“生活保護”を受けると「車」が持てない!? 生活保護受給世帯の「車保有率」は“わずか0.6%”って本当? 車保有を認められるケースも解説
本記事では、生活保護受給世帯における自動車保有の要件とその割合などを解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
日弁連は生活保護受給世帯の自動車保有の要件について緩和を求めている
日本弁護士連合会(日弁連)は令和7年9月18日、自動車の保有要件について緩和を求める会長声明を発表しました。日常生活に必要不可欠ともいえる自動車の保有に関して、現行制度では極めて制限的であるとし、社会事情にそぐわないとしています。
事の発端となったのは、名古屋高等裁判所が令和7年6月26日に、三重県鈴鹿市による生活保護停止処分を違法として取り消した第1審判決を維持する判決です。身体に障がいがある生活保護受給者に対し、鈴鹿市が自動車の保有を認めず、見積書の提出に応じなかったことを理由に生活保護の停止処分を行った事案になります。
生活保護受給世帯の「自動車保有容認率」は「わずか0.6%」
一般社団法人日本自動車工業会が2023年度に実施した「乗用車市場動向調査」によると、乗用車の世帯保有率は77.6%となっています。
一方、日本弁護士連合会が2023年に全国自治体を対象に行ったアンケート調査では、自治体の生活保護世帯数に対する自動車保有容認件数はわずか0.6%でした。このことから、車の保有を強く制限されている実態があると考えられます。
なお、生活保護制度を管轄する厚生労働省はホームページにて「自動車については処分するのが原則」と記載しています。処分する理由は、保有する資産で利用できるものは活用することが生活保護受給の要件であるためです。
生活保護を受けながら「自動車の保有」が認められるケースもある
厚生労働省は例外として、「通勤用の自動車を所有しながら求職活動を行っている場合は、処分しなくても保護を受けることができるケースがある」としています。
自動車の保有が認められるケースとしては、具体的にどういったケースなのでしょうか。厚生労働省が公開している、生活保護ケースワーカー向けの研修教材「生活保護の基本的な実務」によると、以下のようなケースは例外的に保有が認められるとしています。
・障がいのある方や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでいる方で、自動車以外に通勤する方法がないか極めて困難な場合
・事業用自動車は地域の低所得世帯と比べて不公平にならない範囲で、最低限の生活を維持するために利用しているか、おおむね1年以内に収入増加につながる見込みがある場合
・障がい者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでいる方で、通院・通所などのために定期的な利用が必要で、利用できる公共交通機関などがない場合
また、厚生労働省の「2025(令和7)年4月1日施行生活保護実施要領等(未定稿)」では、より具体的な内容が述べられています。具体的には、「車の処分価値が低く通勤に必要な範囲であること」「世帯状況からみて車による通勤がやむを得ず、かつその仕事が世帯の自立に役立っていること」などが記載されています。
まとめ
現状、生活保護を受けながら車を保有するのは基本的に難しく、実際の保有容認率もわずかです。しかし、「地域の公共交通機関が著しく少なく通院などに車が必要」といった要件を満たすことで、例外的に車の保有が認められるケースもあります。
やむを得ない事情があり、生活保護を受けながら車を保有したい場合は、お住まいの福祉事務所に相談してみることをおすすめします。
出典
日本弁護士連合会 名古屋高裁判決を受け、改めて生活保護における自動車保有要件の緩和を求める会長声明
一般社団法人日本自動車工業会 2023年度乗用車市場動向調査について
厚生労働省 生活保護ケースワーカー向け研修教材 2.生活保護制度の実務 No.2-1 生活保護の基本的な実務 ポイント:「自動車の保有は一律に認められない」という説明はNG!(29ページ)
厚生労働省 2025(令和7)年4月1日施行生活保護実施要領等(未定稿)(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
