忘年会帰り「東京-新浦安」へ帰るつもりが、寝過ごし終点の「蘇我駅」へ! 定期券外で「往復1020円」かかるので、改札を出なければ“タダで戻れる”でしょうか? 不正乗車のリスクも確認
例えば、京葉線で始発の東京駅から座って新浦安駅に帰るつもりが、終点の蘇我駅まで行ってしまった場合、本来は片道510円、往復で1020円の運賃がかかります。「改札を出ずに戻ればタダで済むのでは?」と思うかもしれませんが、それは非常に危険な判断です。
実は、たった1000円を惜しんだ結果、数万円以上の損害を被るかもしれません。今回は、鉄道規則に基づく正しい精算ルールと、不正乗車のリスクについて解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
改札を出なくても運賃は発生するのが大前提
まず大前提として理解しておかなければならないのは、「改札を出なければ運賃はかからない」というのが誤解である点です。本来鉄道の運賃は「乗車した区間」に対して発生します。定期券の区間外の電車に乗った場合、改札を出る・出ないにかかわらずその区間の運賃を支払わなければなりません。
今回のケースで言えば、新浦安駅から蘇我駅までの区間を往復乗車した事実があるため、当然その区間の往復運賃が必要になるのです。
誤乗区間の無賃送還の規定はあるが
鉄道には「間違って乗った人を無料で戻してくれるルール」が存在します。JR東日本の旅客営業規則第291条に規定しており、誤って乗り過ごした場合でも、係員の認定があれば目的の駅までは無償で戻れる(誤乗区間の無賃送還)のです。
これを適用すれば、今回のケースでも無償で戻れそうですが、実はそうではありません。というのも同規則第291条には「定期乗車券を使用する旅客を除く」と明記されているからです。旅客営業規則上では、乗り過ごして定期券区間外の駅に着いてしまった場合、往復の運賃の支払いが必要ということになります。
最悪定期券没収も……不正乗車とみなされた場合の代償
もし駅員に申告せず、こっそり折り返しの電車に乗って定期区間内の駅に戻った場合は不正乗車となってしまいます。不正乗車のペナルティは決して軽いものではありません。
まず、同規則第168条第1項第11号では「係員の承諾を得ないで、定期乗車券の券面に表示された区間外の区間を乗車したとき、定期乗車券を無効として回収する」とされています。回収された場合、定期券の残り日数によっては数万円以上の損失となるでしょう。
それに加えて、同規則第265条第3号には「第168条第1項第11号に該当する場合、その乗車した区間に対する普通旅客運賃とその2倍に相当する額の増運賃とをあわせて収受する」とあります。つまり本来の運賃の3倍に当たる金額の支払いが必要となるのです。
寝過ごした場合にすべきこと
最も大切なのは、勝手に判断せず、駅員に「寝過ごしてしまいました」と正直に伝えることです。
規則上は「往復運賃の支払い」が必要となるため、いったん往路分を精算して出場し、再度切符を購入(もしくはICカードで再入場)することになるでしょう。これが不正乗車を疑われることが一切ない、最もきれいな解決方法です。
電車のルールはしっかり守ろう
忘年会シーズンの寝過ごしは、誰にでも起こりうるミスです。しかし、そのミスを隠そうとしてルールを破れば、それは不正になります。
往復運賃は痛い出費ですが、ルールを守ることが何よりも重要です。疲れやお酒が入って眠いときは「スマホのアラームをイヤホンでセットする」など、寝過ごさない対策を講じると良いでしょう。
出典
JR東日本 旅客営業規則
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
