お隣の「木の枝」が“自宅の庭”に侵入…「落ち葉」が排水溝に詰まるけど、勝手に切って大丈夫ですか? 費用は“請求できる”でしょうか?

配信日: 2025.10.30
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お隣の「木の枝」が“自宅の庭”に侵入…「落ち葉」が排水溝に詰まるけど、勝手に切って大丈夫ですか? 費用は“請求できる”でしょうか?
隣家の木の枝が自宅の敷地に入り込み、落ち葉の掃除や屋根・塀の修繕に費用がかかる。そんなトラブルは少なくありません。とは言え、勝手に枝を切ると「不法行為」にあたるおそれがあり、かえって関係がこじれることもあります。
 
本記事では、民法改正で変わった越境枝の切除ルール、費用請求の可否、トラブルを防ぐための対処法を解説します。
諸岡拓也

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

隣の木が越境したら、勝手に切っていいの?

隣家の木の枝が自分の敷地に入り込んでいる場合、原則として勝手に枝を切ることはできません。従来の民法233条では、枝を切る権利はあくまで「所有者」にあり、越境された側は相手に枝を切るよう請求することしかできませんでした。
 
しかし、2023年4月の民法改正により、所有者に切除を求めても対応がない場合や、所有者やその所在が不明、あるいは倒木のおそれがあるなど急迫の事情がある場合には、自ら枝を切ることも認められるようになりました。
 
ただし、民法改正後も、越境した枝は所有者が切除するのが原則で、この点に変更はありません。
 

掃除や修繕にかかった費用は請求できる?

落ち葉掃除や枝の切除費用、屋根の修繕に費用がかかった場合、すべて自費で負担するのは不公平に感じる人も多いでしょう。民法では、故意や過失により他人へ損害を与えた場合、加害者に賠償責任が生じます(民法709条)。
 
そのため、隣家の管理不足が原因で枝の越境や倒木が起きた場合には、修繕費や清掃費を請求できる可能性があります。ただし、台風などの自然現象による損害で、相手方の過失が認められない場合は請求が難しくなります。
 

トラブルを防ぐための正しい手順と話し方

近隣トラブルを防ぐためには、まずは冷静に、事実を具体的に伝えることが大切です。「いつ、どの木の枝がどの程度越境しているか」「落ち葉でどんな影響が出ているか」などを整理し、感情的な言葉は避けましょう。
 
それでも対応してもらえない場合は、簡易裁判所の「民事調停」や「境界問題相談センター(土地家屋調査士会)」を活用します。また、弁護士を通じて内容証明を送ると、相手も対応せざるを得ないケースが多く、感情的な衝突を避けやすくなります。
 
木の所有者が高齢者の場合は、枝を切る業者を紹介してあげるなど、協力的な姿勢を見せることも大切です。その一言がきっかけで、関係をこじらせずに穏やかに解決できる場合もあります。
 

冷静な対応がトラブル防止につながる

越境した木の枝をめぐる近隣トラブルは、生活圏が近い分だけ感情的になりやすいものです。
 
しかし、民法のルールを正しく理解し、記録を残して冷静に行動すれば、トラブルを最小限に抑えられます。まずは口頭ではなく「書面や写真」で事実を整理し、相手に穏やかに伝えることが第一歩です。
 
被害が大きい場合でも、いきなり自力で枝を切るよりも、法的な流れに沿って進めた方がトラブルに発展しにくいです。互いに気持ちよく暮らすためにも、法律とマナーをふまえた対応を心がけましょう。
 
執筆者 : 諸岡拓也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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