母子2人で「生活保護」受給中…10月から保護費“月500円増額”でも、家計はキツイです。「生活保護費だけ」で暮らすのが厳しい理由とは? 支給額とあわせて確認
本記事では、今回の上乗せで、実際にどのくらいの支給額となるのか、都内に住むシングルマザーと小学生の子ども1人の2人世帯の場合を例に試算します。特例についての概要や、生活保護費だけで暮らしていけるのか、その現実もあわせて検証するので、ぜひ最後まで目を通してください。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
シングルマザーで子ども1人の場合の支給額は?
生活保護は、「生活扶助」と「住宅扶助」を中心に構成されています。生活扶助は食費や光熱費、日用品など日常生活にかかる費用を補うもので、年齢や世帯構成、地域ごとに金額が異なります。
今回の特例は、その「生活扶助」に加算されるものです。
例えば、東京都新宿区に住む母子2人世帯の場合、2025年10月改定後は、生活扶助に1人あたり500円が加算され、月21万円前後が支給されます(自治体や家賃により差があります)。
500円アップは全ての世帯が対象ではない
2023~2024年度に行われた前回の特例措置(2022年末実施)から、一定期間が経過しましたが、その間も物価や賃金の上昇が続いています。さらに、消費が緩やかに増加している状況などを踏まえ、政府は2025年10月からの2年間に、再び特例加算を設けました。
今回の500円アップは、その既存の加算(1人あたり1000円)にさらに上乗せされる形です。つまり、新たに500円増え、「これまでの加算が1500円に拡大される」という仕組みです。
ただし、注意が必要なのは、全ての受給世帯が一律で500円増えるわけではないという点です。立川市のWEBサイトを見ると、支給基準の見直しや「経過的加算(減額緩和措置)」との兼ね合いによっては、実際の増額幅が500円に満たない場合もあるとのことです。
例えば、基準額の見直しで一部減額される世帯では、特別加算の増額分が相殺される形になるため、実際の支給額が変わらない場合もあります。
また、あくまで時限的な対応であり、この加算が終了すれば支給額は再び従来水準に戻ることになります。恒久的な引き上げではない点にも注意が必要です。
生活保護費だけで生活できる?
今回の500円上乗せは、確かに家計支援の一助にはなりますが、実際の生活感覚としては「焼け石に水」と感じる人もいるかもしれません。
実際に、総務省による家計調査によると、母親と18歳未満の子どものみの世帯の場合、1ヶ月の消費支出は2025年8月約26万円、2025年9月約21万円でした。生活保護費の21万円前後では、ギリギリ収支トントンあるいは赤字になる可能性が高いといえます。
また、生活保護を受けながら働く「就労自立支援型」のケースでは、収入に応じて保護費が減額される仕組みのため、支援金の上乗せだけで生活が大きく改善するわけではありません。
まとめ
2025年10月からの生活保護費500円引き上げにより、シングルマザーで子ども1人の場合、支給額は月21万円前後となります。ただし、依然として平均的な消費支出にはギリギリまたは足りない状況には変わりなく、家計の厳しさが解消されるわけではありません。
とはいえ、わずかでも支給額が増えることは、日々の生活を支える一助になります。この制度の意図を理解しながら、今後の支援策や自立支援の動きにも注目していきたいところです。
出典
厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年10月)
立川市 令和7年10月からの生活保護基準改定について
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
