお金の出入りを記録するための大切な書類です。給与の振込や公共料金の引き落とし、クレジットカードの決済、保険料の支払いなど、あらゆる生活費の流れがこの一冊に集約されている場合もあります。そのため、通帳は日々の家計管理に役立つだけでなく、大きな取引や過去の支払いを確認する際にも有効です。
また、通帳の記録は税務や相続の場面でも重要な証拠として機能することがあります。たとえば、生前贈与があったかどうかを確認したり、亡くなった方の資産状況を把握したりする際、過去の通帳記録が大きな手がかりとなります。
年金受給や補助金の申請時などでも、過去の入出金履歴が必要になることがあります。単なる「記録の紙」と思われがちですが、通帳には予想以上に多くの情報が詰まっており、その役割は決して小さくありません。
通帳をいつまで保管すれば安心?目安と実務的な観点から
では、通帳は一体どのくらいの期間保管しておけばよいのでしょうか。法律上、個人が通帳を保管しなければならない期間に明確な決まりはありません。ただし、実務的な目安としては「5年から10年程度」は保管しておくと安心とされています。
その理由のひとつに、相続や税務上の「時効」の存在があります。たとえば、遺産分割のトラブルで訴訟になる場合、相続人が相続の侵害に気付いてから5年以内であれば請求が可能とされています。
また、税務調査においては最大で7年前の記録まで遡られる可能性があります。そうした背景から、相続や贈与、不動産の売買など大きな金銭の動きがあった時期の通帳は、10年程度は保管しておくことが望ましいとされています。
一方で、特に大きな取引がない普通預金の通帳や、給与振込・生活費の引き落とし程度しか記録されていない通帳であれば、5年程度を目安に整理しても問題はないと考えられています。実際に銀行員の多くも「5~6年の保管がひとつの目安」として案内していることが多いようです。
また、近年は通帳の代わりにネットバンキングやWeb通帳を利用する人も増えており、紙の通帳を使わないケースも増えています。とはいえ、インターネット上での履歴保存には期間制限がある場合もあるため、紙の通帳を保管しておくことが“いざというときの安心材料”になることもあるのです。
もう処分してもいい?判断すべきポイントと安全な処分方法
では、これまで繰り越してきた通帳を今すぐ処分しても問題ないのでしょうか。結論から言えば、「一定の条件を満たしていれば処分しても差し支えない」と言えます。ただし、処分を判断する前に、いくつかの点を確認しておく必要があります。
まず、その通帳に大きな金額の入出金が記録されていないかどうかを確認してください。不動産の売買資金、生前贈与、退職金、遺産分割、保険金の受け取りなど、重要な資金の動きが記録されている場合は、今後必要になる可能性がありますので、少なくとも10年程度は保管しておいたほうが安全です。
次に、その通帳に関係する口座がすでに解約済みで、今後手続きや問い合わせが発生する見込みがない場合は、処分を検討してもよいでしょう。
ただし、金融機関によっては過去の取引履歴を10年以上遡って確認できないこともあります。特に紙の通帳を完全に破棄したあと、履歴を証明したくなっても再発行できないケースもあるため注意が必要です。
そして、処分を決めた場合は、セキュリティ面にも配慮することが大切です。通帳には口座番号や氏名、残高などの個人情報が記載されています。
そのため、処分の際はそのままごみ袋に入れるのではなく、シュレッダーで細断するか、記載部分を十分に見えなくなるように処理する必要があります。万一に備えて、通帳に記録された最後の残高や取引内容を控えておくと、何かあった際の対応がしやすくなります。
まとめ
長年保管してきた通帳を前に、「捨てていいものか、残すべきか」と迷う気持ちはよくわかります。通帳はただの記録帳ではなく、生活や財産に関わる大切な情報が詰まった書類です。その一方で、無制限に保管し続けると、管理スペースの問題や個人情報の流出リスクも出てきます。
だからこそ大切なのは、「どの通帳を残し、どの通帳を処分するか」を自分なりの基準で見極めることです。過去の大きな取引や将来の手続きの可能性があるものはしっかり保管し、不要と判断できるものは安全な方法で処分する。こうした整理を通じて、家計の見直しにもつながります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
※2025年10月30日 記事を一部修正いたしました。
