独身税という新しい税金が導入される予定だと聞きました。シングルマザー・ファーザーも含めて独身者は全員対象になりますか?
しかし実際に導入されるのは、“独身税”という名前の税金ではなく、「子ども・子育て支援金制度」という仕組みです。本記事では、その制度の概要と対象範囲、そして誤解されがちなポイントを整理してみましょう。
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目次
「独身税」という言葉の誤解
まず、「独身税」という言葉は正式名称ではありません。厚生労働省が2026年4月から導入を予定しているのは、子ども・子育て支援金制度。
これは、少子化対策として「子どもを育てる世帯を社会全体で支える」ために作られる仕組みで、健康保険料に上乗せする形で拠出金を徴収する方針です。
つまり、「独身であること」そのものに課税するわけではなく、“子どもを扶養していない人”が中心的な負担者になるというのがポイントです。SNSで広まった「独身者への罰金」や「恋愛していない人への税」などの情報は、正確ではありません。
誰が対象になるのか?
制度の大枠によると、拠出金の対象は「健康保険に加入しているすべての人」です。
ただし、実際に負担する金額は、子どもを扶養しているかどうかで変わります。
厚生労働省によると、医療保険加入者一人あたりの平均月額は、令和8年度で250円、令和9年度で350円、令和10年度で450円の見込みであると発表しています。
つまり、結婚しているかどうかではなく、「子どもを育てているか」が基準になります。独身でも子どもを育てていれば対象外になる一方、既婚でも子どもがいなければ負担が発生する可能性があります。
シングルマザー・シングルファーザーは対象になる?
最も誤解が多いのがこの点です。結論から言えば、シングルマザー・ファーザーは原則として対象外になる見通しです。
実際に政府の説明資料でも、「子どもを扶養している世帯への負担は軽減または免除する方向」と明記されています。そのため、シングルマザー・ファーザーで子どもを養育している場合は、支援金の負担は発生しない、あるいは極めて軽微になる可能性が高いでしょう。
ただし、「扶養家族」の定義、収入基準、申請手続きなどの制度の詳細はまだ確定していません。健康保険上の扶養に入っているかどうか、同居状況、養育実態などによっては判断が分かれるケースもあり得ます。
なぜ批判が集まっているのか
「独身税」という言葉が炎上した背景には、“生き方の多様性を否定するのではないか”という懸念があります。
結婚や出産は個人の選択であり、経済的・健康的な理由で子どもを持てない人も多い中、「独身者が多く負担する」制度設計は不公平だと感じる人が多いのです。
一方で、政府側は「社会全体で子育てを支える」という理念を掲げています。
現在、少子化による人口減少が進む中で、将来的な社会保障の維持には、次世代を支える子ども世帯の支援が不可欠だという考え方です。つまり、負担と支援を循環させる“社会全体の投資”という位置づけになっています。
今後のスケジュールと注意点
子ども・子育て支援金制度は2026年4月スタートを目指しています。
現時点では、月数百円〜数千円程度の上乗せが想定されており、具体的な金額は所得や扶養状況によって異なる見込みです。詳細は2025年度中に厚生労働省が告示する予定で、事業主負担や免除の条件も含め、順次公表されていく見通しです。
独身税ではなく「支え合いの仕組み」へ。誤解せずに制度の本質を見極めよう
いわゆる「独身税」という言葉は、実際の制度を誤解した表現です。
制度の本質は、“独身者を罰する”ことではなく、「子どもを育てていない人も含め、社会全体で次世代を支える」という考えに基づいています。シングルマザー・シングルファーザーのように子どもを育てている独身者は、むしろ支援対象であり、負担者ではありません。
ただし、制度の細部はこれから詰められる段階。一人ひとりの状況に応じた影響を見極めるためにも、今後の正式な発表を注視していくことが大切です。
出典
厚生労働省 子ども・子育て支援金制度について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
