アパートの退去費用「20万円」請求されました。「猫がキズをつけた跡がある」とのことですが“ペットOK物件”なのに、こんなに高額な費用を払うのでしょうか?

配信日: 2025.11.22
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アパートの退去費用「20万円」請求されました。「猫がキズをつけた跡がある」とのことですが“ペットOK物件”なのに、こんなに高額な費用を払うのでしょうか?
賃貸物件の退去時、思ってもみなかった高額な費用を請求されることがあります。特に「ペット可」物件ではペットによる損傷で多額の請求をされ、トラブルになるケースも耳にします。
 
原則、ペットによる損傷の修繕費用は入居者が負担すべきとされています。ただ、ペットの有無にかかわらず、請求された修繕費用すべてを負担することに妥当性がない場合もあります。
 
それでは、どこまでが入居者の負担で、どこからが大家の負担になるのでしょうか。本記事では、退去時の修繕費用と、賃貸で猫を飼う上での注意点について解説します。
渡辺あい

ファイナンシャルプランナー2級

退去時に支払う必要がある費用とは?

賃貸契約を解消し、退去する際の費用は「原状回復費用」と呼ばれます。「原状回復」という言葉を聞くと、借りる前の状態と全く同じ状態に戻す必要があると思えますが、そうではありません。
 
国のガイドラインでは「故意や過失でつけた傷や汚れ」などは入居者負担ですが、「経年劣化や通常の使用で生じた損耗」は大家が負担するべきとされています。
 
例えば、壁に大きな穴を開けたり、キッチンに大きな焼け焦げの跡を作ったりといった「通常の使用の範囲を超える損耗」と判断された場合は、補修費用を求められる可能性があることを覚えておきましょう。
 
ただし、修繕は原則として「実際に損傷がある部分」に限定されます。例えば壁紙の一部に傷があるからといって、部屋全体のクロス張り替え費用をすべて負担させられるのは妥当とは言えません。
 
また、経年劣化で古くなった部分を新品に交換するような費用まで請求されることも本来は不当とされています。
 

「ペット可」物件なのに、ペットのつけた傷の費用は入居者負担なの?

「ペットのつけた傷」は「経年劣化や通常の使用で生じた損耗」と「通常の使用の範囲を超える損耗」のどちらになるのでしょうか。今回のケースのように、「ペット可」物件において猫を飼っていた場合、次のような損傷は入居者が費用を負担する可能性があります。


・爪とぎによる壁紙の破れやひっかき傷
・フローリングや畳に残った深い爪あとやシミ
・ペットの尿や糞による臭い・汚れが残っている場合

入居者からすると、「ペット可」の契約段階で、ペットが部屋を傷つけることは想定内だろうと考えるかもしれません。
 
しかし「ペット可」とはあくまでも動物の飼育を許可しているだけで、部屋を好き勝手に傷つけていいというわけではないのです。そのため、「ペット可」であっても、これらの傷や臭い・汚れは「通常の使用の範囲を超える損耗」と判断される可能性が高く、修繕費用が免除されるわけではありません。
 

ペットを飼う上での対策は?

「ペット可」の物件でも、退去時の修繕費用を減らせるように、入居中から工夫して生活するとよいでしょう。
 
例えば、猫は爪を立てて部屋のあちこちをひっかいてしまうので、爪をこまめに切る、床にフロアマットやジョイントマットを敷く、爪とぎグッズを用意しておくことなどをおすすめします。壁や柱には透明の保護シートやパネルを貼るのも有効です。
 
また、臭い対策としてペットのトイレをこまめに替える、換気をしたり消臭スプレーを活用したりなどの対策をして、普段から清潔に保つようにしましょう。
 

高額な請求をされたらどう確認すべき?

もし、退去時に高額な修繕費用を請求されたら、まずは見積もりの内訳を確認しましょう。どの部分の修繕にいくらかかるのか、明細を出してもらうことが大切です。
 
また、「ペット可」物件だと、入居時の契約書に「特約」が記載されていることもあります。これらを確認したうえで、過剰な請求だと感じたときは、大家や管理会社に交渉してみましょう。
 
なお、このようなトラブルを防ぐために、入居時に部屋の写真を撮っておくと、もともとの状態や使用状況を示す証拠にもなります。どうしても解決が難しい場合は、消費生活センターなど公的な相談窓口を利用することも検討しましょう。
 

高額請求された際でも全額払う必要があるとは限らないケースも

退去時における「原状回復」は「故意・過失による損傷」に限られ、経年劣化や通常の使用での消耗まで入居者が負担する必要はありません。
 
なお、「ペット可」物件で猫を飼っていた場合、猫のつけた傷や臭いについては、入居者が修繕費用を負担する可能性が高いですが、猫に直接関係のない過剰な修繕の請求は、入居者に過失がない限り支払う必要はないと判断されることもあります。
 
もし「修繕費用が高すぎる」と感じた場合は、「ペットを飼っていたから仕方ないか」とすぐに諦めるのではなく、費用の内訳を確認し、納得できる範囲かどうかをチェックしましょう。
 
国のガイドラインの考え方をふまえて交渉すれば、適正な金額に収まるケースもあるため、請求をそのまま受け入れる前にしっかりと確認することが大切です。
 

出典

国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
 
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級

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