入院中の父の代わりに家の修繕費として「80万円」を引き出そうとしたら、“本人来店が必要”と断られました。代理で引き出せないのでしょうか?

配信日: 2025.11.27
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入院中の父の代わりに家の修繕費として「80万円」を引き出そうとしたら、“本人来店が必要”と断られました。代理で引き出せないのでしょうか?
老朽化した実家の修繕費として、入院中の父から「通帳と印鑑があるから、銀行でお金を下ろしてきてほしい」と頼まれた。そんな経験をした人は少なくありません。
 
しかし、いざ銀行窓口で引き出そうとしたところ、「本人来店が必要です」と断られてしまうことがあります。通帳も印鑑も持っているのに、なぜお金を引き出すことができないのでしょうか。
 
本記事では、この疑問をわかりやすく解説します。
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銀行が「本人来店」を求める理由

金融機関が本人確認に厳しくなった背景には、「なりすまし」や「特殊詐欺」を防ぐための法律・ガイドラインがあります。特に高齢者の口座からの高額な引き出しは、窓口にとって“リスク取引”と判断されやすいため、たとえ家族であっても慎重に扱われます。
 
通帳・キャッシュカード・印鑑が揃っていても、銀行は「本人の真正な意思で引き出すものか」を確認できません。そのため、基本的には 本人による来店、あるいは本人が引き出す意思を確認できる代替手段が必要になります。

 

家族が代理で引き出せないのは本当?

結論からいえば 原則として“家族の代理での任意の預金引き出しはできない” と考えた方がよいでしょう。
 
銀行に預けたお金は、あくまで口座名義人本人の資産です。家族といえども、法律上の権限がない限り、自由に引き出すことはできません。
 
ただし、以下の状況に限り、一定の手続きを踏むことで引き出しが許可される場合があります。
 

1.委任状がある場合

父が自筆署名した正式な委任状 を用意すると、銀行によっては代理人が引き出せる場合があります。
 
ただし、委任状の書式は銀行指定のものが必要であったり、高額の場合は断られたり、銀行ごとに規則が異なり必ず認められるわけではありません。
 
また、父が入院中で筆記ができない状態の場合は、委任状の作成が難しく、この方法は実質使えません。
 

2.“代理人カード(家族カード)”を事前に作っている場合

大手銀行では口座名義人の意思にもとづき、家族が ATM で出金できる「代理人カード」を発行できることがあります。ただし、これは 事前準備 が必要で、名義人本人の来店が必須です。
 
つまり、すでに入院してから作ろうとしても間に合いません。
 

3.口座名義人が判断能力を失っている場合

認知症などで判断能力が低下している場合、家族が預金を引き出すには「成年後見制度」が必要になります。
 
家庭裁判所の手続きが必要で、数か月かかることもあるため、すぐに資金が必要な場面では現実的ではありません。ただし長期的には資産管理の安全性が高まります。
 

4.父の病院に銀行員が訪問するケース

一部銀行では、身体的理由で来店ができない場合に限り、担当者が病院や施設を訪問して手続きを行うサービスを提供しています。
 
ただし、

・予約が必要
・対応地域が限定
・高額出金には慎重

といった制約があります。
 
急ぎで80万円が必要、というケースでは間に合わない可能性もあります。

 

現実的にどうすれば良いのか?

1.まずは銀行に事情を正直に説明する

病院名・診断書・本人の来店困難を証明できる書類を提示すると、銀行側が柔軟に対応してくれることがあります。ただし「必ず下ろせる」という保証はありません。
 

2.父の意思を銀行が確認できる状態をつくる

銀行から本人へ電話を掛け、意思確認をするケースがあります。父が会話可能であれば、この方法で代理引き出しが認められることもあります。
 

3.家族内で「緊急時の資金管理」の準備をしておく

今回のような事態を避けるためには、事前に

・代理人カードの作成
・家族共有口座の用意
・信託サービスの利用

などをしておくと安心です。

 

家族だから「代理でお金を下ろせる」とは限らない

銀行が本人確認を重視するのは、資産保護の観点から当然のことです。しかし、急な入院時などは「家族が困ってしまう」という現実もあります。
 
今回のように80万円という高額出金の場合、銀行はより慎重になり、 家族が代理で引き出すのは非常にハードルが高い と言えます。
 
もし同じ状況に直面したら、まずは銀行に相談し、可能な手続きや選択肢を確認してみることが重要です。そして、将来に備えて「緊急時の資金管理」を家族で話し合っておくことが、いちばん現実的な防止策となるでしょう。

 

出典

株式会社ゆうちょ銀行 委任状について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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