ビールを「ノンアル」にしたら“1缶200円”近くて驚き! 酒税がないのに、なぜ「発泡酒」と値段が変わらないのでしょうか? 意外とかかるコストとは

配信日: 2025.11.07
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ビールを「ノンアル」にしたら“1缶200円”近くて驚き! 酒税がないのに、なぜ「発泡酒」と値段が変わらないのでしょうか? 意外とかかるコストとは
コンビニやスーパーでノンアルコールビールを手に取ったとき、「酒税がかからないはずなのに、意外と高い……」と感じたことはありませんか?
 
店頭では発泡酒やビールとほとんど変わらない価格も目につきますし、場合によってはノンアルのほうが高いことさえあります。
 
酒税がかからない分、もっと安くてもよさそうなのに……そう思う気持ちも分かりますが、背景には、製造工程の特殊さや原材料・物流コストの高騰、そしてメーカーの価格戦略といった複数の要因が関係しているのです。
 
本記事では、こうした要因を整理しながら、ノンアルコールビールの価格構造を分かりやすく解説します。理由を知れば、今までの高いという印象が変わるかもしれません。
竹下ひとみ

FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種

銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。

現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。

酒税のルールとノンアルの位置づけ

日本の酒税法では、アルコール度数が1%以上の飲料が「酒類」です。ビールや発泡酒はおよそ5%前後のアルコール度数のため、この対象に含まれます。
 
ビールの場合、350ミリリットル缶1本あたりの酒税は約63円で、小売価格に占める割合は28%前後です。発泡酒(麦芽比率25%未満のもの)の酒税は約47円で、価格の25%前後を占めます(いずれも2024年12月時点)。
 
一方、ノンアルコールビールは、アルコール度数1%未満で製造されるため、酒類には分類されず、食品表示上は清涼飲料水にあたります。
 
そのため、本来であれば酒税が課されるビールや発泡酒よりも安く販売できそうですが、実際には必ずしもそうなるわけではなく、ノンアルのほうが高くなるケースも少なくありません。
 

ノンアルはなぜ高い? 製造工程とコスト

ノンアルコールビールの価格を押し上げる大きな要因は、製造工程にあります。主な製法は次の3つです。
 
1. アルコールを発生させない製法
特殊酵母や発酵条件を工夫し、発酵過程でアルコールをほぼ作らないようにする方法。
 
2. 発酵を抑制する製法
麦汁の糖分調整や発酵途中で停止させるなどして、アルコール度数を1%未満に抑える方法。
 
3. 完成後にアルコールを除去する製法(脱アルコール製法)
一度通常のビールを造り、減圧蒸留や膜ろ過でアルコールを取り除く方法。
 
3つ目の脱アルコール製法は、高度な設備と技術が必要ですが、ビール本来の味や風味を最も忠実に再現できるため、味のクオリティを重視する商品で採用されています。実際、アサヒビールは約5億円を投じて専用の蒸留設備を導入し、新商品を発売しました。
 
当該商品は、年間売上目標を早々に達成し、目標を当初の2倍に引き上げるほどの好調ぶりを見せましたが、裏を返せば、それだけの開発費や設備投資が行われたということです。
 
こうした開発コストに加え、大麦やホップなど原材料の国際価格の高騰、缶やラベルなど資材費の上昇、燃料費や人件費増による物流コストの上昇も重なり、店頭価格に反映されているのです。
 

ノンアル市場の成長とメーカーの価格戦略

ノンアルコール飲料市場は拡大を続けており、2024年に376億米ドル規模に達し、2033年には年平均成長率7.7%で758億米ドルへ拡大すると予測されています。
 
この背景には、健康志向の高まりや飲酒を控えるライフスタイルの広がりなどがあります。こうした需要の変化に加え、ノンアルコール飲料は酒税がかからず、限界利益率は通常のビールの約2倍に達するとされ、収益性の高い分野として注目されていることも成長を後押ししている要因でしょう。
 
サントリーは、2025年1月に「ノンアル部」を新設し、2025年は前年度比1.3倍にあたる約50億円をマーケティングに投資する方針を発表しました。ノンアル製品を単なる代替品ではなく、品質やブランド力を高める商品として展開し、ブランド価値の向上を図る狙いがあります。
 

まとめ

ノンアルは、酒税がかからない分原価が安いと思われがちですが、実際には製造・開発コストやブランド戦略によって価格が構成されています。
 
利益率の高さと積極的なブランド投資を踏まえると、メーカーが安易に値下げに踏み切る可能性は低く、今後も高付加価値路線による価格維持が続きそうです。
 

出典

国税庁 お酒についてのQ&A【総則】
財務省 酒税に関する資料
国税庁課税部 酒税課 酒類業振興・輸出促進室 令和7年7月 酒のしおりト
サントリーホールディングス株式会社 サントリー(株)2025年ノンアルコール飲料活動方針
 
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種

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