母が緊急入院! 大部屋希望でしたが空いておらず、個室に1週間入院。いまは大部屋に移動しましたが、退院時に差額ベッド代を請求されますか?

配信日: 2025.10.30
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母が緊急入院! 大部屋希望でしたが空いておらず、個室に1週間入院。いまは大部屋に移動しましたが、退院時に差額ベッド代を請求されますか?
希望していた大部屋が空いておらず、個室に入院したというAさんのお母さま。いまは大部屋に移動しましたが、個室に入院していた1週間分の差額ベッド代は請求されるのでしょうか?
宮﨑真紀子

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

差額ベッド代とは?

お母さまが緊急入院! 驚かれたことと思われます。緊急時には病状の心配が最優先されますので、入院の費用や差額ベッド代に気が回らなかったでしょう。少し落ち着かれたら、次の心配は入院の費用です。
 
療養には入院費用以外もかかりますし、差額ベッド代の請求額が悩みどころです。差額ベッド代とは、病院の個室や準個室に入院した時に発生する追加料金のことです。
 
はじめに、そもそも差額ベッド代がかかる個室とは、どのような定義なのかを見てみます。
 
厚生労働省のホームページでは「特別の療養環境の提供に係る基準に関する事項」として特別の療養環境(いわゆる差額ベッド代が掛かる個室)について次のように要件を定めています。
 

<抜粋>

(2)療養環境については、患者が特別の負担をする上でふさわしい療養環境である必要があり、次の1から4までの要件を充足するものでなければならないこと。
1. 特別の療養環境に係る一の病室の病床数は4床以下であること。
2. 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上であること。
3. 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること。
4. 少なくとも下記の設備を有すること。
ア 個人用の私物の収納設備
イ 個人用の照明
ウ 小机等及び椅子
(出典:厚生労働省 「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について)

 
今回、Aさんのお母さまが入院された個室も該当すると考えられます。しかし、これは本来患者さんが治療を受ける環境として、選択肢を増やす目的で設定されたものです。該当する環境を提供した場合は、医療機関はその費用を妥当な範囲で患者さんに請求することができるとしています。
 

支払いは必要?

厚生労働省では、Aさんのように「自ら個室を選んだのではない」場合については下記のとおり定めています。
 

<抜粋>

(8)患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合としては、具体的には以下の例が挙げられること。なお、3に掲げる「実質的に患者の選択によらない場合」に該当するか否かは、患者または保険医療機関から事情を聴取した上で、適宜判断すること。
 
1. 同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)
 
2. 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
(例)・救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、または常 時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
・免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
・集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
・後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く)
・クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く)
 
3. 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
(例)・MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者
(出典:厚生労働省 「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について)

 
すなわち、医療機関が差額ベッド代を徴収できるのは、患者さん自らが希望した場合です。同意書がない場合や、治療や管理するうえで必要があった場合は該当しません。個室に入院するに際しては、料金などを十分に説明するようになっています。
 

入院時の混乱に注意! 詳細は病院で確認しよう

入院時は気が動転しているので、書類などの記憶が定かではないかもしれません。まずは詳細を病院に問い合わせて確認することをお勧めします。
 
また補足として、医療費の自己負担額が高額になった場合に時に適用される高額療養費制度がありますが、保険外の診療や食事代と同様に差額ベッド代は対象外です。算入できませんのでご注意ください。
 

出典

厚生労働省 「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について
 
執筆者 : 宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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