子どもが成人すると、生活保護は減額される? 支援額はどれくらい減るの?

配信日: 2025.11.08
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子どもが成人すると、生活保護は減額される? 支援額はどれくらい減るの?
子どもが成人を迎えると、生活保護を受けている世帯では支給額が変わる場合があります。これまで受けていた「母子加算」や「児童養育加算」といった支援が打ち切られたり、成人した子どもが働き始めて世帯収入が増えたりすることで、結果的に保護費が減額されるケースがあるのです。
 
本記事では、子どもが成人することでどのように生活保護の支給が見直されるのか、その仕組みと金額への影響、そして備えておきたいポイントを、生活者の視点に立ちながら中立的に解説します。
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生活保護の支給額はどう決まるのか

生活保護の支給額は、厚生労働省が定める最低生活費から世帯全体の収入を差し引いて決定されます。最低生活費は、居住地域や家族構成、年齢などによって異なり、物価や世帯人数に応じて毎年見直されています。
 
したがって、生活保護は一律に支給されるものではなく、世帯単位の収入状況に応じて支給額が変動します。世帯構成の変化や収入の増減がある場合には、その都度支給額の見直しが行われることになります。
 
また、生活保護には家族構成や生活状況に応じて上乗せされる「加算」があります。代表的なものに、母子世帯を支援するための「母子加算」や、子どもを養育する世帯に支給される「児童養育加算」があります。
 
これらの加算は子育て世帯の生活を補う目的で設けられていますが、子どもが成人すると対象外となるため支給額が減る場合があります。
 

子どもが成人すると加算が減る

母子加算や児童養育加算は、子どもが18歳に達した年度末(3月31日)を過ぎると原則として終了します。つまり、子どもが成人するタイミングで、加算が打ち切られるため支給額が減る可能性が高まります。
 
例えば、1級地-1(都市部)に住む40歳の母親と子ども2人(小学生と高校生)の3人世帯の場合、生活扶助基準は約月18万6000円です。ここに、母子加算(児童2人で2万3600円)と児童養育加算(1人あたり1万190円×2人=2万380円)が上乗せされ、合計で約23万円が支給される計算です。
 
高校生の子が18歳を迎えた年度末を過ぎると、児童養育加算が終了し、さらに成人して扶養から外れた段階で母子加算も打ち切られます。
 
その結果、母子加算(児童1人の場合は1万8800円)と児童養育加算(1人あたり1万190円)の合計2万8990円の減額が発生し、生活扶助の目安は約20万円まで下がることになります。
 
このように、子どもの年齢や就学状況によって、実際の支給額が段階的に変わっていく仕組みになっています。
 

成人した子どもが働き始めた場合の影響

子どもが成人し、就職やアルバイトで収入を得るようになると、その収入は世帯全体の所得としてカウントされます。生活保護は世帯単位で判断されるため、世帯員の誰かが収入を得ると、その分だけ保護費が減額される仕組みになっています。
 
例えば、子どもがフルタイムで働いて安定した収入を得るようになると、世帯全体の所得が最低生活費を上回ると判断され、生活保護費の減額や廃止につながることもあります。これは、制度が自立支援を目的としており、就労による生活安定を促進するためだからです。
 
一方で、子どもの収入が一時的なものであったり生活費の一部にしか充てられなかったりする場合、すぐに保護が打ち切られるわけではありません。就労収入から労働費用などの一定の控除額を差し引いたうえで支給額が再計算されます。このように、生活保護の停止や減額は状況に応じて判断されます。
 

支給変更のタイミングと注意点

生活保護の支給額は、世帯構成や収入の変化があった際にお住まいの地域を所管する福祉事務所によって見直されます。子どもが成人した年度や就職のタイミングでは、担当ケースワーカーから報告や面談を求められ、必要書類を提出して支給額の再計算が行われます。
 
また、支給額の変更に際しては、原則として事前に通知があります。制度上、急激な減額によって生活が困難になることを防ぐため、段階的に見直す仕組みも設けられています。
 
ただし、就職後の収入報告や世帯構成の変更の届けを怠ると、過払いの返還請求や支給停止などの厳正な対応が取られるため、十分注意が必要です。
 

子どもの成長に伴う生活保護費の減額に備えて家計を見直そう

生活保護を受けている世帯では、子どもが成人すると母子加算や児童養育加算のといった子育て関連の支援が終了し、支給額が減る可能性があります。さらに子どもの収入が増加すると世帯全体の所得が上がり、生活保護の支給額が大幅に減る、あるいは支給停止となる可能性もあります。
 
こうした変化は、制度上避けられないものですが、支給停止や減額のタイミングを把握し、就職後の収入を見通したうえで貯蓄計画や支出の見直しを進めることで、家計への影響を和らげることが可能です。
 
生活保護制度は、困窮からの自立を支援する仕組みでもあります。制度の変更を前向きに捉え、家計全体を整えるきっかけにしていくことが、長期的な安定につながるでしょう。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 第38回社会保障審議会生活保護基準部会 参考資料 生活保護制度の概要等について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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