アパートの退去時、冷蔵庫裏の壁に大量のカビが! 大家さんから「原状回復費用」として“10万円”の請求…。実は「ガイドライン」があって支払わなくてもよいケースがあるって本当?
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平成23年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が公開
賃貸物件の退去時の原状回復費用をめぐり、家主と借主の間でトラブルが多発したことから、平成10年(1998年)3月に、当時の建設省(現・国土交通省)が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を取りまとめ、公表しました。
その後、なお増加を続けるトラブルに対応すべく、平成16年に改訂を行い、さらに、近年の裁判例や実務の状況を踏まえるため、平成22年には原状回復ガイドライン検討委員会が設置され、その検討結果を受けて平成23年(2011年)には「再改訂版」が公表され、Q&Aや裁判事例(判例)の追加、別表や残存価値割合の見直しなどが行われました。
冷蔵庫裏のカビは「ガイドライン」に則っても借主の責任になる可能性大
ガイドラインでは原状回復をの基準として
1-A 建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)
1-B 賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)
2 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等
とあり、そのうち2に該当する場合、賃借人が負担すべき費用としています。
ガイドラインの部位別事例(壁・天井クロス)では、窓周辺などに生じた結露を賃借人が放置し、賃貸人への連絡や清掃などの手入れを怠った結果、カビやシミが拡大した場合には、通常の使用による収益を上回るものとして賃借人負担となる場合があると示されています。
一応、建物の構造上の欠陥等が主原因で発生した結露・カビは貸主負担となる可能性もあり、原因や対応状況によって判断が分かれます。
さらに掲題の冷蔵庫裏のカビは建物の問題に起因しない、単に貸借人の過失により起きた可能性が高いことから、大家さんからの10万円の費用請求は、補修の規模にもよるとはいえ、相応の正当性があると思われます。
賃貸における「ガイドライン」にまつわる注意点
ガイドラインの事例集の中では以下のような事例が紹介されています。
カビの発生は賃借人の手入れに問題があった結果であるが、経過年数を考慮するとクロスの張替えに賃借人が負担すべき費用はない、との判断を示した事例がありました。判決の要旨を大まかに要約すると「賃借18年以上という長期間にわたる経年劣化もあることから、賃借人の負担すべき残存価値が低く、敷金の大部分を返還するよう賃貸人に命じた」とのことです。
上記はあくまで一例であるため、実際の退去時トラブルにおいてはケースバイケースと考えていいでしょう。
また、ガイドラインでは原状回復費用について入居当初には発生しないものの、いずれ賃借人が一定に負担する可能性のあるものとして、契約終了時だけでなく、賃貸借契約当初の問題としてとらえる必要があるとも述べられています。
そのため、無用な出費を防ぐためにも、退去時に後手の対応としてガイドラインを持ちだすのではなく、契約前の時点から、賃貸借契約書や特約事項をよく確認しておくことが重要です。
まとめ
賃貸物件の退去時、原状回復費用をめぐって家主と借主の間でトラブルになるケースが見られ、国はガイドラインを取りまとめました。
経年劣化、通常損耗を除く損耗は、たとえ建物の構造上の問題であっても、賃借人が負担すべき費用となる可能性があると思われます。トラブルを防ぐためにも、賃貸借契約書や特約事項はよく確認しておくことをおすすめします。
出典
国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)
国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)第3章 原状回復にかかる判例の動向(51ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
