500円分で「440円分」しか買えない!?「おこめ券」は“現金給付より非効率”の声も…なぜ「発行額・引き換え額」に差が出るのでしょうか?“消えた60円の正体”とは
なぜ発行価格と実際に使える金額に60円の差額が生じるのでしょうか。さらに現在、鈴木憲和農林水産大臣のもとで進められている調整により、おこめ券の値下げが検討されています。
本記事では、おこめ券の基本的な仕組みから、消えた60円の正体そして最新の動きまでを分かりやすく解説します。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
おこめ券とは?
おこめ券とは、全国米穀販売事業共済協同組合が発行する「全国共通おこめ券」や、全農(全国農業協同組合)が発行する「おこめギフト券」のことを指します。全国のスーパーやデパート、米穀店などでお米の購入に使える商品券として、長年利用されてきました。
現在の販売価格はどちらも1枚あたり500円ですが、実際に引き換えられるのは440円分です。この点については、それぞれの公式ホームページに明記されています。
JCBギフトカードや図書カードなど、多くの一般的な商品券は、購入価格と利用可能額が一致しています。そのため、おこめ券も同じように考えてしまいがちで、混乱を招く一因といえるでしょう。
500円で440円しか使えない理由は?
販売価格の500円と440円の差額は60円です。これは、おこめ券の発行や流通、換金手続きなどにかかる経費として、購入者が負担する形になっています。
経費率は約12%に上りますが、その内訳については公表されていません。商品券全般に一定の事務コストがかかるのは理解できるものの、額面との差が可視化されやすい点が、利用者側に不満を感じさせる要因かもしれません。
そういう背景もあり、従来のおこめ券については「現金給付より効率が悪いのでは」と指摘されたのだと考えられます。
現在進められている物価高騰対策の内容とは
政府は物価高騰の影響を受けている生活者などへの支援の拡充を発表しました。その具体的な手法については、地方自治体が地域の実情に応じて判断できる仕組みとされています。
こうした中、JA全農は、重点支援地方交付金活用事業への協力として、2026年1月中旬をめどに、従来の券とは別枠で「臨時おこめ券」を発行すると正式に発表しました。この臨時券には、「2026年9月末までの使用期限」や「転売禁止」といった文言が明記される予定です。
また、全米販も自治体への販売価格は、1枚あたり約477円とする方向で調整が進められています。
おこめ券は、名称こそ「おこめ券」ですが、実際には米加工品などにも使えるため、食料品全般の負担軽減につながる側面があります。そのため、使途を限定しすぎず、生活必需品への支援として活用しやすい点が、物価高対策として注目されている理由の1つといえるでしょう。
こうした特性を踏まえJA全農など関係団体も、自治体による活用を後押しする形で協力体制を強めているとみられます。
まとめ
おこめ券は、販売価格と利用額が一致しない仕組みを持つ商品券であり、その点が分かりにくさの原因となってきました。
物価高対策として注目が集まる中、今後は国の方針を踏まえつつ、各自治体がどのような形で活用するかを判断していくことになります。自分の住んでいる自治体がどのような対応を取るのか、今後の動きにも目を向けておきたいところです。
出典
全国米穀販売事業共済協同組合 おこめ券について
JA全農 全国共通おこめギフト券の臨時発行に係る取扱いについて
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
