SNS「片目失明で障害者手帳もらえないの、意味わからない!」に反響多数…義眼は“2年おき”に十数万円かかるのに、支援は受けられない?「現行制度の課題」とは

配信日: 2025.11.26
この記事は約 3 分で読めます。
SNS「片目失明で障害者手帳もらえないの、意味わからない!」に反響多数…義眼は“2年おき”に十数万円かかるのに、支援は受けられない?「現行制度の課題」とは
先日X(旧Twitter)で「片目が見えてないのに障害者手帳をもらえないなんて」という投稿に数万「いいね」がつけられており、大きな反響を呼んでいました。
 
片目を失明しても障害者手帳の交付対象とならないケースがあることは事実であり、当事者やその家族にとって深刻な問題となっているようです。そこで今回は、日本の視覚障害認定基準や、義眼にかかる費用について詳しく解説します。
山口航

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

片目失明でも制度上、障害者にはならない?

片目を失明しても、日本の現行制度では障害者の対象にならないケースが多く存在します。これは、日本における視覚障害の認定基準が、良いほうの目の視力を基準に障害の程度を判断するためです。
 
公益財団法人日本眼科学会の「視覚障害認定基準の手引き」によると、良いほうの目の矯正視力が0.7以上ある場合、片目が全く見えなくても障害者手帳の交付対象外となってしまいます。
 
つまり、片目を完全に失明していても、もう片方の目で日常生活が送れると判断され、障害者とは認められません。この基準により、片目失明の人は立体感覚の欠如による多くの困難を抱えながらも、制度上の支援を受けられない状況が生まれています。
 

義眼ってだいたいいくらかかる?

義眼の費用は、種類や作成方法によって異なりますが、一般的には片目で10万円~15万円の価格帯となっています。また義眼は、涙や汚れによる変色、表面の劣化などが避けられないため、通常2年で交換しなければいけません。
 
そのため、一度義眼を作成すれば終わりではなく、定期的な交換費用が発生し続け、年間に換算すると義眼代だけで5万円以上の継続的な負担が生じることになります。
 
なお、眼窩(がんか)の縮みを抑えるために必要な義眼だったとしても、眼球状態によっては「美容目的」と判断され、保険が適用されない場合もあります。
 

そのほかかかるお金について

義眼の購入費用だけでも年換算すると5万円以上かかりますが、義眼代以外にも以下のような維持費用が発生します。


・義眼のメンテナンス代:年1回1万円程度
・義眼用の洗浄剤や保存液:月1000円程度
・専門医院への交通費:地域により異なる

年1回の義眼のメンテナンスには約1万円、洗浄剤や保存液は月1000円程度かかります。また、義眼を扱える専門医院は限られているため、遠方からの通院が必要な場合は交通費も大きな負担となります。
 
これらの維持費用を合計すると、年間で2万円以上の継続的な出費が発生し、片目失明の人にとって重い経済的負担となっているのが現状です。そのうえ、義眼を着用していると結膜炎などの炎症が起こる場合があり、治療費なども想定しておく必要があるため、実際の経済的負担はさらに大きくなる可能性があります。
 

まとめ

片目を失明しても、もう片方の目の矯正視力が0.7以上であれば、障害者手帳の交付対象外となるのが現実です。
 
義眼の価格は1つ10万円~15万円で、2年ごとの交換が必要なため生涯で数百万円の負担となり、経済的にも負担が大きいといえます。
 
また、義眼のメンテナンス費用や洗浄剤なども含めると、制度上の支援を受けられないまま多額の自己負担が生じ続けます。現行制度が見直されることで、より当事者にとって暮らしやすい社会となるでしょう。
 

出典

公益財団法人日本眼科学会 視覚障害認定基準の手引き
 
執筆者 : 山口航
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問