大学に「奨学金・バイト」で通い成績はギリギリ。実家が太い友人は「勉強のため」に時間を使えて“ずるい”と感じます…若年層を蝕ばむ“経済格差”とは
先日ある人の嘆きが、X(旧Twitter)に投稿されて話題になりました。
SNSを開けば、実家が裕福な学生と思われる人が大学生活を謳歌(おうか)するきらびやかな写真が並ぶ一方で、学業とアルバイトの両立に疲弊する学生の本音もあふれています。現代の「大学生活」にかかる費用は、どのようになっているのでしょうか。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
いまどきの「大学生活」にかかる費用は?
独立行政法人日本学生支援機構のまとめた「令和4年度学生生活調査」によると、学費と生活費を合わせた学生の生活にかかる1年間の費用は、国公立大学(昼間部)であっても、およそ146万円にのぼります(図表1)。
私立大学であれば約194万円と、家計に学費が重くのしかかっている様子が見て取れます。さらにこの数値は3年前の調査であることも考えると、インフレが続いている現在ではさらに生活費が高騰しているでしょう。
図表1
独立行政法人日本学生支援機構 令和4年度学生生活調査
特に、「自宅」通いの学生と、自宅を離れてアパートを借りている学生について比較してみると、年間でおよそ50万円程度、生活費に差が生じていることが分かります(図表2)。アパート暮らしで私立大学へ通う学生に限れば、年間の生活費は240万円以上になります。
図表2
独立行政法人日本学生支援機構 令和4年度学生生活調査
「地方から東京の私立大学へ進学し、アパートを借りている」というような状況の学生であれば、仮に奨学金を活用していたとしても、実家からの支援が十分になければ、「バイト漬け」の生活になってしまうのも無理はないでしょう。
仮に生活費の半分(年間で約120万円)をアルバイトで稼がなければいけない状況だとすれば、時給2000円程度の割の良いアルバイトでコンスタントに働けたとしても、年間600時間、月に50時間の労働が必要な計算になります。
これは、大学生としての勉強や研究、サークル活動などの余暇に大きな影響が出てしまうレベルでしょう。
本来であれば、大学進学前にこのような経済的な面もシミュレーションし、給付奨学金などの使える制度がないかを調べ、自分にとってその大学生活が受け入れられるかを考えた上で進学を検討していくべきです。
苦学生は「太い実家の初代」になってほしい
少し前になりますが、同じくXで
「親に対して『実家の太い人はずるい、東京生まれはずるい』とぼやいたら、親から『それならあなたが東京に住んで東京で子どもを作り、あなたの代から太い実家を作りなさい』と返された」
という旨の投稿がされ、親の意見側に立つ人と子どもの意見側に立つ人が論争を繰り広げていました。
子持ちのキャリアコンサルタントである筆者としては、「親の意見」に傾きます。そして、子ども世代の人には、自分が苦労をしてでも「太い実家の初代」になるという意志を持ってほしいと願ってしまいます。
今回のテーマである、苦学してでも地方から東京などの都市圏の大学に入ろうとする行為は、上記の「親の意見」を達成するための有効な一歩目といえるかもしれません。大学生活の多くの時間がアルバイトに費やされることに、負担を感じるかもしれません。
都会の大学に進学し、学びを深めたいと願っている高校生が、金銭的な心配をせずに学問に打ち込める環境を社会全体で作っていくことは、今後ますます重要になるでしょう。
しかし、アルバイトを通してお金を稼ぐとともに社会のルールや裏面を知ることで、アルバイトの必要がない裕福な学生を別の面でリードができるというプラスの側面もあるのではないでしょうか。そうした視点を持ち、大学生活全体を通して社会に出ていく力を身につけることは、有意義といえるのではないでしょうか。
成績面では、裕福な層に差をつけられてしまうこともあるでしょう。それでもなお、不利な立場ながらも努力して裕福な層と肩を並べようとしてきたと胸を張り、就活では学業とアルバイトを両立してきたことを堂々とPRしてください。
まとめ
アパート暮らしの私立大学生に必要な年間生活費は約240万円にのぼり、実家から十分な支援が受けられない場合は、毎月数十時間のアルバイトが必要になります。大学進学前には、親子で大学生活中の経済的なシミュレーションを行い、使える支援制度がないかを調べていく必要があるでしょう。
出典
独立行政法人日本学生支援機構 令和4年度学生生活調査結果
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント


