令和7年秋から“500円増額”された「生活扶助の特例加算」。4人家族の「生活保護受給世帯」だと“計6000円”も毎月上乗せされるって本当!?
令和5~6年の2年間は「1人あたり月1000円」が加算されていましたが、この特例加算が令和7年10月算定分から「1人あたり月500円増額」となったことをご存知でしょうか。今回は最新の制度改正も踏まえ、受給額について見ていきます。
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10月から生活保護の「特例加算」が“1人あたり500円”上乗せに
厚生労働省が公開している資料によれば、令和5~6年度は「足下の社会経済情勢等を総合的に勘案」し、月額1000円の「特例加算」が設けられていました。
令和7~8年度の見直しでは物価・賃金の上昇や消費増加などを考慮し、特例加算の額が「月額1500円」に変更される見込みです。したがって、4人家族のケースでは特例加算だけで「毎月6000円」の上乗せになる、と計算できるでしょう。
なお、令和9年度以降における特例加算の額については、「令和9年度予算の編成過程において改めて検討」するとされています。
11月からは「冬季加算」もスタート
11月からは、多くの地域で生活保護の「冬季加算」が適用される時期となります。冬季加算とは、冬季に増加する光熱費や暖房費を考慮し、生活扶助費に上乗せして支給される制度です。
この加算額は、北方や日本海側など、寒さの厳しい地域の都道府県ほど高くなる傾向にあるようです。都道府県単位で分けられたI区~VI区までの「地域区分」と「世帯人員」、さらに居住地の生活水準で変化する「級地」に応じ、金額が変動する仕組みになっています。
冬季加算の対象となる期間は11月~3月の5ヶ月間ですが、I区・II区といった寒冷地では2ヶ月長く、10月~4月の7ヶ月間が対象になります。
例えば冬季加算の地域区分が「VI区・1級地-1」である東京都23区在住の4人家族の場合、1ヶ月あたり「4580円」、期間計で4580円×5ヶ月=「2万2900円」が上乗せされるようです。
東京23区在住の4人家族だと「生活保護費」はいくらもらえる?
ここからは「東京23区在住の4人家族」を想定し、月々に支給される「生活保護費」をシミュレーションします。今回は、厚生労働省の定める算出方法に基づき、以下のケースを考えます。
級地:東京23区=「1級地-1」
冬季加算:東京都=「VI区」
家族構成:大人2名および子ども2名(小学生1名・中学生1名)の計4名
なお、大人2名を生活扶助基準(第1類)における年齢区分の「20~40歳」、子ども2名を「12~17歳」と仮定します。
これらの条件をまとめ、受給金額を求めると、表1のとおりです。
表1
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 生活扶助基準(第1類) | 12万6984円 | 4人世帯の逓減率(0.6600)適用後の金額 |
| 生活扶助基準(第2類) | 4万8900円 | 世帯共通の生活費 |
| 特例加算 | 6000円 | 物価上昇などへの対応による臨時的な加算 |
| 児童養育加算 | 2万380円 | 児童2名分(1万190円×2) |
| 住宅扶助基準 | 6万9800円 | 上限内で実費支給(東京23区の場合) |
| 教育扶助基準 | 8700円 | 小学生3400円+中学生5300円 |
| 冬季加算(VI区・1級地-1) | 4580円 | 11~3月に加算 |
| 合計(生活最低費認定額) | 28万5344円 |
出典:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年10月)」を基に筆者作成
以上から、東京23区在住の4人家族の場合、「月々28万円程度」の生活保護費をもらえる可能性があるようです。ただし、冬季加算には世帯人員の年齢による「経過的加算」が存在するほか、12月には年越しに備えた「期末一時扶助」などもあります。金額については、ケースバイケースで増減する点に注意しましょう。
まとめ
令和7年10月算定分から、生活保護の「生活扶助の特例加算」は1人あたり月500円引き上げられ、月額1500円となりました。そのため、4人世帯であれば、特例加算だけで毎月6000円が上乗せされます。
さらに暖房費などが増える冬は冬季加算が適用されるなど、生活保護の受給金額は、お住まいの地域や世帯構成などによって柔軟に変化します。申請を検討される方は、自治体の相談窓口なども活用しながら、おおよその金額を把握しておきましょう。
出典
厚生労働省 令和5年度以降の生活扶助基準の見直しについて(4ページ、6ページ)
厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年10月)(1ページ)
東京都福祉局 2025 社会福祉の手引 6 生活保護(168ページ)
東京都福祉局 生活保護「住宅扶助基準額」の見直しについて
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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