高齢の父が「いつか必要になるから」と繰越済みの通帳をずっと保管しています。繰越済みならもう使えないと思うのですが、残しておく必要はあるんでしょうか?
しかし、繰越済みの通帳には過去の取引履歴が記録されており、場合によっては重要な証拠になることもあります。本記事では、繰越済み通帳の役割や保管の必要性について詳しく解説します。
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繰越済み通帳とは?
通帳は、預金の出入金を記録するための紙媒体で、ATMや窓口で取引履歴を印字できるようになっています。記帳欄がすべて埋まると、「繰越済み」として新しい通帳が発行され、古い通帳はそれ以降使用できません。つまり、繰越済み通帳には今後の取引を記録する機能はなく、実質的には役目を終えた状態です。
ただし、「使えないから不要」とすぐに処分してよいわけではありません。通帳に記載された過去の取引記録は、財産の証拠や履歴をたどるうえで重要な役割を持ちます。
特に高齢の親の場合、亡くなったあとの相続財産や過去の贈与の確認、口座の動きの証明などが必要になった際には、古い通帳の記録が大きな手がかりになることがあります。
繰越済み通帳の記録が必要になる場面とは
繰越済みの通帳が役立つのは、主に次のような場面です。
まず、相続の際の財産確認が挙げられます。亡くなった方の預金残高を調べるだけでなく、過去の取引履歴(入出金明細)から、大口の引き出しや他人名義の口座への資金移動、生前の資産移転(贈与など)の有無を把握できます。また、使途不明金の追跡などに役立つこともあります。
成年後見制度を利用している場合、家庭裁判所から通帳(取引履歴)の提出を求められることがあります。後見人が行った金銭管理の状況を確認するため、過去の取引履歴(繰越済み通帳含む)が審査対象となることがあります。
さらに、確定申告で医療費控除や介護費用の立証が必要な場合、銀行振込の記録(通帳の印字)を証拠として提出できることがあります。ただし、領収書がない場合、税務署が認めるかどうかはケースによります。通帳の記録は補助的な証拠として扱われることが多いとされています。
保管の目安と管理方法
銀行では過去10年程度の取引履歴であれば照会が可能な場合が多いですが、金融機関によっては5年を超えると照会できないケースもあります。
相続や税務(相続税・贈与税)の申告においては原則5~7年間の保存が推奨されており、特に個人の場合は7年間の保管が一般的です。10年保管も可能ですが、最低でも7年間は保管しておくのが望ましいです。
保管する際は、現在使っている通帳と混同しないように、繰越済みのものは別に保管しておくのがよいでしょう。銀行名や口座番号が分かるようにまとめておけば、万一のときに家族が整理しやすくなります。あわせて、本人が健在なうちに口座数や通帳の保管場所について、家族と共有しておくことも大切です。
一方で、まったく使われていない口座の通帳は、必要がなければ処分しても問題ないでしょう。残高がない口座や長年利用実績がない口座の通帳については、個人情報の部分を油性マジックなどで塗りつぶしたうえで、シュレッダーやハサミで細かく裁断し、燃えるゴミとして処分するのが一般的です。
細かく切ったあと、別の紙類を混ぜて、新聞紙や不透明な袋で包んで外から見えないようにすると、より安全に処分できるでしょう。
まとめ
繰越済み通帳は新たに記帳することはできませんが、過去の取引履歴を確認するうえで重要な記録媒体であり、特に高齢者の財産管理や相続時においては、貴重な証拠となるケースがあります。
今すぐ必要がなくても、「いざというとき」に備えて保管しておく価値は十分にあります。最低でも7年程度は保管を検討し、通帳の所在や管理方法について家族と共有しておくことが、不要なトラブルを防ぐうえでも有効です。通帳は単なる紙ではなく、「お金の記録」として将来的に役立つ資産の一部ともいえるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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