薬の受け取りが「病院」から「薬局」に変わったら、薬代が“高くなった”ように感じます。なにか費用が“上乗せされている”のでしょうか?「薬代・調剤費用」のしくみを解説

配信日: 2025.11.23
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薬の受け取りが「病院」から「薬局」に変わったら、薬代が“高くなった”ように感じます。なにか費用が“上乗せされている”のでしょうか?「薬代・調剤費用」のしくみを解説
昔は病院で診察を受けたあと、そのまま院内で薬を受け取るのが一般的でした。しかし、近年は「院外処方せん」を持って薬局で受け取る流れが主流となり、「前より薬代が高くなった」と感じる人も多いのではないでしょうか。
 
実際に薬局で受け取る場合、薬の価格に加えて調剤管理料や指導料などの費用が上乗せされるため、増えることもあります。年間を通せば数千~1万円近く違ってくることもあるかもしれません。本記事ではその費用の仕組みを解説します。
里見るい

FP2級、日商簿記2級、建設業経理士1級、衛生管理者

院内処方と院外処方でどう違う? 薬代と調剤費用のしくみ

院内処方は、薬の原価と処方料が一体となって費用がまとまる仕組みです。これに対し院外処方は、病院で処方せん料を払い、薬局で薬剤調整料・調剤管理料・管理指導料などを別途支払います。
 
同じ薬でも薬局の費用が加わるため、患者の負担は増える場合が多いです。処方料(処方せん料)だけでも院内処方が約420円なのに対し、院外処方は約680円と260円高く設定されています。このように費用面では院内処方がお得です。
 

調剤料は廃止に。薬剤調製料・調剤管理料・服薬管理指導料とは?

2022年の診療報酬改定により、従来の「調剤料」は廃止され、「薬剤調製料」「調剤管理料」「服薬管理指導料」の3つに細分化されました。
 
これは、薬剤師の業務を「薬の調製・監査」といった対物業務と、「患者への服薬指導や副作用確認」といった対人業務に分け、それぞれを適切に評価するための変更です。
 
具体的には、薬剤調製料は薬局で薬を正しく調製し、監査する業務に対する評価を指します。調剤管理料は、患者の服薬状況を確認・管理する取り組みに対して支払われるものです。
 
そして服薬管理指導料は、薬の飲み方を説明したり副作用をチェックしたりといった、より直接的な患者対応に適用されます。


費用の違い(風邪薬3種類・1週間分の例)
 
院内処方:薬剤料+処方料約420円+薬剤調製料約110円
→10割負担は薬剤料+約530円、自己負担(3割)は薬剤料+約160円
 
院外処方:薬剤料+処方せん料約680円+薬剤調製料約280円+調剤基本料約420円+服薬管理指導料約300円
→10割負担は薬剤料+約1680円、自己負担(3割)は薬剤料+約500円

結果として、院外処方は院内処方に比べて自己負担が毎回約340円高くなる傾向があります。
 
これは、院外処方で薬剤師による服薬指導や副作用チェックといった対人業務がしっかり評価されるためです。安全性やサポートの手厚さを重視するか、費用を抑えるかは、患者にとって大切な選択ポイントといえるでしょう。
 

飲み合わせ指導は院外処方のメリット

院内処方の場合、薬に関する疑問については医師に確認できるケースもありますが、飲み合わせ等を考慮したトータルな指導は難しいため、患者が自発的に服薬管理しなければなりません。
 
一方、院外処方では、薬剤師による薬の説明や内服指導に加えて、複数の処方がある場合に飲み合わせチェックが受けられます。
 
例えば、「内科と整形外科で同じ成分の痛み止めが処方されていた」「普段から市販薬を飲んでいる」などと患者が申告すれば、薬剤師が詳細な聞き取りを行い、飲み合わせに関する注意を促してくれることはメリットです。
 
もちろん、院外処方には薬局へ行く手間や、調剤費用などの加算による自己負担が増えることもあります。体調が悪いときに薬剤師から医師と同様の質問を受けるのが煩わしく感じることもあるでしょう。
 
しかし、薬剤師による安全確認や内服サポートといった「見えない価値」が、安心して治療を続けるうえで大きな支えとなっています。
 

まとめ

院外処方に切り替えると「薬代が上がった」と感じるのは、薬局での調剤調整料や管理費用が追加されるためです。ただし、薬局による安全性チェックや家族単位での薬歴管理といったメリットもあります。
 
無駄な出費を抑えるには、ジェネリックの活用や調剤回数を減らす工夫が有効です。仕組みを理解しておくことで、医療費を上手にコントロールできるでしょう。
 
執筆者 : 里見るい
FP2級、日商簿記2級、建設業経理士1級、衛生管理者

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