子どもが私立大学を受験する予定です。母に「受験費用や学費」を伝えたら驚かれました。昔と比べて、教育費ってどれくらい上がっているのでしょうか?
受験料、授業料、生活費……。いま、子どもを大学に通わせるには、どのくらいのお金が必要で、どれほど上がっているのでしょうか。時代とともに変化した“教育費の現実”を探ります。
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目次
受験費用も「塵も積もれば」驚く金額に
まずは大学受験そのものにかかるお金です。文部科学省の「国立大学と私立大学の授業料等の推移」によると、昭和50年の私立大学の検定料は9647円だったのに対し、平成16年度には3万2800円と、年々増加傾向にあります。
現在は、1校あたり平均で3万5000円前後。複数受験が当たり前の時代、5校受ければ約17万円、10校になれば35万円にものぼります。これに交通費や宿泊費を加えると、地方在住の受験生の場合、受験シーズンだけで50万円近くかかることも珍しくありません。
一方、母の時代(1990年)は、私立大学の検定料が1校2万8166円。複数受験が一般的でなかったこともあり、「数万円で済んだ」とのこと。たった30年ほどで、受験費用は2〜3倍に膨らんでいる計算になります。
学費は30年前の約1.5〜2倍に
旺文社 教育情報センターの調査によると、私立大学の年間授業料の平均は現在約85万円。施設設備費や実験実習費を含めると、入学初年度だけで130万円前後が一般的です。
さらに入学金も平均27万円程度かかるため、最初の1年間だけで160万円近い負担になる家庭も少なくありません。
対して1990年の私立大学の授業料は年間30万円前後。入学金20万円を含めても50万円程度。30年で学費はおよそ1.5〜2倍に上昇しています。特に医学部や芸術系学部では、初年度納付金が300万〜500万円に達することも。大学進学が「一大投資」と言われるのも納得です。
物価上昇率を上回る教育費の伸び
では、なぜここまで教育費が上がったのでしょうか。
一因として挙げられるのが、大学運営のコスト増です。IT化や施設整備、人件費の上昇、国からの補助金削減などが重なり、大学が独自に費用をまかなわざるを得なくなった背景があります。
また、少子化で学生数が減少するなか、大学は教育環境の充実をアピールするために設備投資を進めており、その分が学費に上乗せされています。つまり、「他のものが値上がりしても、教育費の伸びはそれ以上」なのです。
教育費は「家計の第二の住宅ローン」
大学進学までの教育費総額を見てみると、文部科学省の「子どもの学習費調査」では、幼稚園から高校までオール私立に通わせた場合、総額で約1976万円。
さらに私立大学4年間の費用を加えると、合計2500万円を超える計算になります。住宅ローンに次ぐ「第二の大きな支出」とも言われるゆえんです。
「昔は貯金でなんとかなったのに、今は奨学金がないと厳しい」という声も増えています。実際、大学生の約2人に1人が奨学金を利用しているという統計もあります。教育の価値は変わらなくても、家計に占める負担は確実に重くなっているのです。
親世代と子世代で「教育費の常識」が違う
母が驚いたのも無理はありません。彼女にとっての「大学費用」は、今よりずっと身近で現実的な金額だったのでしょう。
しかし今の時代、進学の選択肢が多様化し、大学に求められる機能も拡大しています。その結果、教育費の水準そのものが上がり、「子どもを大学に行かせる」という行為が、かつてよりもはるかに大きな決断になっているのです。
教育費の高騰は止まりそうにありません。とはいえ、「だから進学をあきらめる」という話ではありません。重要なのは、早めに計画を立てること。学資保険やつみたてNISAなどを活用し、10年、15年単位で準備する意識が求められます。また、国や自治体の奨学金制度、大学独自の減免制度を調べることも大切です。
時代とともに変わる“教育費の常識”を見つめ直す
母の「そんなにかかるの!? 」という一言は、時代の変化を象徴していました。教育費は確かに上がっています。
しかし、それは「より良い学び」を目指す社会の表れでもあります。親としてできるのは、冷静に数字を見つめ、子どもが自分の未来を選べるよう、土台を整えてあげることなのかもしれません。
出典
文部科学省 国立大学と私立大学の授業料等の推移
旺文社 教育情報センター 大学「学費」の“今と昔”!
文部科学省「子どもの学習費調査」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
