「夫名義の預金」を妻が引き出したら“横領”? 夫婦間でも注意すべきお金の管理ルールとは?

配信日: 2025.11.01
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「夫名義の預金」を妻が引き出したら“横領”? 夫婦間でも注意すべきお金の管理ルールとは?
共働きや専業主婦世帯を問わず、家庭においては「夫婦の預金はどちら名義でも夫婦としての共有財産」と考える人もいらっしゃるようです。
 
しかし、名義が夫になっている口座から妻が勝手にお金を引き出すと、それが“横領”にあたる可能性があることをご存じでしょうか。たとえ夫婦であっても、口座名義とお金の所有権は別問題。
 
この記事では、夫婦間におけるお金の取り扱いルールと、知らないとトラブルになりかねない注意点を解説します。
柘植輝

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

夫婦の預金は原則共有財産

民法上、婚姻中に築かれた財産は、原則として「夫婦の共有財産」とみなされます。
 
例えば、夫が外で働き、年収1000万円を稼いでいるが、妻が専業主婦という世帯において、夫が勤務先から夫名義の口座で給料を受け取り、預金となったとしましょう。これも夫婦の共有財産になります。
 
理由は簡単で、夫婦は婚姻中、協力して生活しており、その結果築かれた預金であると考えられるからです。このような夫婦の共有財産であれば、家庭生活を営むために必要な範囲でお金を引き出すことに何ら問題はなく、横領や窃盗となることはまずないでしょう。
 
しかし、妻が夫に無断で多額の現金を引き出し、個人的に使用した場合、「横領」や「窃盗」と判断されるおそれがあります。例えば、ギャンブルで多額の浪費をしてしまったような場合です。
 
なお、共働き世帯においても、原則ではお互いの給料は夫婦の共有財産になります。夫婦の間で多少の収入差があっても、婚姻後に築かれた預金は共有財産です。例えば、年収1000万円の夫とパートで年収100万円の妻という場合でも、お互いの給料は共有財産となります。
 
ただし、婚姻前から夫と妻それぞれが自身で稼ぎ、自らの名義となっている財産については、話が変わります。この場合は、特有財産となり、その預金は夫のものです。そのため、共有財産とならず、生活のためであっても、無断で使用してしまえば、窃盗や横領となる可能性が高いでしょう。
 

夫婦間の横領や窃盗は親族相盗例で犯罪とはならない

民法には親族相盗例という考え方があります。親族相盗例とは、親族間で起こった犯罪については、刑罰が免除され、親告罪(被害者からの申し出がなければ犯罪とならない)とするという制度です。
 
特に夫婦間の場合は、刑罰が免除されるため、仮に横領や窃盗に該当する行為を行ったとしても、刑罰を受けることはありません。
 
ただし、これは刑事事件としての話であって、民事としての話は別です。民事として問題となると、その窃盗や横領によって、離婚や慰謝料の請求原因となったりする可能性があります。
 

もし離婚となったらどうなる?

万が一離婚することになったら、夫婦の財産は基本的に共有財産として2分の1ずつ財産分与していくことになります。
 
ただし、この2分の1という割合が浪費によって修正される場合があります。例えば、3000万円の財産がある場合において、妻が500万円を使い込んだ場合、残るお金は2500万円です。
 
この状態で2分1ずつ分けても1250万円になってしまい、本来3000万円の2分の1となる1500万円を受け取ることができるのに、それよりも少なくなり、夫にとっては不公平です。
 
そのため、このような場合は、いったん3000万円があったものとして、夫には1500万円を、そして妻には、2500万円から1500万円を差し引いて残った1000万円が分与されることになる可能性があります。
 
さらに、状況によっては、ここから慰謝料を請求され、実質的に財産分与によってお金をほとんど受け取れないことになる可能性もあります。
 

まとめ

妻が夫名義の預金を引き出しても、原則としてそれは共有財産であるため、窃盗や横領に当たりません。また、実際に刑罰が下ることはありません。
 
一方で、それが民事で問題となり、離婚事由となったりすることで慰謝料が生じる可能性もあり、夫婦間で合意のない限り、配偶者名義の預金を引き出すべきではありません。
 
夫婦間でのお金のトラブルは、とても悲しい出来事を引き起こしかねません。夫婦間でトラブルになりそうな行為は避けるべきであり、困ったことがあれば、相手または第三者に相談するようにしましょう。
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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