両親は公務員なのに「親ガチャ外れた」という友人。「高収入・安定=幸せ」ではないの? なぜお金があっても“幸せを感じられない”のか

配信日: 2025.11.01
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両親は公務員なのに「親ガチャ外れた」という友人。「高収入・安定=幸せ」ではないの? なぜお金があっても“幸せを感じられない”のか
近年、インターネットを中心に耳にするようになった「親ガチャ」というワード。
 
定義はさまざまですが、進学や習い事、持ち物など、周囲が当たり前に享受していることを自分が得られないときに生まれる、格差意識を指します。まるで、何が出るか分からないカプセルトイのように、生まれや育ちを「当たり」「ハズレ」と表現するのです。
 
確かに、生まれた環境は人によって異なり、場合によっては努力だけでは覆せない現実もあります。しかし、両親がそろって公務員という比較的安定した家庭でも「親ガチャ外れた」と感じる人がいるのはなぜでしょうか。
 
本記事では、「高収入・安定=幸せ」とは限らない理由を見ていきます。幸せとはなんなのか、考えるきっかけになれば幸いです。
竹下ひとみ

FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種

銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。

現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。

両親が公務員だったら世帯年収はどれくらい?

人事院によると、初任層の俸給月額は大卒で23万円前後です。経験を積み、40代で経験年数が20年前後になると、平均給与月額がおよそ42万5000円に上がります。そのため、給与だけで年収500万円を超えていきます。
 
ここに、諸手当やボーナスなどが入ると、両親がともに公務員として働いている家庭では、世帯年収が1000万円を超えてくると考えられます。これは、共働き世帯の平均年収(約850万円)と比べても、かなり高い水準です。そのため、経済的には“安定している家庭”といえるでしょう。
 
しかし、経済的な安定がそのまま「幸福」を意味するわけではありません。所得が増えても生活満足度が頭打ちになる傾向は、内閣府の調査でも確認されています。金銭的な余裕と心の豊かさは、必ずしも比例しないのです。
 

年収ごとの生活満足度は?

図表1は、内閣府による「生活満足度調査」の世帯年収別平均スコアの比較のグラフです。これを見ると、世帯年収が高いほど満足度は上がる傾向にあることが分かります。
 
もっとも、一定の水準を超えると上昇幅は次第に小さくなり、単純に「所得が増えれば、その分だけ幸福度も同じ比率で上がる」とは言い切れません。
 
むしろ、内閣府の調査では、健康や人間関係、自由に使える時間、仕事と私生活のバランスといった非金銭的な要因が、満足度に大きく寄与していることが示唆されています。経済的な安定は、基盤として重要ですが、幸福の実感はそれ以外の生活環境の質も影響するといえるでしょう。
 
図表1


内閣府 満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~
 

お金以外でも大切なこと

ここまで見てきたように、経済的な安定は暮らしの安心を支える重要な要素である一方、安定した収入があっても、それだけで幸福を感じられるとは限りません。
 
むしろ、安心できる環境だからこそ、親の期待や社会的なプレッシャーが重くのしかかることもあります。
 
例えば、「大学は国立」「部活より勉強」といった暗黙のルールが家庭内にあると、子どもは親の理想をかなえるための人生を歩むことになりがちです。経済的に支えられていても、心の自由がなければ幸福を感じにくくなるのは自然なことではないでしょうか。
 
心理学の分野でも、幸福度はお金だけでなく、自分で選択できているという感覚や、安心できる人間関係など、非金銭的な要素によっても左右されると指摘されています。
 
ある研究では、「幸福度の約半分は遺伝によって決まる」といわれる一方で、40%は意図的な行動によって変えられるそうです。つまり、幸福は「与えられるもの」ではなく「築くもの」ともいえます。
 
どんな環境に生まれても、自分の意思や行動で幸福の形を変えていける、それこそが、お金では得られない本当の豊かさなのかもしれません。
 

まとめ

「親ガチャ外れた」と感じる背景には、経済格差だけでなく、自分で選択できている感覚や人間関係の質といった要素が深く関係していると思われます。
 
そのため、両親が公務員で高収入でも、子どもが幸せを感じられないことは確かにあります。逆に、収入が少なくても、心の自由や安心できる居場所がある家庭は、「当たり」といえるでしょう。
 
幸せは、親の年収や環境だけに左右されるものではありません。どんな生まれであっても、自分の行動や考え方次第で、人生を変えることができるのです。
 

出典

内閣府 満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~
人事院 令和7年国家公務員給与等実態調査報告書
 
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種

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